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戦いを終えて

 召喚魔法でフェニを呼び、戦魔像を破壊した三十分後。

 慌てて魔法陣から現れたマルティナに状況を説明。


 疲労困憊のメンバーを連れて、地上へと転移した。

 魔族の出現という事件に学園は大騒ぎになった。


 マルティナが現場で指示を出し終えたあと、学園長室に集まる。

 内々の話もあるので我、フェニ、メイ、リリーラ、マルティナの五人だけだ。


「本当に幻王様がいなければどうなっていたことか」


 マルティナが深く頭を下げ、感謝の言葉を述べる。



 ちなみに、戦闘に集中していてちょっと忘れかけていたが……。

 隅っこに置いておいたパーティメンバーも運良く無事だった。


 今もまだ呑気に眠っている。


 睡眠魔法のおかげで結果的には怖い思いをせずによかったのかもしれんな。


「しかし……(ノス)が魔族とは、長い間学園に忍び込んでいるのに気づかず、なんとも間抜けな話です」


 人間に完璧に擬態できる魔族。


 見抜くのはマルティナにしても難しい。

 我のように魔気の感知ができれば話は違ったのだろうが。


 これから地下ダンジョンの大規模調査も行われる。

 まぁ我が調べたところ、特に目立つ物は見つからなかったと思うが。


「話は少し変わりますが、幻王様、今回の件の後処理についてご相談したいのですが……」


「ああ」


 誰が魔族と戦魔像を討伐したのか。

 当然、そういった話を国に報告することになる。


「間違いなく、国から大きな恩賞がでるかと思いますが」


「いらんよそんなもの、我の存在は黙っておいてくれ」


「やはり、そうですか」


 マルティナに、はっきりと伝えておく。

 中級魔族に加え、戦魔像を討伐したとなれば、爵位が与えれても不思議でない案件だそうだが、我には何の価値もない。


 これから彼らが魔族に対してどう動くのか知らんが、人間たちの政に関わるつもりはない。


 今回の件は、我に理由があったから結果的に手を貸す形になった。

 だが我は人間の味方というわけではない。

 本来、地上のことは地上に暮らす存在が解決すべき問題だ。


「畏まりました。幸いここに王女様もいますしね、適当に口裏を合わせますか……それで構いませんか? リリーラ王女?」


「わ、わかりました」


 マルティナの確認、素直に首を縦に振るリリーラ。

 彼女はちらりと、緊張気味に我をちらりと見て……。


「お、おうおうおう、王様……」


「な、なんだ突然、我を馬鹿にしているのか?」


 偉く緊張しているようで、噛み噛みだ。

 街のチンピラみたいになっているぞ。


「いつも通りにしてくれ、調子が狂う……リリーラが我の正体を知ったからといって、我の方から態度を変えるつもりはない」


「で、でも……」


「普通にムートと呼べばいい、そもそも、相手の立場で態度を変化させるのは、汝の嫌いな事の一つだろう?」


「そ、そうね……じ、じゃあ……うん、ムートッ!」


「ああ、それでいい」


 ようやくらしくなったな。


「うんっ、やっぱりこの方がしっくりくるわ!」


「そうか」


「…………え、えへへ」


 我が微笑むと……。

 少し照れくさそうに、頬を緩ませるリリーラ。


「幻王様がいいのであれば、私からとやかく言うことはありませんが……あまり調子には乗らないように」


「は、はひっ」


 フェニの呟きに、姿勢を正すリリーラ。

 元々、我よりもフェニに対して萎縮していたのではなかろうか。

 そんな気がしてしまう我だった。




 一通りの話が済んだあと。


「あの、幻王様、後でお身体の方を調べさせていただきたいのですが……」


「フェニ?」


「人の身ではあり得ない程の魔力を扱ったわけですから、影響が残っているかもしれませんし」


「そうだな……わかった」


 しっかりとメンテナンスを頼むことにする。


(しかし……暴食が使えるようになったのは幸運だった)


 まぁ制限付きではあるがな。


 感知範囲も竜形態に比べれば圧倒的に狭い。

 昔はダンジョンどころか、世界中からかき集めることができた。

 それに魔力容量の小さいこの身体では、集めた魔力を食べてストックすることができない。


(それでもこの身には十分過ぎる力か……)


 そして今回の件では大きな収穫があった。

 その後の交渉で、優秀な人材を身体の研究員としてスカウトすることに成功した。



「期待しているぞ……ネトリーヌ」


【ネト~!】


 彼の協力により我は暴食も使うこともできた。

 ポンとネトリーヌに頭を叩く。

 ホムンクルスボディの研究員にネトリーヌを加えると、先ほど提案した時の反応は、なんというか、うむ。


 あまり歓迎されていない感じだったが……


『ま、まぁ……お、王様が望むのであれば……っす(メイ)』


『わ、私もです……でも……い、いきなり近づかないように、反射的に燃やしてしまいそうですので(フェニ)』


『…………(リリーラ)』


 こんな感じで女性陣は思いっきり困惑していた。

 フェニすらも……戸惑いを隠しきれていなかった。

 なお、リリーラにも我の諸事情は伝えておいた。


 ネトリーヌが役に立つの間違いないので、被害に遭ったリリーラも文句は言わなかったが、無言の中に強烈な嫌悪感がにじみ出ていた。


 ちなみに、雇用条件はネトリーヌに安定した生活を提供すること。

 女性ばかりの職場に放り込むのは少しまずい気もしたが。

 コイツの場合、女性を襲う理由は性欲ではなく食欲だ。


 一応、食欲さえ満たせば安全なのである……たぶん。


 そのあたりをうまく、どうにかする方法をマルティナが考えてくれているそうだ。


 我の地上生活。

 まだ満足はしていないが……ここまではそれなりに順調である。


 無論、行っていない場所はたくさんある。

 ぼちぼち街の外に出るのもいいかもしれない。


 そして問題の味覚についても奴がいれば解決するかもしれない。

 感度百倍にしても元がゼロではどうしようもないが……。


 感度をコントロールするネトリーヌの能力は必ず役に立つはずだ。


 加えて多種多様な触手により、人の手にはできないような繊細な作業をこなすこともできる。


 ふふ……夢が広がるな。

 口にする時が楽しみだ……ふわとろワッフル。



 充実した地上ライフに一歩近づき、心躍る我だった。


お読みいただきありがとうございます

とりあえず本話で章の一区切りです


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