邂逅
(ん〜…なんか知らない匂いがする………はっ!!)
嗅ぎなれない謎の匂いで、ふと目を覚ますイラリア。
身体を起こして辺りを見渡す。
知らない匂い、知らない家具、知らないベッド、知らない天井。
状況が理解出来ずに狼狽える。
(え?私本屋で買い物して帰ろうとしたら、謎の気配がしてから身体が動かなくなってそれから…やばそうな何かに魔法を放って…)
数秒考え込んだが、この謎の場所に来る経緯までには至らなかった。
(そう言えば今何時なの!?)
再び辺りを見回し、時計を探す。
だが時計は見つからない。
事の経緯や状況など、色々考えて居ると突然何者かの気配に気がついた。
その気配はドアの前で一度止まる。
するとガチャッとドアが開き、真っ白な長い髪に、目の赤い背の高い男が部屋に入ってきた。
その瞬間、イラリアは胸の鼓動が高鳴り、その男から目が離せなくなっていた。
その男はイラリアを見るなり「あっ…」っとだけ言いその場で立ち尽くしてしまった。
突然過ぎる出来事に、イラリアは呆然。
数秒の間お互い何も喋らず、身動きも取らずにただ見つめ合う。
「あ、あの…ここ何処ですか…?」
ふと我に返ったイラリアが先に空気を破る。
「ここ…ふーの家…」
男は下を向きながらそう呟く。
「えっ、ふー?…ふーって誰?」
条件反射的にイラリアは思わずツッコむ。
「え、いや…ふーはふーだよ…」
と男に返されたが、全く理解できないイラリア。
このままじゃ埒が明かないと思ったイラリアは別の話題を振る。
「貴方は何方様で…私なんでここに居るんですか?あ、あと今何時です?」
一つ質問するつもりが、疑問を全て言ってしまう。
すると男は下を向いたまま、
「ふーは…フレンディア…・フレンディア…」
(自分のこと名前呼び…こんなカッコイイ青年が自分のこと名前呼び…)
「い、今は十二時三十二分…」
名前呼びが気になりすぎて時間の事など頭に入ら無かったイラリア。
(…?フレンディアって確か…)
何となく察しは付いたが、怖すぎて話を聞こうにも聞けずに、ただ沈黙が流れる。
すると「お姉ちゃんは悪い奴?
なんであんなところに居たの?見張り?」とフレンディアが問いかける。
「私は本屋の帰りで…って…あ!!」
ここでイラリアは全てを思い出す。
「フレンディアさん…?あの時私が持ってたはずの本って何処にやりましたか?持ってきてくれてます…?」
あの本はほぼ禁書と言っても過言じゃないレベルの代物。
落として失くすなんてことがあればミラさんともう一生口なんか聞けない…
「本!面白かった!下にあるから後で返す!」
「…え?あの本を読んだの?」
「え?うん。面白かった、全部知ってるやつだったけど!」
(ミラさん曰く、あの本は相当な魔法の使い手で尚且つ、魔法構築技術に長けてる人じゃないと解けないって話だった気が…
いや、それもそうだけど、全部知ってるってどういう事…?
空間魔法の継承者?ミラさんの知り合い?もしかして息子…?え?え?)
再び思考停止に陥るイラリア。
「お姉ちゃん名前は?」
イラリアのことなどお構い無しに質問する。
「私はイラリアよ。警報が出た瞬間に貴方が現れたものだから、吃驚しちゃって魔法を撃ってしまったわ。ごめんなさい。」
とりあえず相手を刺激しないような返事を返し、冷静さを取り戻す。
「もし良かったらここが何処か教えて欲しいんだけど…」
一区切り置いて質問を投げる。
だがその質問は無視され、「後もう一つ質問する。お姉ちゃんは強い?」と逆に質問を受ける。
(学園の中で言えば上位の方だけど…この選択は間違えると後が怖そうね…)
「一応魔物を倒せるくらいの実力はあるわ。多分貴方のことは倒せない。」
自分の中で妥当な返事をした。つもりだった。
「なら問題ない。ふーを殺して。」
想像の斜め上の返事でイラリアは驚き、再び思考停止した。




