01. どうやら死んだらしい
「おっっっめでとうございまーーーーすっっ!!!」
見渡す限りの仄暗い空間に、小さな星がきらきらと瞬いている。
そんな幻想的な場所で両手を上げながら、大きな声でそう叫ぶ女性。
……えっと、何この状況は……。
「あれ?どうされたんですか?ポケーっとした顔して」
「あの、ここ何処なんでしょうか……。何で俺こんな所に?」
未だに覚醒しきらない頭を回転させて記憶を辿る。
確か久々に学校が休みだったからゆっくりしようと、ベットで漫画を読んでいたはずなんだけど……。
「ああ、突然の事だったから認識できていないのね。貴方は死んだの」
…………。
死んだ?
「え、ええええ!??俺、死んだんですか?」
「そうよ。神堂拓也くん、貴方がベットで横になっている最中に大地震が起きて家が崩壊。そのまま瓦礫に潰されて圧死ね」
一生に一度しか無い重大なことをこうもあっさり言い切られると、逆に現実感が無くなるのが不思議だ。
でも今の状況が既に非現実的だから、この人の言う通り俺は死んでしまったのだろう。
冷静になって女性を見ると、桃色の長髪に豪華な法衣と薄緑の羽衣を纏っていてーーーーまるで女神のような美しさだ。怖いくらいに整った顔も、神々しさに拍車をかけている。
「どうしたの、私の顔をジロジロ見て」
「あ、いえ、お綺麗な顔だな、って」
「そりゃ当然よ!なんたって、私はこの霊界を統べる女神ウルスラ様なんだから!」
やっぱり女神様なのか。
誇らしげに胸を張って言っているが、出る所は出て細い所は細い上に露出の多い服でそんな格好をされると目のやり場に困る。
「でもなんで俺が、その、ウルスラ様と話しているんですか?」
視線を泳がすついでに、さっきから気になっていた質問をする。
大地震で俺が死んだのなら、俺以外にも大勢の人が一気に亡くなっているはずだ。いくら女神様でも、俺1人だけに時間をかける訳がない。
「それはね、貴方が幸運だからよ」
「幸運?」
「誇っていいわ。貴方はなんと、100億人目の死者なのよ!」
「ひゃ、100億……!?」
ウルスラが大声でそう言うが。
どうしよう、桁が大きすぎて凄さが理解できない。
百人に1人の確率が1%だから、百億人に1人の確率だと0.00000001%……?
ダメだ、それでも大きすぎて分からない。
俺が桁の大きさに唖然としていると、ウルスラは呼吸を整えながら人差し指を立てる。
「神々の間で、百億人目の使者にはおめでとう賞としてスキルを授けて、記憶を持ったまま異世界に転生させようって話になっててね。私が代表として、貴方と会ってるって訳」
「い、異世界転生ですか」
「そう。普通の人は死んだら魂を浄化して、記憶を全部消して転生させるんだけどね?その点でも、貴方は特別なの」
ラノベは好きだからちょこちょこ読んでたけど、まさか現実に異世界転生が存在するなんて思ってなかった……。
やっぱり、異世界だから魔法とかあったりするんだろうか。スキルがあるんだから、魔法もあるんだろう、きっと。
考えたらワクワクしてきた。
「それで、俺に貰えるスキルってのは……?」
「ふっふっふ。それは……『上限突破』!!」
「ライン……オーバー……」
「簡単に言うと身体能力や魔力とか、諸々の数値が本来の上限値を大幅に越してるって感じかな。あらゆる魔法が好きなだけ使い放題の、まさにチートスキルなのよ!」
おお……よくわからないけど凄そうな事は分かるぞ……!
前世では(と言っても感覚的にはつい数分前までだけど)冴えない陰キャ高校生だったから、チート能力が手に入るのは素直に嬉しい。
「それじゃ、転生の準備をするからこの輪の中に入って。次に目を覚ましたら、新たな世界で16歳の青年として生まれ変わってる筈よ」
ウルスラはそう言うと地面に手をかざし、小さな魔法陣を発生させた。
極彩色を放ちながら輝くその魔法陣の中心に立つと、目の前が次第に光に包まれていく。
「幸運な人間、神堂拓也よ!新たな世界で、幸せな生活を送れる事を祈っているわ!」
「本当にどうも、ありがとうございました!」
「まあーあっちの世界も何かと大変そうだから。貴方がどうしてもっていうなら、この私、女神ウルスラ様に願ってみなさい。暇があったら降臨してあげるわ」
あ、そこは暇があったらなんだ……。
「それじゃ、良き異世界ライフを!応援してるわ!」
「はい、頑張ってきます!」
ウルスラが、俺に激励の言葉を送る中。
俺の視界は、光の中に暗転した。
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