姫と騎士
「もう、タチバナさん!私にはああ言っておいて自分から名前明かすって何なんですか!それに何回も言ってますけどここはネヴァーランドじゃありません!」
プシュケさんがタチバナさんを捲し立てる。美女に迫られてタチバナさんもタジタジとなる。
「いや、こいつには本名を明かしても大丈夫だ。何故ならこいつは俺やグリムと同類だからな。仮に敵のものだとしても大丈夫だという事は飛蝗のお陰で分かっただろう?」
「それはそうですけど…そういやなんでタチバナさんと同じってわかったんですか?」
「それはだなぁ、ジョン・タイターにミシェル・ノストラダムスなんて返すやつ、この世界には俺達しかいないからだよ、それにあんな特異な能力持ちもな」
なんだか私のいない所で話が進んでいる。特異な能力っといったって私は走るのが少し速いだけの一般人なのに。それにネヴァーランドってなんだ?いや、ネヴァーランドは流石に分かるけどここがネヴァーランドって言うのがわからない。妖精でも飛んでるのかな?辺りを見渡してみても惨殺死体が少々あるくらいだ。もしかしてあのケバい蝶が妖精だったのかな?もしそうなら捕まえておくべきだった。惜しいことをしたもんだ。そう考えていると話し終わったのかタチバナさんがこちらへやって来た。
「えーと、なんて呼べばいい?ミシェルか?ノストラダムスか?それとも大予言者様か?」
「………造、造香耶です。造でも香耶でもどちらでも構いません。」
「へぇ、造香耶ねぇ。じゃあ姫でいいか?」
「やめて下さい、造でお願いします。」
「はいはい、で、造さん?ここがどこか分からないだろう?ひとまず飯でも食いながら話でもするか?」
グゥとタイミングを見計らったかのように大きな音が森に響き渡る。私ではなかったのでタチバナさんの方を向くが首を振って全力で違うということを示してきた。タチバナさんとほぼ同時にもう1人の方を見てみれば、そこには顔を真っ赤にして恥ずかしそうに俯いているプシュケさんの姿があった。可愛い。
「ハッハッハ、腹の虫も鳴いてるし飯にするか!プシュケは第三の目を使って見張っといてくれ。」
そう言ってタチバナさんは近くの枯れ枝を集めだし、火打石で火をつけようとしている。こんな世界だから魔法でパパパッと終わらすのかと思ったけどそこら辺は原始的なのね。
「造、今お前魔法使わないのか?って思っただろう?後で説明するけど端的にいえば俺もお前も普通の魔法は使えない、ちなみにプシュケは普通に使えるぞ、上手い下手は別として」
そうこう話しているうちに火がついた。タチバナさんが背負っていた布袋から金網と鍋と干し肉っぽいのとか固形スープの素的なのを取り出して料理を開始しそして真剣なまなざしになりこう言った。
「さて、話そうか、この地球とは異なる世界についてを」