兄決断する
俺が住むリスティアナ王国、魔法を独自に特化させ、農業が主な比較的豊かな国である。バルマート帝国の庇護にあり、諸国からの侵略の恐れも少ない。6歳の比較的温かい時期、アルの母シャルティ様が正式に王妃の座についた。この時アル5歳、義妹クリスティーは1歳になった。
そろそろ次期王位問題を決着させたい。継承権は俺の方が上だか、まだ3人とも子供なので、誰を次期王にすることは明言されてない。義妹が王位を継ぐこともあるらしい、才能主義なため過去女性の王が居たそうだ。シャルティ様は俺よりは二人のどちらかになってほしいだろうし、俺も義兄弟で争うことはしたくない。…ちょっとした考えもあるし。そんな訳で義弟と義妹にはちょっと頑張ってもらいたいのだが…
最近アルが伸び悩んでいる。魔法についてだ、普通は四大元素《火・水・風・土》の一つをマスター出来れば良いのだが、俺がすべてマスターしてしまったせいで、2つしか思うように習得できない状況に悩んでいるらしい…6歳でマスターした時点で化け物扱いされてるんだが、反則技使ってるから仕方ない。だからあまり気にする必要ないのだが、俺に追いつこうと頑張ってる。うん、可愛やつだ!なのでフォローしなけば
な!
「アル、焦らなくても先ずは習得しやすい方からマスターすればいいんだぞ。一遍にマスターしようとすると余計に時間がかかる。」
「しかし…義兄さんは自分と同じ歳くらいにはほとんどの魔法が使えてたではないですか?」
「そりゃ、指南前から少し勉強してたからな、掛けてる時間が違うから当たり前だ。義兄なんだから義弟より強くないとな!」
「むー、ズルいです。」
「はっはっ、悔しいかったら一つくらい出し抜いてみろ、一つでも飛び抜けてるのは強みになるぞ。」
膨れっ面した義弟の頭撫でる。
「わかりましたよ!絶対一つは追い抜いてみせますから!」
「おう!楽しみにしといてやるぞ。」
「絶対ですからね!」
アルを魔眼《魔力を目に集めた状態》で見て水の魔法は俺を出し抜ける素質があるのはわかっていた。うん、魔眼便利だ、使っているうちいろんなものが見えるようになってくる。まぁ、見える内容が最初はわからないから推理するのが大変なのだか、ステイタスとか見えれば楽なんだけど…魔眼状態は普段はアクアブルーの目が金色になる。魔眼になっても相手になにかを及ぼす訳ではない。訓練したらできるのか?ってな感じだ。
脱線したが、アルはこれで魔法に関してはなんとかなりそうだ。剣術は俺に一日の長があるのはわかっているし、才能もさほど変わらない。ただ武術を習ってるのは秘密だ。バルトは実践形式の指導なので二人同時には教えられないらしい。知ったらまた膨れっ面するだろうしな。だが正直なとこ、バルトはスパルタでぼこぼこにされるから
「はっ…はぁはぁ、なぁ、ふ…つう…型…からはいるん…じゃないか?」
ボロボロで仰向けで倒れ、バルトを見上げる。
「ベオリス様は筋がよいので実践でも十分に型を覚えてられてますよ。あと5・6年もすれば追い抜かれるかもしれませんね。」
「だから…て、俺が…技受ける…必要が…あんの?」
「何事も経験です。私も同じように師範には弄られ…指南されましたからね。」
「いま!言い直したよね!弄られたって言ったよね!」
「気のせいですよ。」
ガバッと体を起こしバルトを睨み付ける、疲れがどっか行った。
「絶対気のせいじゃないよね?一応、俺王子なんだけど!」
「いまは師匠と弟子ですから関係ないかと、それに今のうちだけですよ弄られるのは。」
「もはや訂正しねーし、弄られるの確定!」
「早く弄られないよう強くなって下さいね。」
「うがーぁ」
膝立ちし頭を両手でガシガシとかく。
「元気なりましたね?続き始めましょうか。」
「いや!まってもう少し休ませろ!」
指をポキポキ鳴らし、笑顔で言ってくる。
「人間追い込まれほうが、早く強くなります。」
「そんな追い込まれ必要ねー!」
「では始めましょうか。」
「いや、人の話聞いて?満面の笑みで近づいてくんな‼」
「攻撃して来なければ、攻撃されますよ?」
無理矢理立たされ、投げ飛ばされる。
「鬼畜ー、グハァ。」
アルにはけしてやらせるわけにはいかん。と心に誓った。
クリスティーはあと4、5年先だからいまは気にする必要もない。