20話 ソラクェル公国
「「マニ、退院おめでとう」」
「ありがと〜」
マニは片腕を失ったが、日々のリハビリの甲斐あってかもう痛みは無く、歩くこともできる。だが、腕が無くなった不便さは常に感じているだろう。
しかし、今日、筋魔義手を付けることでそれも解決する。
マニの腕に装着して、魔力を馴染ませる。
少しすると指が動き始めた。すると感覚を掴んだのかすぐに手を開閉できるようになった。
「おおすごいぞ! 動かせてる! どうだ? 何かおかしなとこはないか?」
「今はあんまり動かせないの、けどもうすぐちゃんと動かせる気がするの」
「偉いな。マニは」
といって、頭を撫でた。
すると、マニは今まで平然と振る舞っていたが、ここで何かを思い出したのかもしれない。
マニの涙腺の最後の砦が崩れた。
マニは強い、俺なんかよりずっと強い。だからこそ今まであった辛いことも耐えることが出来た、出来てしまった。
今ここには俺とミレイユがいる。マニにとって頼れる、安心出来ると思って貰えたのか、マニは今まで堪えてきた涙を全て出すかのように泣いた──
・・・・・・
頭を撫でてやりながら泣き止むまで待つ。
しばらくするとマニは十分泣いて、泣き腫らした顔で笑った。
「ありがと〜。本当に、ありがとう」
本来なら腕を無くした原因として責められてもおかしくはない。そんな中マニは償いとして義手を作った俺たちにお礼を言ったのだ。
思わず俺とミレイユは涙ぐみながら
「どういたしまして」と答えるので精一杯だった。
・・・・・・
そんな日から3日後、マニも義手の操作に慣れてきて、少しおぼつかないが日常生活に問題はないほどになってきた。
そしてこの日から旅を再開する事にした。
実はマニはエルカガンスと会うのは初めてだったが、特に問題なく馴染めていた。
みんなの装備と世界の外側での野営に向けた準備も整い、万全の体制を整えて最後の国、ソラクェル公国へ向かう。
電車で行くこと3時間。結構すぐに着いた。
ソラクェル公国は冒険者が多いが、ワントのような雰囲気ではなく、街も綺麗で治安も良かった。
そんな街だが実は一度魔獣によって滅ぼされかけたことがあった。
250年ほど前、まだこの国がワントより治安の悪い国だったころ──
一匹の魔獣が襲来した。しかしその魔獣はデカく、強く、他のどの魔物とも違った。
たった一匹の魔獣に壁を壊され、多くの冒険者と国防軍の兵士が殺された。
そんな殺戮を10日も繰り広げた魔獣は最終的に、100人以上が協力して行う超大規模儀式魔法で倒されたという。
その時の衝撃は凄まじく、国の中央にある巨大な湖はその時の大穴に水が溜まったものらしい。
それ以来この国は魔法を重視し、壁の近くで魔素が多いことも相まって、ここの魔法学校は優秀な魔法使いを数多く輩出していることで有名だ。
そんな国だが一つ残念な点がある。それは人間を嫌っているということだ。
魔法至上主義のこの国は、人間というか魔法適性が低い種族全てを冷遇し、高い種族を優遇している。
このチームは俺とマニが適性が低い種族で、ミレイユとエルカガンスは適正の高い種族として認識されるので、特に目立った冷遇も優遇もなく過ごせた。
ここは例の災害があったからか、街は現代の東京に近く、整理された街並みだったが、観光地といえる場所はほぼ無かったのでこのまま世界の外側へ向かう事にした。




