四話●"please shine again," whisper in the dark.《乾いた青に紅》
午前4時。
あれから5時間ほど経って、私は霊峰の麓にいた。
私のしたことといえばここまできたのと、イベントを探して強敵と連戦したくらいだった。役に立ててないどころの騒ぎではないが、一つだけ得たものがある。
ここの景色はとても鮮やかだ。
背後には信仰すら集めるであろう山が赤く輝き、目の前には青く静かなみずうみが佇む。
全てのコントラストの上限を集めたかのようで、私がここにいるのは間違っているのではないかと思わせた。
ジーニアスと手をたたきたい気分だ。作った人は天才だと。
美しいこの世界が作りものである事実に時々がっかりする。よく出来すぎていて、元の世界が何か欠落したものに見えてしまうこともある。
昼間の事を思い出していた。
なぜ、断ったのか分からないのだ。昼間は頭が鈍ることは重々承知だし、恋愛沙汰など得意ではないからほかの男であるならば断るのもなりゆきとして普通の事だ。
ただ、「布竜ゆいき」は簡単に言ってしまえば憧れだった。
しかも十年来のだ。
片恋と言ったら少し違うかもしれないが、それでも視界に入るたびに意識が向いてしまう。名前を聞くたび動揺する。そして呼び出された時には、心臓が止まるかと思った。
もし、あの場で、今の、「夜の私」が答えていたら? 妄想かな、こんなことは。
いや、妄想ではない。
その事実に気が付いた時、一瞬だけ頭が真っ白になった。
ゲームをログオフし、スマホを操作する。
クラスのグループには加入できていたので、その中から「布竜」のアカウントを探す。
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どれだ? わからない。
誰かに聞く? そんな事をして悪目立ちしないか?
そもそも彼と話せたところで意味があるのか?
堂々巡りの思考の溝に落ち、時間を浪費する、決定的なリアルの前に引きも押しもできぬまま。
朝が来た。