# 96 魔王的お・も・て・な・し
俺は魔王だ。
メルティアから始まると思った読者の皆々様、すまん…… ついにこの時!勇者がこの世界に現れてから96話目……俺は握り拳を天に掲げながら。
『やっと来るぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!イヤッフゥウゥゥゥゥゥッ!!』
待ちに待ったというか、待ちくたびれた。
他に誰も居ない玉座のある部屋で叫んでしまうのも無理もない、普通はそんな奇行はしないだと? あ”んっ?!文句がある奴は後で校舎裏に来いやぁ! という話はとりあえず置いておくとしてだ、この気持ちを例えるならばメルティアちゃんと添い寝しよ?volume100の抽選数限定版である抱き枕カバー+あの子の匂いを完全再現した香水付きっ/// が当たって、配達される当日の心境だ。
『ふふふふふふっ!ハーッハッハッハッハッハッハー』
すると急に私の歓喜に打ち震えている時に邪魔をする者が現れた。
『やっといつもの魔王様にお戻りになられたかと思えばブツブツと独り言を言い出したかとおもえば、何処ぞの配管工男みたいな奇声を発し、あまつさえ急に高笑いなどとは…… 医者をお呼び致しますか? それかもう、いっそ頭ごと交換なさるのはいかがですか? 知り合いに腕の良い方がいらっしゃるので。
それから…… 』
大変な状況下だったのに、今まで何処をほっつき歩いてか分からん秘書が続けてこれ見よがしに主に対して暴言を吐こうとする奴を黙らせる為に殺気を出しつつ。
『おい、ネアっ!敬語で言えば何を言っても許されると思うなよ? 人の頭を……いや、人じゃねーけど、俺が頭が可笑しい奴みたいに言いやがって!大変な時に居なくて急に何事も無かったかのように現れてよぉ…… 何してたんだ? てめぇ…… お?』
この俺の殺気を浴びてもなお、表情変えずに何処吹く風みたいな顔の無表情の女は自称【神魔界随一のか弱い傾国美人秘書】らしい…… が! コイツは間違いなく強い。
戦った事は無い(拒否された)が部隊長クラスが束になっても負ける事はないだろう……なにせ神魔だし、 何処かきな臭い奴だが頭は切れるから使える人材だし、問題が有れば対処は可能だ。
『天界の方に女性アイドルグループのライブに行っておりましたが? こちらが今回の戦利品達です。
なかなかの質でしたね…… Tポップ(天界POP=JPOPみたいな物)は度々行くのですが、アイドルも良いものだと痛感しました。
媚びを売るだけの雌の集まりかと思えばそんな事はありませんでした。
先入観や食わず嫌いはいけないと深く猛省致しましたよ』
――― そう、私は偉い神の参謀役や人材派遣会社を経営するバリバリ出来るキャリアウーマンと魔王様の美人秘書という3足のわらじという状態。
こちらの世界の魔力の根源を使い、自分の理想の世界(自分以外は女の子だけ)にしようと企む天界神(スーパーゴット笑)や、対象者に話してしまう秘匿任務の意味も理解出来ない馬鹿天使…… コレはストレスが溜まって仕方がありませんよね? こちらの主様が変になっていたのは戻ってきてから知りました。
でもライブに行くくらいは許されるはずです! そして私は何方に同意して頂き、許しをこうているのでしょうか? 分かりませんがきっと気まぐれなので問題ないでしょう。
『確かに可愛い子が揃ってんなぁ〜 俺は特にこの子がパッと見いい感じだな(メルティアに似てるし)』
『おおっ!やはり魔王様はそちらの方が気に入ると思いまして、グッズを購入させて頂きました。
良ければお納めくださいませ』
『サンキューな!有難く貰っとく、じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!! 』
『急にどうなされました? まさかランダム封入特典のブロマイドが1種類足りなくてグループのメンバー全員をコンプリートしていなかったとか? 来ていた同志の方とトレードを重ねて揃えたはずですが…… まさか、その様な失態をこの私が!』
『ちげぇぇぇよっ!ちゃんと揃ってるよ!ご丁寧に俺の気に入った子が2枚有るし足りてるよ!配慮ありがてぇけどソコじゃねぇんだよ!しかも初参戦の癖にいっちょまえに歴戦の猛者(古参のファン)を同志とか可笑しいだろが!』
『そうですね、あの方達と新参者の私を同列でとらえるのは浅はかでした。
では何故? さては! 私だけライブに行ってお誘いしなかったのが問だ…… 』
『ソッチでもねぇぇぇぇぇぇぇー!!
