五話〇humans are also called friends.《人生とは時間の最大単位である》
朝。
通学路で大あくびをして目を開けるとそこにはうみが居た。
驚く代わりにてをあげてあいさつをする。「おはよ」
「よっ」うみも手を挙げた。その手の形はグーだ。
「昨日はごめん、突然用事ができて」
内容についてうみに語るつもりはない。そんなことしたら無数の方法による完全無欠なアプローチを組む作戦会議が始まりかねない。
「いいのいいの。特に大事ってわけじゃないし」
「そう」
「どんな用だったの?」
はぐらかせば簡単だろう。相談すればもっと簡単に事が運ぶこともわかっている。
思考をめぐらすたびに、太陽がまぶしく私を照り付ける。眩しいそれは地球に24時間周期をもたらし、私に倦怠感をあたえる。
「係の仕事がね」
「そりゃ災難だ」
羽子うみといえば信頼度の代名詞であり、先生共からの仕事をこなすことに長けている。断り方のレクチャーでも始まるのかとも予想したけどそんなことなかった。
「有織ってゲームすきだったよね」
長い付き合いだ、だけどゲームで一緒に遊んだこともないし逆に隠したこともない。
「いったっけ」
「小学生のころだったかな、よく覚えてないけど」
何で聞いたのだろう。だが隠したわけではないなら取り繕ってもおかしいだろう。
「好きだよ、びっくりするくらいね」
「どんなゲーム?」
「言っても分かんないよ、GioGとかGunsLemaとかGrobeLegendsっての」
「わからん!」
彼女はどうでもよさそうに呟くが、その態度が妙に腑に落ちなかった。興味のないタイトルを聞くのは英語の勉強にすら劣るだろ。
学校についた。うみと別れて教室に向かう途中のこと。
「よう有織、おまえゲームがすきなんだったな」
布竜ゆいきに声をかけられた。
「なんで…知ってるの」
10年知り合いなら風の噂で知っていてもおかしくはない、が今それを私に言うのなら理由は他にはないように思える。
「デートならゲームに誘えって、羽子が言ってたんだ。そういえばゲームが得意とか言ってたなって」
「は?…いや、え?」
「映画じゃなくてゲームしよう。あした」
彼がゲームを提案したこともそうだが、そんなことより私に食い下がったことに面食らった。すでにバッドエンドで終わったはずなのに。
「…」
霊峰で考えたことを…連絡先すら知らないことを思い出した。
空が陰り、窓から見える運動場が暗いグレーに様変わりする。
「しょうがない。ちなみに私はガチだから、下手だったら煽るよ」
「コントローラーを握ったら性格が変わるのか?」
ある意味そういえないこともない。だがそれは重大な秘密にかかわる事だ。最悪の事態が頭をよぎる、そうはさせないそれだけはダメだ。長夜鬼症候群を世間に晒されてはならない。
「そう。いやじつは最新機種にはコントローラーがないからそんなことはないよ」
「へえ」
急に早口になる私が面白いのか、それとも私とデートすることが面白いのか、彼は笑顔だ。
まぶしい。太陽を引き合いに出して言えば、それよりずっと。