そんな装備で……
#18 そんな装備で……
無事?に相談所で登録を終えたので、怖い雰囲気の場所から離れよう……リクさんが精神が持ちそうにないし、装備を手に入れなければならない……受付のお兄さんに、オススメの装備の売ってる店を尋ねたら。
「このリクって奴はいるだろうが、メルティアはいらないだろ?」
と真顔で言われてしまった……が、こんな痴女みたいな格好で歩いていては恥ずかしいし、物凄く目立つのだ、今更感は否めないが。
「メルティアさん!防具屋に行くんですよね?入ったことないので楽しみです!」とわくわくする彼女。
「楽しみですね」と返事をした、しかし先程までぷるぷる震えていた子とは、思えないくらいに元気が良い。
--そういえば…リクさんの格好は、見た感じ凄い普通なのである、とてもあの変態(女神)がデザインしたとは思えない程だ、上は明らかにサイズが合ってない長い袖のカーディガンで、中は少しゆったりしたVネックのシャツ、下はミニスカートでハイソックス、靴は可愛らしいスニーカーである、おかしい……
すると脳内に、例のド変態が興奮しながら現れる
『メルティアさん?!貴女は分かっていません!妹のように可愛いリクさんがですよ?ぶかぶかのカーディガンを着て甘えてくるんです!上目遣いで「お願い」って言われたらどうですか!萌えませんか? その時にチラリと上から見える!成長途中の女性らしさが垣間見える、膨らみが覗くんですよ!? 他にも女の子座りをした時にスカートの隙間から見える、桃源郷!! 我ながら素晴らしい計算とセンス!』
「確かに可愛いですよ? リクさんは、でも私の服が明らかにおかしいんですよ!ほぼ全裸じゃないですか!!」
『分かってませんね?メルティアちゃんは私にとって特別なんです!愛の形なんです!納得しましたか?』
「納得はしませんが……理解はしました、私達はこれから防具屋に行くので、出てこないで下さい!話しかけて来ないで下さい!」
『分かりました!ムフッ/// デートの邪魔はしませんよ?』
「メルティアさん?さっきから変な声が聞こえて来たんですが、なんでしょうか?」
「それは女神さんの声なんですよ……先程まで会話してました、多分それかと」
「女神様ですか?!メルティアさん凄いですね?!どういう会話してたんですか?」
「リクさんが可愛いとか、服のデザインの拘り(こだ)とかですかね?」
彼女は純心なせいか、ド変態の思惑等は梅雨知らず、顔をふにゃ〜とさせながら。
「女神様に褒められるなんて嬉しいです!服ってこの服ですか?」
「良かったですねー先程そのように言われてましたよ?(棒読み)」
「じゃあ凄い服なんですね?」
本人が喜んでいるなら良いかと思いながら……チリンチリンと、防具屋に入るのだった。
「いらっしゃいませー!ようこそ防具屋、龍の盾へ」
可愛らしい女の子がお出迎えしてくれた。
「防具を探してまして、見させてもらっていいですか?」
「リクも一緒に見ます!」
「厳ついお客さんばっかりだったから嬉しいよ〜ごゆっくりどうぞ〜」
「すいません、全身覆う様な防具ってありますか?」
そう言うと、何故そんな事言ってるのか、意味が分からないとも言いたげな感じに。
「え?有るにはあるんだけど……お客さん?可愛いから見せていきましょうよ〜 せっかくなら、今着ている衣装を、引き立てる様な防具にしない?」
そんな物はごめん蒙る、なので即答で。
「そう言われても私は目立ちたくないので」
何やら店の棚をガサゴソし始めながら、手に取った物を勝手に、私に当てながら。
「えー勿体ない……コレとコレとコレを組み合わせて〜 装備すればっ!メイドの衣装を引き立てつつ、防御力も上がる!」
その様子を見ていたリクさんが、目をキラキラさせながら。
「あ〜良いですね! その組み合わせ、とっても素敵です!1度で良いので、試しに装備してみてくださいよ〜メルティアさん!」
