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お礼

 コン、コン、コン、コン


 夕食を食べ、暫くしてからシャルティ様の部屋を尋ねた。


 「御入りなさい。」

 「失礼します。」


 既に湯浴みが済んだのか、ネグリジェにカーディガンを羽織っており、ソファーに座っていた。対面のソファーに座って「朝は突然の話ですみませんでした。それでどういったお話しでしょうか?」と呼ばれた理由を聞き出す。すると、初めて微笑みを浮かべ、頭を下げた。


 「アールニスのこと、ありがとうございました。」

 「???どういうことでしょうか。」

 「一つは母親として貴方にお礼が言いたかったのです。アールニスも王子、帝国へと行けば権力争いに巻き込まれ命の危険はあったでしょう。それを貴方自らアールニスと替わると仰ってくれました。内心、安心したのですよ。」

 「お礼を言われるようなことではないですよ、それに親が子の安全を求めるのは当然のことです。」

 「まぁ!私は貴方も息子同然の様に思ってますよ。いつお義母様と呼ばれるのかしら?」

 「ふふふ、いつになるでしょうかね?」


 ちょっとシャルティ様の膨れっ面が可愛い過ぎるので、からかうことにした。


 「シャルティ様は美しいので将来父上から取り上げる予定なので」

 「あらあら、こんな叔母さんにいいよってはだめよ?」

 「それは残念です、まだまだ男としての魅力が足りないようですね。」

 「うふふ……貴方はまだ8歳なのよ。あと6年もしたら、十分魅力的になると思うわ。同世代の子にとっては、いまでも魅力に見えるでしょう。」 

 「いえいえ、まだまだ若輩ものですよ。」

 「そうだわ!もし失敗して戻ったらクリスティーをお嫁さんに貰ってくれないかしら。きっと、喜ぶわ!」

 「義妹ですよ?そんな気になれると思いませんよ。」

 「あら?半分しか血の繋がりしかないから大丈夫よ。」

 「勘弁してください………」


 参りましたと肩をすくめる。からかう積もりが逆にからかわれたようだ。

 

 「あと、もう一つこれは貴方のお母様のことで、話があります。」

 「母様のこと?」


 いったいなんのことだろうと、首を捻るとシャルティ様が真剣な顔になった。


 「貴方のお母様は、病気でお亡くなりなったと思ってあるでしょうが、実際は病気であったのかすら不明なのです。」


 ソファーから立ち上がる。


 「それは毒などで暗殺された、ということですか!?」

 「それはあり得ません。貴方も存じているかもしれませんが、治療魔法はあり、定期的に解毒などの治療なども受けていたため、暗殺の可能性は低いのです。」


 治療魔法はあるのだが、使い手が極端に少なく、宮廷御抱えに何人か雇っている。能力の高さで雇われているので、より能力のある人材と入れ替えるため、宮廷御抱えの使い手は日々研鑽をしている。なので治療をしているように見せかけることはあり得ないのだが。


 「しかし使い手の家族などが人質に捕られていたとなれば、見せかけの治療もあったのではないですか?」

 「それも含めて問題ありませんでした。よく調べておきましたからね……私にとっても貴方のお母様の状況は常に調べていましたから。」

 「それは…しかたのないことだと思います……」

 「疑わないのかしら?私が王妃になるために貴方のお母様を暗殺させたと…」

 「そうであれば、王妃なんてなっておりませんよ。父上が可能性を調べ損ねることはないはずですから。」

 「そうね……可能性があるのは、未知の病だけれど、病であれば貴方のお母様1人だけですむはずがない。」

 「そうですね…病であれば私もなっていてもおかしくないですから。」

 「あとは…考えられうる可能性…呪い…これは実際見てはいないのだけれど、背中に黒いアザの様なものがあったと侍女から聞いたことがあるの。それを医者や治療の使い手も治そうとしたけれど出来なかったみたい。痛みはないとのことで気にはしなかったらしいのだけれど。」

 「呪い…ですか…(あり得なくはないとは思うのだけど…)」

 「可能性の話よ…未知の病の方がまだ可能性としてはあるから、ただ知っていて欲しかっただけ…」

 「シャルティ様…教えて頂きありがとうございました。」


 頭を下げ礼をのべる、母は会っている時は病気の心配しないよういつも、にこやかに笑っていた。辛いそぶりすら見せず、最後まで…


 「…もう夜も深まってきたわ、部屋に戻ってゆっくりしなさい。」

 「そうですね…では失礼します。」


 部屋を出ようと扉に手をかけ、振り向く。


 「おやすみなさい。」

 「おやすみなさい…お義母さま」

 「…あら…」


 シャルティ様が顔を赤らめたのを確認し、部屋を出る。不意討ち成功!と心の中でガッツポーズし、自室へと戻った。 

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