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序章三

本を取りに行ってから五分、ミラが本を持って出てきた。


「渡す前に一つ。

いい?イラリアちゃん。勉強熱心なのはいいけど、これは世界を変える可能性のある本なの。

あなたに扱えるものじゃないと思ったら、躊躇わないで消炭にするか私のところまで持ってきなさい。

それと、この本には特殊な術式を埋め込んであるから、他の人が開くと白紙に見えるけど、解ける人には解かれちゃうものなの。

だからいくらあなたが信用している人でも見せちゃダメよ。

この約束が守れないとこの本は渡せないわ。」


ミラはイラリアに強く言った。


さっきまで笑顔だったイラリアは、ミラの話を真剣に聞いていた。


「はい。分かりました。

でも、燃やすって言うのはちょっと出来ないかもしれないので、その時はミラさんの所まで戻す事にします。」


ミラはイラリアの言葉を聞いて安心したのか、強ばった表情が緩んだ。


そして、「じゃあこれ。頑張ってね。」と言うとイラリアにその本を渡した。


「ありがとうございます。お邪魔しました。」そう言ってイラリアはミラの本屋を出た。


ミラは現役の魔法使いで、今動ける魔法使いの中でも世界屈指のレベルらしい。


実際に悪魔狩りの時は本屋を休みにしている。


だが、悪魔狩りは最近ではほとんど無いらしい。


この世界にはハザードレベルが一から五まであり、悪魔襲来がレベル三で、レベル五は自然災害によるものしか今までの歴史の中では無いと記録されている。


ただ、悪魔襲来でも国の危機なので、動ける魔法使いや剣士などは全員駆り出される。


ミラの本屋を出てから五分の事。


「緊急放送。緊急放送。現在、何者かの襲撃によって、西区で首の無い人達が数名発見されました。

切傷が新しいため、まだ犯人はこの近くにいると推測されます。

外にいる人は直ちに家の中に避難してください。

繰り返します。…」


イラリアは久しぶりに緊急放送を聞いた。


家の中に入らないと危険という事は分かっているのに、イラリアの足は動かない。


西区はイラリアが今いる所。


その場で立ち尽くす事しか出来ないイラリア。


(気配がする。)


そう感じたイラリアは、咄嗟に自分の気配を殺した。


だんだんと近づいてくる気配に、イラリアは更に体が固まる。


(今日で死ぬかもしれない。)


そんな言葉がイラリアの脳裏を過ぎった。


そしてその気配はとうとうイラリアの目の前に。


パニックになったイラリアは、目の前に居る何かに、無意識に、無詠唱で風の魔法と光の魔法を放っていた。


すると、光が壁やガラスに反射し、イラリアの目の前は昼間のように明るくなり、目の前にいる何かと、その何かの周囲を照らした。


それはフードを被っていたらしいが、イラリアの風の魔法でフードは脱げていた。


イラリアの目には、返り血で赤く染った服を着た、背が高く、髪が白く長く、目は猩々緋のように赤い少年が映っていた。


まるで悪魔の様な、いや、悪魔そのものの姿。


だが、イラリアはその人物を誰か知っていた。


連続猟奇殺人事件の原点と言われている、ミルカレシアから始まった首無事件、その始まりの事件の殺された子供にそっくりだったのだ。


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