「まぁ2人が言うなら……分かりました、1度試しに装備してみますね?」
装備してみて……鏡の前に立ってみて正直言うと、初期状態より露出度は減り冒険者っぽくなったが、如何せん元が水着なので、とっても破廉恥な装備が出来上がった、腕には鉄製の篭手で、腰の両側からお尻の方まで覆う鉄製のスカートで、脚には同じく鉄製の膝くらいまであるロングブーツ、見える所は見えて、見えない所は見えそうで見えない、という何とも言えない感じに仕上がった。
「素晴らしいですよお客様!!この悪ふざけで作った装備を、ここまで着こなしてくれる方は 初めてだよ!」
「店員さん!あのー……今悪ふざけって言いました?」
防具屋の店主が舌をペロッと出して、頭を拳でコツンとしながら。
「あはっ☆ 今までは男女兼用の装備を作ってまして、可愛い女子に似合う物を作りたいと思って……作ってみた結果ですね……コレは防具として成り立つのか?と不安になって、まぁ……いつか売れるだろうとね!」
そんな勢いとノリだけの行動に呆れつつも、私は渾身のツッコミを入れる。
「不安になったなら途中でやめましょうよ!リクさんもこんな装備は嫌ですよね?」
そう言うとリクさんは何故か、この防具が気に入った様で、こんな事を言い出した。
「え?リクは凄く似合ってると思います。可愛さも有り冒険者っぽくもなってますし、お揃いの装備とかにしたいくらいです」
そう言った瞬間! 声がして、一瞬……あのド変態(女神)が、我慢出来ずに現れたかと思ったが、ニュっと現れたのは、女将さんであった……そして、こう言った。
「ならばその願い……叶えましょうか?リクちゃん?」
いきなりの登場に、お化けが出た様な反応をしながらも、疑問をぶつける。
「ひぇっ!?女将さん?どうしてこんな所へ?」
そして彼女は待ってましたとばかりに、淡々と説明を始めた。
「天の声様のお告げで、新しい水着メイド服が必要になるでしょうと、完成次第に龍の盾という防具屋に行って下さいと……」
--あの女神さんは、今日も私の邪魔をするらしい、そして逃げ道を塞ごうとしてくる、このパターンは物凄く危険だ、この流れを回避出来る方法は……うーん
リクさんは、私の事なんてお構い無しに、貰ったメイドビキニを抱き抱えながら、嬉しそうに。
「わぁ〜いいんですか?貰っても!メルティアさんとお揃いだー可愛い〜早速着て見ますね?」
どうぞどうぞと女将さんは更衣室へ向かわせる、まずい……このままでは本当に、この破廉恥な装備を着て、冒険に出かけなくてはならなくなる……ふと目についた全身鎧を見る、コレだ!と私は思った!
「あっ!このフルプレートメイル格好良いですね〜 私はこういうのが良いです」
先程の嬉々した様子と打って変わって、辛い事を思い出したかの様な顔で。
「それは父の遺作なんだ…売り物じゃないんだ、ごめんね?」
何と!? お父さんの形見の様な物だったとは……そして私の店主に謝る。
「すみません…でも凄く綺麗で、心がこもった鎧ですね……何と言うか見ていると優しさを感じるといいますか、そんな気分になります」
そう言うと? 涙を浮かべつつも、彼女は嬉しそうにしてから。
「その様な感想を貰えて、父もきっと喜んでるよ、ありがとうね」
「いえいえ」と返事をして、畜生!あの鎧ならば私の条件を満たすのに! すると? とてとてと、リクさんが更衣室から出てきたようで、私に向かってポージングを取りながら。
「メルティアさん!着てみました〜どうですか?似合ってますか?」
正直言って可愛らしいが、何故か犯罪臭がするのが否めない……私は素直に彼女を褒める事にした。
「おっ!凄く可愛いですよ似合ってます」
満更でもなさそうに、ぴょんぴょん跳ねながら嬉しそうにして。
「えへへぇ〜 ありがとうございます!でも……メルティアさん程じゃないと思いますよ?」
