アルテ
「よう、遅かったな!リーダー」
「今回はこれで全員ですか?」
ジュウゴとアルテがまず声をかけてくる。
それに続いてアルベルトもこちらに来て話しかけてくる。
アルベルトは僕の隣にいるリリィに興味深そうに目を向けている。
「それで、そちらのお嬢さんの事は紹介してくれるのかな」
「この子はレキ君の妹のリリィちゃんだよ!」
そのアルベルトの疑問に答えたのは僕ではなくミツキさんだった。
ミツキさんの言葉を聞いてアルベルトだけでなくジュウゴとアルテもリリィに目を向ける。
リリィは自分よりも年上のそれも三人もの視線を一斉に受けて、それでも怯えた様子もなく丁寧な所作で挨拶をした。
「初めまして。レキお兄様の妹のリリィです」
「おう!俺はジュウゴだ。レキとはまぁ親友みたいなもんだな!」
ジュウゴがそんなことを恥ずかしげもなく言うので
「いつから僕とジュウゴは親友になったんですか?」
とおどけたように僕が言うとジュウゴは「そりゃねえぜ」と言ってうなだれてしまった。
それを見てミツキさんやアルテが笑い、リリィも笑みを零した。
リリィは先ほどから何もないように見えても緊張していたんだろう。
ジュウゴはそれを察して僕の軽口に乗ってくれた。
僕はそんな親友に目線で感謝を告げた。
ひとしきり笑った後に自己紹介が再開された。
「アルテと申します。レキ様には私の人生を救っていただいています。
そんな方の妹様のためならば喜んで命を捧げさせていただきます」
「は、はい。」
アルテのこの言葉にさすがのリリィも困っていた。
アルテのこの言葉に嘘偽りは全くない。
実際、前に一度僕のために命を捨てようとしたこともある。
アルテは「シーフ」という職業の通り、あまり人には言えないようなことを強要されていた。
そのアルテが所属していた組織を依頼で検挙したときに僕がSランクのレキとして保護をした。
その後に、新しくギルドに登録させて僕らのパーティーの一員としてメンバーに加えた。
その前後にいろいろと問題はあったが今は立派な僕らのパーティーの一員である。
そんな経緯からアルテは僕に必要以上の扱いをしてくれている。
「アルテ」
そんなアルテの事を僕が語気を強めて読んだ。
「な、なんでしょうか」
アルテは僕に怯えたような顔をしていた。
よく見ればアルテだけでなく他の皆も少し顔が青くなっていることに気が付けたのだろうが、今の僕はアルテしか見ていなかった。
「僕は確かに君の人生を助けたのかもしれない。ならば尚更君のこれからの時間は君自身のためだけに使ってほしい。それが僕が君を助けたことに対する僕への最高のお礼なんだから」
「ですが!...」
アルテが必死に言葉を紡いでくれる。
「ですがそれでは、レキ様がご自分の名前を使ってまで私を救っていただいたことに対して何も、何も返すことができません!!!」
アルテが耐えきれないという風に言葉を零す。
その目端にはうっすらと涙まで浮かんでいた。
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