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階段  作者: 夢積 涼香
2/2

勘違い?

 「新島?」


 どうにもならなくて、そのままでいると、階段の上からあたしを呼ぶ声がした。


 「 ――― 高宮くん?」


 絶対にありえない。

 ここは、普段人が通らない階段なのだ。

 その上、彼はあたしを嫌っているはずで、こんな風に、心配そうに顔を覗き込んだりも絶対にしない。

 そうは思うのだけど、それでも、目の前に居るのは、高宮くん以外の誰にも見えなくて混乱する。


 「大丈夫か? 具合悪いんだったら、無理しないで保健室に居た方がいいんじゃ……?」

 座り込んでいるあたしの肩を掴んで、付き添うように歩き出そうとする高宮くんに、あたしは意を決して顔をあげた。


 「高宮くん、嫌いな人にまで優しくする必要、ないと思う」

 「…………は?」

 「さっき、言ってたじゃない。あたしが階段で転びそうになったときに……『落ちれば良かったのに』って」


 気まずい時間が流れる。

 黙っていればよかったのかもしれない。気が付かない振りをして、優しくしてもらえばよ良かったのかもしれない。

 そうは思うけれど、高宮くんに無理をしてほしくはなかった。


 スッと、高宮くんの手が、肩から離れるのを見て、冷静になる。

 (やっぱり。……優しいのも、困りものだよねぇ)

 そのまま、何かを振り切るようあたしは、階段を駆け上る。と、上に到着するかどうかのところで、呼び止められた。


 「新島!」


 切羽詰った高宮くんの声に、ビクッと身体を震わせた後、おそるおそる後ろを振り返る。

 「……なに?」

 「さっきの……『落ちれば良かったのに』って言ったことだけどっ!」

 とても言いにくそうに。だけど、早く言おうと急いて、高宮くんは言葉を続ける。

 「……そういう意味で言ったんじゃないんだ」

 少し困ったような顔をした彼に、あたしも困って首を傾げる。

 (じゃぁ、どういう意味だったの?)

 「そういう意味にしか聞こえなかったよ?」

 「うん、普通に聞けば、そういう意味に取られても仕方ないと思うんだけど……」

 そこで言葉を切って、高宮くんは、階段の上の方にいるあたしをグッと見上げた。


 「さっき。俺、ここに居たんだよ」


 「え?」

 どういうことだかわかってないあたしにもう一度、

 「だから! 新島が階段から落ちそうになってたとき、俺は新島のすぐ後ろに居たんだってば」


 新島が落ちても、すぐに支えられるところに。


  「だから『落ちればよかったのに』っていうのは、そうなれば、新島と話すきかっけが出来るかなとか。……抱き留められないかな、とか、そこから新島が俺のこと意識してくれないかなとか、打算的なことを考えて言ったんであって、新島のことが嫌いだから言ったんじゃないんだよ」

 高宮くんは、ここまで言ったらもういいや、と、言いにくそうだったのが嘘のようにすらすらと言葉を連ねて、そのまま階段を上がってくる。一歩一歩近づいてくる彼に呆然をしていると、ようやくあたしの隣に並んだ高宮くんは、とどめの一言を口にした。


 「というわけだから、好きな人にだったら優しくしても問題ないと思うんだけど?」


 そう言われて、すぐに言葉が出なかったあたしを、誰が責められるだろうか。

 具合が悪いわけではないのかと高宮くんが再度問いただすまで、階段立ち止まるあたしの耳には、次の授業のチャイムも聞こえなかった。

前後編、としても良かったかなぁ。

サブタイトル書くの、苦手だなぁ。

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