17話 強さ
魔獣を前に俺はまだ動けなかった。
しかし、ミレイユと新米冒険者も動けていた。
ミレイユは治癒を優先しようとしたが、いかんせん魔獣との距離が近すぎる。
本来なら俺が引きつけて倒すか、時間を稼ぐべきだろう。
けれど俺は動けなかった。
思えば魔獣の被害をこの目で見たのは初だった。
こんな少人数で依頼を受けたのは、亜竜以外では初だった。
誰かを守ろうとして、守れなかったのは元の世界を含めて初だった......
ミレイユはまだ仕込み杖を研ぎに出したまま、つまりまだナイフだけだ。
今はまだなんとか持ち堪えているが、そんなもので魔獣の猛攻を逸らせる訳もなく、だんだんミレイユに傷が増えてきた。
......きっかけはマニの行動だった。
腕を失い、肩にも大きな傷がある中、マニが防御系のアーティファクトを自分ではなく、ミレイユと新米冒険者に使おうとしているのを見た。
その時、一杯一杯だった頭が、行動できるだけの余地を取り戻す。
次の瞬間、俺はまず身体強化を最大でかける。筋肉が悲鳴を上げるが無視、紫汐を持ち、抜刀の構えをする。
次に足裏に魔力を流し、魔獣のそばに転移。
『死ねぇぇぇ‼︎』
おそらく初めて心の底から出した憎悪とともに、魔力を流しながら抜刀。全力で振り抜くっ‼︎
『ザシュッ』
そんな音とともに魔獣の首は落ちた。
・・・・・・
魔獣を討伐した後すぐにまだ小さいマニの腕を拾い、切断面に合わせて治癒魔法をかける。
かける、かける、かける。
確かに治癒魔法は傷が早く治るが、部位欠損は治せない。そんなのは魔法を使う者の間では常識だ。
けど、腕があるんだ、魔法があるんだ! 『普通』なら、治るはずなんだ‼︎
「クソがっ!」
なんだよ!なんでだよ!クソがっ‼︎
治れ、治れよ!
「もう一人の治療は終わらせてきたわ。けどマニちゃんの腕は......もう......」
とミレイユはマニの肩の傷を治しながら、言外に諦めろと言ってくる。けどッ──
「おにーさん、マニの手はもういいよ。
だって、義手を使えるんだもん」
とマニが少し震えながら弱々しく言った。
俺、こんな小さな子に励まされてるのか......
「すまなかった、俺が不注意だったばかりに......」
「うん、いーよ〜。けど、マニの義手はないの、
おにーさん、おねーさん作ってくれる〜?」
未だに血は流れ、ものすごく痛いはずだ。なのに普段通りに振舞おうとするマニの強さ、気遣いに思わず涙声になりながら答える。
「ああ、もちろん作ってやるさ、元の腕より便利なほどのやつをな!」
「ええ、マニちゃんに似合う可愛い義手にするわ。」
「ありがと〜 楽しみにしてるね」
強いなぁ。
俺にもこんな強さ、手に入れられるだろうか......
・・・・・・
俺たちは新人君も含め帰還。今回の件を報告するとあの魔獣はヴァストウルフの群れのボスの特徴に一致するらしく、他にもヴァストウルフがいる可能性が高いそうだ。
そのため大人数での討伐隊が組まれ、森の捜索にあたるので手伝ってほしいと言われたが、断った。
メンバーは俺以外ボロボロ、装備に至っては全員ダメになってしまった。
紫汐も全力で振ったからか、刃が少し欠け、鞘を切りながら抜刀してしまったので使えない状態になってしまった。
そこで少し、旅を中断することにした。
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