表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/31

四話●"please shine again," whisper in the dark.《乾いた青に紅》

午前4時。

あれから5時間ほど経って、私は霊峰の麓にいた。

私のしたことといえばここまできたのと、イベントを探して強敵(モブ)と連戦したくらいだった。役に立ててないどころの騒ぎではないが、一つだけ得たものがある。


ここの景色はとても鮮やかだ。

背後には信仰すら集めるであろう山が赤く輝き、目の前には青く静かなみずうみが佇む。

全てのコントラストの上限を集めたかのようで、私がここにいるのは間違っているのではないかと思わせた。

ジーニアスと手をたたきたい気分だ。作った人は天才だと。


美しいこの世界が作りものである事実に時々がっかりする。よく出来すぎていて、元の世界が何か欠落したものに見えてしまうこともある。


昼間の事を思い出していた。

なぜ、断ったのか分からないのだ。昼間は頭が鈍ることは重々承知だし、恋愛沙汰など得意ではないからほかの男であるならば断るのもなりゆきとして普通の事だ。

ただ、「布竜ゆいき」は簡単に言ってしまえば憧れだった。

しかも十年来のだ。

片恋と言ったら少し違うかもしれないが、それでも視界に入るたびに意識が向いてしまう。名前を聞くたび動揺する。そして呼び出された時には、心臓が止まるかと思った。

もし、あの場で、今の、「夜の私」が答えていたら? 妄想かな、こんなことは。


いや、妄想ではない。

その事実に気が付いた時、一瞬だけ頭が真っ白になった。


ゲームをログオフし、スマホを操作する。

クラスのグループには加入できていたので、その中から「布竜」のアカウントを探す。




どれだ? わからない。

誰かに聞く? そんな事をして悪目立ちしないか?

そもそも彼と話せたところで意味があるのか?

堂々巡りの思考の溝に落ち、時間を浪費する、決定的なリアルの前に引きも押しもできぬまま。

朝が来た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