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第一話 大森林の国エスワート。エルフの里

 「聖騎士様ぁ、お店の準備できましたよ」

ダークエルフの姉妹が移動販売車の助手席の窓から手を振りながら言った。

さかさず移動販売車の販売コーナーの覆いを上に跳ね上げる。

紅色のメイド服を着て溢れるような笑顔をしたダークエルフの姉妹の顔がそこにあった。


「では……いつもの様に開店前のチェックを始めるよ」と私「準備は良い?」

可愛い頭が2つピョコピョコと頷いた。



私はピカピカに磨き上げられたカウンターの前に歩み寄った。

「いらっしゃいませ」とお姉さんである赤毛のココア

「冷えたのが良いですか。それともホットがいいですか」

妹の青毛のパウダーもテンポよく尋ねてくる。息もバッチリだ。


「ではヌルいのを貰おうか」ちょっと意地悪してみる。

「ヌ…ヌルい…ワ、判りました…お幾つですか?」

「ではグランテ2つ」と私は答える。

甲斐甲斐しく働く二人。マシンの音が響く

「お待たせしました。お値段は…」

そこで急になきそうになる二人。

そう…国を超えたこの場所の通貨を知らないのだ。


「そこの黒板に書いたよ。客に指さしたら良い」私は続けていう

「トールなら3マデール。グランテは4マデール」


「なるほど、では8マデール頂きます」

私はタピオカミルクティーを受け取った。

「うーんヌルい」

いつもと変わらない味がそこにあった。

「味は合格。二人の作るタピオカミルクティーは絶品だ」


そのまま全部飲み干す。2つの頭がまたピョコピョコと頷く。

「で器械の調子はどうだ?」私は尋ねる。


「バッチシ」とココアが答えた。

「コップやストロー、ミルクもちゃんとあっちの世界からきちんと転送済」

パウダーも続けて答えた。


「よーし……では準備完了っと」

すると「円陣またやりたい」「円陣したい」

そう言って二人が移動販売車から転がるように飛び出てきた。


私は手を大きく広げ円陣を組める体勢をとる…

が二人はそれを無視して私に抱きついてくる


(それは円陣とは言わないんだがな…)


とはいえ可愛いので許す。甘いなぁとる内心思いつつも……

「今日も一日頑張るゾイ」と掛け声をあげる。

「頑張るぞーい」

「頑張るぅぅぅ」

二人はキャッキャと大喜びしていた。まだまだ子供である



私は周囲を観察する。

真っ青に晴れ渡った空、樹齢何百年かと思うほどの樹木が生い茂るなか

ポツンと開けた芝生の平らな大地。

風で木々がささやく音と小鳥の声以外物音もしない。

この辺りに危害を加えそうなモノは居なさそうに見える。



ここは何処なのか……

この異世界でも半分伝説と化し存在すら疑われてた国

旅の案内人ジプリールすらこの場所を知らなかった国

大森林の国エスワート。森エルフを中心とするエルフの里。

移動販売車はその村の境界線、村の入り口の伝言板近くに停めてある。

かなり広い広場風になってるのは行商人の商売が許された場所の一つだからか。

本来はもう少し中へと入りたかったのだが馬なしの移動馬車という事で警戒された。過去に何かがあったのだと察するしかなかった。





ジプリールはここに来て早々

エルフの長老が住むという世界樹の元へと飛び立っていった

彼女はどうしてもココアとパウダーを

この異世界の中で居場所を作ってやりたいという思いがあるらしい。

京都に連れていくことは乗り気ではなかった。


というのもジプリールが心配してるのはこの二人に魔法を教えられない事。

ジプリールも魔法が得意ではあるがエルフの魔法と構造的に全くの別物らしい。

輪唱もなくいきなり魔法を具現化できる天使族は流石のエルフも習得が難しい……。

不可能とまで言わなかったのは多少気にはなるが……。

最悪、京都に住む森エルフに預けるとは言ったが……何か呪いの言葉を吐いていたような




少しだけ意識をそらし過ぎたか

私は異変に気付くのに少しだけ遅れた…



私の周りをキャーキャー言いながらクルクルと走り回ってるココアとパウダー

それは普段とさほど変わらない日常の一コマだ

見たこともない魔法陣が地面に現れた事さえのぞけば……であるが……

私の左手薬指にはめてある「警告の指輪」が氷のように冷たくなった。

それは何か不味いことの起こる前兆なのだ



私は慌てて二人を止めようとした。ただ怖がらせてはいけない。

出来るだけ自然にしないとかえって深みに落ち込む事も多い。


「ココア捕まえたぞ!!」取り敢えず近くに居たココアを持ち上げる。

無関心を装いながら私は二人にこう尋ねた「何か地面光ってないか?」



ココアがうれしそうに言う「本当だ何これ何これ」

パウダーも止まって地面を見て喜ぶ「何これ綺麗…」

地面のキラキラはしばらく光っていたがやがてすっと消えていった。



「消えちゃった」ココアとパウダーは哀しそうに呟く。


「消えちゃったね……」そう言いながら魔法陣があった辺りを念入りに見る

ただの芝生の地面にしか見えない。あの魔法陣は一体何だったのか……


その時、村の入り口から銅鑼のなる音が聞こえてきた

朝の開門の時間のようだ

それはエルフの村の住人がこちらに間もなくやってくる合図でもあった。

私は魔法陣の事を頭の隅へと追いやった。

仕事が終わった後時間があれば調べてみるかとボンヤリ思いつつ



「ココア、パウダーそろそろお店で準備を」

二人はこくりと頷くと移動販売車へ戻っていった


私は拡声器のスイッチを押してタピオカミルクティーの宣伝を開始する。

間もなくここは戦場になるという予感がした。


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