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十二話●Invention called the God.《ほんの数人が世界を覆す》

「もしもし」

電話口から聞こえてきた声は、異常に思えるほど色っぽくて、何事かと思い、危うく「かけ間違いでした、すみませんすみません」とパニックになりそうになった。

「ええ、わたしが冬宮です。その反応がみたくて男のふりをしてるわけじゃないけど、どうも性にあってて。ごめんね」

「えっああ。はい、そうなんですか。びっくりしました」しどろもどろになって本題を忘れた。

「あなたは本当に女性なのね。じゃあJKってのも? 夜間学校とか?」

「あはは…それは嘘ってことにしといてください…」

「そう?まあいいわ」

どうやら彼女…冬宮は横になって通話をしているようで、ときどき、なぜかどきどきする。

確かに性別を偽っているプレイヤーはたくさんいる。というかGioGに関して言えば、ある意味性別という概念を超えて存在しているといってもいい。私もアバターこそ女性にしているが、今の冬宮のように男性だと思われてることはおおい。そして誰も気にしない。

「それで本題なのですが、ビスオはGM権限に近い力を行使して、チャットの内容やアイテムを盗めるらしいんです」

「へえ? GMROOMってやつか。たしかベータテストだかで賞品だったやつだね」

知っていたのか。βというのは初耳だ。クローズドでしか行われていないと思われる。

「それさえあれば悪事もしたい放題なんですか?」

「そうだねえ。それさえあればかなりやりたい放題できる。仕組みの前にまず前提なんだけど、このゲームの技術についてどれくらいわかっている?」

「ほとんどわからないです」

モニターに手を重ねた瞬間、まるで別世界のような光景が広がる。そこにつかわれている技術を知るのは私じゃなくていい。


「まあそうだよね。ひっくりかえってもいいよ。本当は”世界そのものをつくっている”んだよ。いつのまにか世界創生の技術ができてたらしい。おっそろしいよねえ」

冬宮は眠たそうだ。それだからか判断がつかないが、突飛なことを言っている。反応に遅れて沈黙してしまう。

「信じるも信じないも関係なく、間違いなく真実だよ。ゲームマスターと呼ばれる人たちはそれこそ神みたいな存在なんだ。まあ苦労してるみたいだけど」

「このゲームがやけにリアリティがある理由はそれなんだよ。プレイヤーしか魔法を使えない。全てがシステムで管理されてるわけじゃない。プレイヤーの魔力を利用した”システムパネル”がこのゲームの全てで、ゲーム上にあるものは全て真実だ。ただ加工されているだけで」


「………えっ?」

つい声が漏れた。じゃあ、太陽は? 私の肉体は?長夜鬼症候群は? 空、星、宇宙は?なにもかもそこに本当にあるというのか。

「そしてGMROOMは使用者と対象だけの空間を創るアイテム。厳密にはGioGと関係なくて、だから正規のGMにも対応できない。問題が露見される前にいくつか流出してしまったようでね、ネット上の闇市にかけられたりもしたみたい」

冬宮はすでに話を進めていたが、それに割いった。

「えっと、こちらからも調査したいので時間をいただけませんか。頭が回ってなくて」

「そうね。それがいいわ。私も眠たかったし……いや、もう少し仕事が残ってるからまだ眠れないか。Yuhzが私とリア友だってこと知ってたっけ? 三人のグループを作っておくから、アドレスをメールで送るわね」

通話をきった。すぐにグループ招待のメールが来ていたが、リンクをクリックするのは後回しだ。

まず、先ほどの会話の裏を取るために、ブラウザを起動する。するとホームに設定された検索エンジンサイトのトップニュースが目に入った。

【GioleoGrove新規アカウント作成に制限。SMWに脆弱性発見】

SMWとはソーサリーメイクワールドの略だそうだ。

すこし調べてみたところ、実在力元素”エーテル”の発見により研究が飛躍し、ものの数年で完成していたらしい。

私たちの住む世界はただ【A】と呼ばれている。なぜなら名前を付ける方法がない。地球という星が”地”と”球”で表せられるように、earthという単語がただ”大地”を表す言葉だということのように。


「時間の使い方を考え直すか…」

深夜に勉強したことはほとんどなかったのだ。

リンクをクリックして、「ノギヤです」とだけ言っておいた。


現実に戻ってきて時計をみるのは習慣になっている、二時だ。

そして今日は布竜とゲームをする日である。

ん?あれ、アカウント作成停止のタイミング最悪じゃん…。どうしよう。デートスポットも決めていたのに。

GioGにログインする気も起きなかったので、布竜と遊ぶためのプランを考案した。その内に、朝を迎えた。時間の半分を音楽鑑賞に使ったことを伏せるつもりはない。

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