依頼
やがて笑い疲れたミツキさんが呼吸を整えながらリリィ向かっていった。
「大丈夫だよ。レキ君とは仕事でお世話になっているだけだからね!」
「そ、そうですか」
「誤解を解いてくれたかい?」
「はい。申し訳ありませんでした」
兄として、妹から蔑みの視線を向けられることは無いようで心底ほっとする。
「それで、メリストさんとは何もないのは分かったのですが、それでは何故こんなにも家が広いのですか?」
「あれ?レキ君その辺の事なにもリリィちゃんに説明しないままここに住まわせようとしてたの?駄目だよここで寝泊まりしてるのは君だけじゃないんだから」
「いえ、もしリリィが嫌がるようであれば別のところにしようかと」
ミツキさんに怒られてしまった。
普段からこういう風であれば年上だと認識できるのになぁ。
「あの、お兄様、どういうことでしょうか」
「ああ、リリィもクランは知っているね?」
「はい。中学過程で習いました」
「僕は一応クランリーダーをしていてね。ここはそのクランのホームなんだよ」
僕がそういうとリリィは心底驚いたような顔をしていた。
クランの事を説明するには、まずギルドについて話さなければならない。
ギルドとは個人、または団体が依頼をしたい時に依頼を受けるに足る人材を仲介する。という組織である。
依頼を受ける側はギルド登録した正規の会員しか受けられないため、多くの人がギルドの会員となっている。
ギルドにはランクというものがあり、一番上がSランク一番下がEランクとなっていて、ランクによって受けることのできる依頼と報酬金額は変わってくる。
その中でも規模が大きく達成が困難なものがクラン依頼となっている。
クランとは、7人以上が結成の条件となる集団で、結成時の初期メンバーは全員Aランク以上が必要で、さらに1人はSランクである必要がある。
そのため、王都には5つしかクランがない。
そんな精鋭集団の1つを率いているのが、実の兄だったのだから驚くのも無理ないだろう。
そんな時、このホームにおいてある通信用の魔道具が音を鳴らした。
僕は瞬時にミツキさんに目配せし、ミツキさんが通信に出た。
「はい、クラン『明けの翼』です。...分かりました。
リーダー。ギルドからリハルド大森林のゴブリンの巣討伐依頼です。」
「分かった、受けよう。皆に2時間後に準備をして大門の前に集合と伝えてください」
「分かったわ。
依頼の件、委細承知、致しました。あとはお任せください」
ミツキさんはそう言って通信を切った。
そのあとに今度は何度かほかの人と連絡を取っている。
おそらく今回一緒に行く他のメンバーに連絡を取っているのだろう。
リリィが心配そうにこちらを見ていた。
「お兄様、何かあったのですか?」
「ああ、クランとしての依頼が来ただけだよ。少し危ないけれど、一緒に来るかい?」
「それってクラン依頼ですよね。足手まといになってしまうのではないかと....」
「僕が守るから気にしなくていいさ。それに、今僕がどういう仕事をしているのか知ってもらいたいしね」
「ならば、ぜひ一緒に行かせてください!」
「じゃあ準備をしに行こうか」
そういって僕は連絡を終えて待ってくれていたミツキさんも連れてホームを出た。
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