三十話●SUNDAYⅢ《神様代理》
「確かにそうです。ですが今は【ノギヤ】と名乗らせてください」
私ではなく、私の力の名。
親からもらったほとんどは変わり果てた。【複月有織】は最後の一つだったのかもしれない。不眠症すら本当のアイデンティティではなく、【起きた】ことで意識が一新されたようだ。
革命の第一歩はまず、名乗りを上げるところから。
「そうね。じゃあ私の事も冬宮って呼んで」
前回もそうだったが、冬宮の声は意識せざるを得ないほど色っぽく、吸血鬼になった高揚感も合わさって残虐性を伴ったリビドーを感じた。
「冬宮さん。リアルで会いませんか。詳細はまだいえませんがGioGの問題と福城についての話し合いがしたいんです」
「りょーかい。どこにしようか」
「あのゲーセンとかどうですか」
「おっけー」
通話をきった。触手は手足のように動き、命じてもないのに繊細にスマホを操作したのだ。
「ゆいきに聞きたいんだけど…。なぜ庵治ゆらめがあのとき冬宮じゃないと思ったの」
「言っても殺さないなら」
睨みつけてから首を振る。
「だって生徒会長キレイだろ? 見てると分かるんだよなんかちげえって」
うみが何故か口をはさむ。
「それって有織より?」
「…」「いや、生徒会長には調査するべき謎がなにもないからな。そういう点でいえば有織の次は羽子」
「有織、こいつ殺した方がいいよ」
目をつぶって首をふった。
「会長は私がもらうからだめ」
うみとゆいきがその瞬間同調したのを見逃さない。
鎌を解除し、モレロノミコンをカバンに詰め込む。スキルをあと何回使えるかは分からない。マナの回復を術がないからだ。できるだけ節約する。
「ゆいき。うみ。あなたたちは私が守る。でも力を貸して」
「なんていったって血の約束だからな」
「私も助かる約束だからね!」
文字通りの【魔境】ゲームセンターへと向かった。足取りはそれぞれだったが、一応協力する意思があったので最後には揃って辿り着いた。