正直言って全然嬉しくない! メルティア=メイドビキニ、とでも言いたいのだろうか? 何て事を考えてしまう……そして私は引きつった笑顔で。
「あっ……ありがとう?」
―― この痴女アーマーが似合う私って……
リクさんは私の内なる気持ちをガン無視して、花が咲いた様な笑顔で「はい!とっても」と、言ってきた。
すると店主が、目をキラキラさせながら。
「可愛いお客さん達〜結局どうする?買っちゃう?セットで、まけるけど?」
やばい!このままじゃ本当に、女神さんの思惑通りになりかねない……と、打開策は無いかと思考していると?店主がいきなり唸りだし。
「そういえば名前決めてないんだよね〜メイドメイル?メイドアーマー?むむむっ」
そんな様子も気にもせず、リクさんは何故かいきなり方手をバッと上げて「メルティアさんコレで旅したいです!ダメですか?」と、小首を傾げながら私に聞いてきたのだ、ダメだこれは……完全に詰んだ、リクさんに「ダメですか?」っておねだりされては抗える者はいないだろう……水着メイドなのが更に破壊力が増している。
完全に諦めてしまった私は、リクさんに。
「リクさん分かりました、お揃いで買いましょう!このビキニメイドアーマーを!」
すると防具屋のお姉さんに「それだ!!」と、いきなり言われた……
「何がそれだ!何ですか?」
店主はモヤモヤが晴れた様な感じで嬉しそうに。
「名前よ名前、貴女の言った!ビキニメイドアーマーって響き、最高に良いわ〜」
困惑しながらも返事をする私。
「そうですか?どういたしまして?」
店主は商売人の顔になりながら。
「それで買ってくれるのよね?特別に出血大サービスで、2つで60万イエンで、どうかしら?」
それは安いのか? 因みにこの国の単価は、日本と変わらない……全部コインで札はない。
素材の善し悪しが分からない為、いまいちピンと来ていない顔になっていた様で、そんな顔を見た店主は、値段に不満があると思ったらしく。
「あれ?満足いってない?これ以上は……流石にお姉さんも難しいんだよね〜」
店主が口先を尖らせていると、リクさんが興奮した様に。
「メルティアさん凄い破格だと思いますよ?普通ならこの鎧の素材のシルバリウムは、かなり高価で、防具はだいたい80万イエンが相場らしいです!」
「半額以下!そっ……そんなに?!じゃあ買います!」
購入を決めると嬉しそうにしてから、リクさんを見ながら感心した様にして。
「毎度あり〜しかしリクは良く知っているね? 鍛冶師でもないと、分かりにくいと思うんだけど?」
そう聞かれた彼女は照れながらも、嬉しそうに話し出した。
「じっ実は…彫金とか好きで、アクセサリーとか作ってるんですよ、それで勉強しました」
それを聞いた店主は納得した様で、笑顔でリクさんに語りかける。
「なるほどね〜面白い子だ、また機会があったら顔を出しにおいで、色々と教えてあげよう」
店主は御満悦の様で、そんな彼女に2人で礼を述べる。
「ありがとうございます!」
「お世話になりました、ありがとうございます」
私も有意義な時間だったよ!とでも言うような感じで、「いえいえ〜こちらこそありがとうね」と、言ってから。
いい事思いついた!と、女将さんに。
「その服は量産は可能かい?出来る事ならウチの新商品として、ビキニメイドアーマーを出したいんだ……言い値で買い取るよ?どうだい?」
少し悩んだ風にしてから笑顔で。
「ええ、構いませんよ? 店の方もあるので……大量にとは行きませんが、無理しない程度なら可能ですよ?ふふっ」
これから忙しくなるぞ!と、嬉しそうに。
「いい返事をありがとう!楽しみが増えた!女将さん!よろしく頼むよ?あとメルティアとリク!今後ともよろしく〜」
店を出たあと女将さんと一緒に、本日の宿である元職場に帰るのであった…
大丈夫か?大丈夫じゃないな問題だ