表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/27

反省

二話同時更新しております、一話目です

(なにが……起きた?)


 我はホムンクルスの身体で街を歩いていた。

 それから色々あって、人間と揉めたのは覚えている。


 展開された攻撃魔法に軽く対処しようと魔法行使準備に入った途端、視界が真っ暗になり、幻界の方に意識が戻った。


 どうやら、ホムンクルスボディの方に何らかの問題が生じたようだ。

 メイからフェニを通じて、幻界にいる我に状況報告が入る。





 翌日。


 再び地上に戻ったフェニから、飛び散ったボディの修復を終えたとの報告を受ける。

 詳しい話を聞くために、先日同様に地上のボディへと意識を移す。


 場所は前と同様に学園の地下室だ。

 マルティナ、メイ、フェニの姿もある。

 我が起き上がると同時、フェニが頭を思いっきり下げる。


「た、大変申し訳ありません、まさか、このような事態になるとは……」


「いい……それよりもフェニ、説明してくれるか?」


「はっ!」


 我の身体がバラバラになった理由を。

 幸いというか、あまり時間がかからず元に戻れたが。

 勿論、我の背中の召喚紋を含め完璧な状態で。


 万が一のために、フェニが準備しておいた蘇生石(メイ用)を我に使ったそうだ。


「おそらく、ホムンクルスの身体でバハムート様が使用した魔法が原因かと?」


「あれは簡易な防御魔法だぞ。普通に初級魔法のマジックシールドを五百層ほど重ねがけしただけだ」


「「ご、ごひゃっ……」」


 マルティナとメイが唖然としていたが、今はスルーする。


「本来の竜形態のバハムート様にとっては簡易な魔法でも、その肉体にとっては違います。発動しようとした術式に対し、体内の魔力だけではとても賄えきれず結果、内部から暴発したのでは、と」


「……なるほど」


「幻獣の魔力量は膨大ですから、バハムート様ほどではありませんが、私の魔力も地上の人間からすればとてつもない量です。人間では多いとされるメイの数百倍以上は確実に魔力がありますしね」


「え? そんなにあるんすか?」


「そうですよ、ですから私は消費魔力の少ない人間の形態をとっていると話したでしょう。もし今のメイが私を強引に完全形態(フルフォルム)で実体化しようとすれば、バハムート様と同じことに成りますよ。せめて一瞬に絞るとしても今の十倍以上は魔力が欲しいところです」


「う、うへぇ……」


 理由を理解した我。

 元の潤沢な魔力がある時にはなかった悩みだ。


「ふむ……とにかく、今は竜形態を基準にして考えるなということか」


「はい……ご不便とは思いますが」


 この身体は、世界の一般的な水準の人間と同じ性能。

 魔力量も肉体強度も。

 現代の技術でこれ以上の性能のホムンクルスを創るのは難しいそうだ。


 まぁこの身体では何もできないというわけでもないはずだ。

 弱体化はするが、それならそれでやりようを考えるしかない。


「幻王様……よろしいでしょうか?」


 話がひと段落したのを見て、マルティナが話を切り出してくる。


「トバルスの処分はいかがしますか?」


「トバルス? ……誰だそれは?」


「昨日のことなのに忘れたんすか? 王様に絡んできた、いや……絡まれた? ……えっと、とにかく、あの時風魔法を放ってきた馬鹿貴族の名前っすよ!」


 メイが我に説明する。

 ああ……そういう名前だったな。


「ふふふ……何なりとご命令くださいませっ! 目には目を、歯には歯を、権力には権力を、公爵家なんてなんのその、培ってきた私の人脈があれば……やれます」


 黒い笑みを浮かべるマルティナ。

 とりあえず罰を与えることは確定らしい。


「いかがなさいますか、幻王様? ……やりましょうか? いえ、是非やりましょう!」


「素晴らしい考えです……マルティナ、かの男は大罪を犯しましたからね」


 マルティナに同調するフェニ。


 やるってなんだ……不穏なイメージしか湧かない。

 いや、正直我としては罰とか心底どうでもいいのだが。


「別に……そこまでせずとも」


「何をおっしゃいますかっ! 彼は、かけがえのない尊き命を奪ったのですよ」


「フェニ様のおっしゃる通りです。彼は命の尊さというものを思い知るべきです」


「我、普通にここにいるがな」


 まぁ放っておいても、公爵家の長男といえど、人の命を奪ったとなればお咎めを受けはするそうだが。


「いいさ……彼を怒らせた我にも、何か問題があったのかもしれんしな」


「「そのようなことは絶対にありえませんっ!」」


 即座に否定するマルティナとフェニ。


「なんだメイ、その顔は?」


「私は…………敢えて何も言わないっす、無回答を貫くっす」


 必死で我から目を逸らすメイ。

 最終的に処分は一度保留の形に。


 先日の場面を思い出す。

 そういえばあの少年、妙な気配を纏っていたな。


(歪のエネルギー、いや違う……か?)


 そこまではっきりしたものではないが……。


 少しだけ気になった我だった。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