はて?みたいな顔をするな! その皆目見当もつかないのですが、も止めろやオイ!俺がピンチの時にライブに行くなや! 解決策や主犯を調べてくれてたりしてんのかなーとか思ったのが馬鹿だったわ!! まてや!!普段は表情筋が死んでる顔面かと思えば、迫真の「なんですって?!」みたいのはジワるからするな!! もう……ツッコミ疲れたぜ』
『お巫山戯はここまでにいたしまして。私は事前に有給申請をおこなっており、承認されたのでライブに行きました。
部下にも留守の間に何かあれば通信魔法で連絡するように伝えていました…… が、何も無くコチラに到着した時に初めて知ったのですよ』
表情がいつも通りの鉄仮面に戻り。
先程までのイジり倒す気満々の雰囲気とはがらりと変わり、真面目な空気感で淡々と語る姿を見れば真実である事が分かる。
『分かったよ…… お前の言う事を信じてやる。
つー事はだ、ネアに来られては困るから伝えなかったし、お前は今回の件について無関係って事だな?』
『はい、今回の件についてはノータッチです。
こんな面白そうな事にハブられるなんて
残念ですよ…… 後で首謀者を見つけしだい何故この優秀な美人秘書である私を除け者したのか1時間程問いたいです(コレに関してはあの方は関係ないのでしょう。彼を無理やり分離もとい大人にする必要性がありませんし)。』
疲れたからか、色んなツッコミ要素があるにも関わらず触れもせずに淡々と。
『へいへい、分かった。お前がそんな風に言うなら間違いないんだろうよ…… 問い詰めたくなる箇所が多々あるが、今回は反応するだけの気力がねぇーし聞かないでおいてやるよ』
『信じて頂きありがとうございます。
それで勇者メルティア一行がコチラに向かっているとの事ですが、準備はしているのですか? 下手なお・も・て・な・し、をすれば魔王城の沽券に関わる問題です。
朝のOPENしたネズミーランドや、ハローな猫ランドみたいに華やかに出迎えるのが礼儀ではないでしょうか?』
――― 一見、なんでだよ!! 魔王城はテーマパークじゃねーし!と思ったが、確かに…… コイツの意見は一理ある。
待ちに待った人が来るのだし、それなりの歓迎してます感を出した方がメルティアも喜んでくれるんじゃね? と、思ったので自称優秀な美人秘書に聞いてみる。
『それでなんかプランはあんのか?』
すると彼女は無表情なりに「良くぞ聞いてくれました」と、嬉しそうに。
『まずは 到着と同時に花火を打ち上げて、次に厳ついオーガの門番を兎型獣人達に替えて頂き、バニーガールを着せてお出迎えをさせます。
サキュバス達でも良さそうですが………
それから十二神将はこの間の戦争で使い物にならなくなったので、四天王達とバトルを前座とし、ドライアイス+ピンスポットライトで上から魔王様が降臨なされるというのは如何でしょうか?』
――― プランとしては上々ではなかろうか。
しかしネームドの部下達が揃いも揃ってこの体たらく、相手が悪いとはいえ壊滅状態とは…… 正直に言って、コッチがたるんでただけなのか? あの2人が一線を画してる化物なのは間違いないが、メルティアの成長にはなんだか嬉しくなるし、今からやり合えると思うだけでゾクゾクしやがる。
『いい案じゃねーか! そちらの指揮と準備は任せるぞ? 優秀な美人秘書のネア君?』
『承りました。お任せください』と言うやいなや、一瞬で姿を消した。
自分1人だけの空間になったのを確認してから彼はおもむろに、豪奢な椅子の下の隠し床下収納からメルティアちゃんと添い寝しよ?volume100を魔王ともあろう人がしてはいけない様なニヤケずらで取り出し、スキップで自室に向かおうとすると?タイミングを見計らったかの様なタイミングで先程消えた彼女が現れ。
『魔王様。ご確認したい事が…… あ、御取り込み中とはいざ知らず、申し訳ございません。
事が済み次第、またお声かけ致します』
「お前は…… わざとやってんだろがい!!」と彼にはツッコミを入れる気力は既に無く、何も言わずに自室に籠る事に決めた。
そうして、数時間後…… 満を持してメルティアが辿り着く。
まず目にしたのはタイミングバッチリの連続で打ち上げられる花火、それを見た一行は?
「花火なんて久しぶりですね」
「はなび?っていうの?綺麗〜 キラキラしているし凄い大きな音だね♪」
「魔王城からの攻撃魔法ではないのか?!」
『マジ綺麗じゃん!写メ撮ってイツメンに送ってあげよ。城も映えるぅ〜』
1人はボケ〜と眺めて、2人目は子供の様に目をキラキラさせながら観て、3人目は警戒を解かずに周囲をキョロキョロし、4人目は花火をバックに、突っ立っているメルティアを誘い、ポーズを決めながら写真を撮りまくった後しばらく経ってから
『お前らさっさと入って来いよぉぉぉぉ!』
という声が城の中から聞こえてきて、可愛らしい衣装を纏った亜人種や魔族の花道を通り、城の中へと入っていくのであった。
お疲れ様でした!少しでもくすりと笑って頂けたなら嬉しいです。
ほぼ魔王様メイン