第4話。―保健室、僕らの涙。―
陽南都と森に行ってから早1週間。
あれからわたしと陽南都はいい感じなんだけど、どーも翔大とひーちゃんはあんましいい感じじゃなくて。
どーしたんかな?何が起こったん?誰かおしえてや―――。
「雅!なにぼけーとしとん!先生に当てられとるで!?」
担任はあれから即クビ。翔大はずっと不機嫌な顔しとる。
翔大が不機嫌な顔しとる時は怖い。何しでかすかわからん。
だから、そのことでぼけーとしとったんですよ。私は。
「先生!わかりません!算数も恋愛も!みんな何、思ってるんか全然わからん!なんやねん、恋愛ってっっ。。。。」
泣いてしまった。みんなの前では泣かんって決めとったのに。
「そっか。雅ちゃんなやんでるの。。あとから話そうね?」
池脇先生はそういった。わたしらの担任がクビになってからすぐ都会から来たかわいらしい女の先生。
池脇先生のこと大好きやったから、わたしは頷いた。
私は休み時間に池脇先生に呼ばれて保健室に来た。今まで体調崩したことなかったからはじめて来た。
「失礼します。水織先生、池脇先生いますか?」
「居るよ?じゃあ、先生外出るから。じゃあ、保健室のことよろしくお願いするわ。池脇先生」
水織先生は保健室の先生。保健室、行ったったことないからすれ違いでしか会ったことない。
「分かりました」
水織先生は池脇先生の返事を聞くと出て行った。保健室には池脇先生と私だけ。長い沈黙が続いた。
「雅ちゃんって恋のことで悩んでる?」
「違います。友達のことで」
「そうなんだ。その友達がどうしたの?」
池脇先生には全部を話した。翔大が好きだったこと。翔大がひーちゃんと付き合ってること。
私も陽南都と付き合ってること。そして―――
「私、翔大が不機嫌な顔見るん、イヤ。怖い。あいつ、何しでかすか分からんからっ…」
池脇先生は黙って聞いてくれた。私が泣いたら、涙を拭いてくれた。
「私も、中学校の時付き合ってた人が居たんだけど、相当のワルで(笑)自己中、タバコは吸うわ、悪い人だと思った。
でも、そいつのこと大好きだったから別れたいとは思わなかったんだ。
私が『タバコ吸うのはやめて』って言ったら普通にやめてくれたし、『お前のこと大好きだから』って言ってくれた。
今までで一番最高な恋愛だったな。。。いろんなことがあって別れて相手は結婚したけど(笑)
いまでもあいつは私のこと『自分の人生変えてくれた人』って言ってくれてるよ。
恋愛は自分を変えてくれる人とじゃないと、だめなの。妃華李ちゃんは翔大君のために何か出来てる?」
私は泣きながら首を振った。
「だったら相手が不機嫌な顔してたらあなたが変えてあげなきゃ。たとえ、翔大くんの彼女じゃなくても」
「私が変えれるん?ひーちゃんじゃなくて、私がそんなことできるん?」
「出来るよ。絶対!雅ちゃんなら」
先生の話を聞いてると泣いてしまう。先生はしかっりしている。いい人だよ。ホント。
私は泣きつかれて寝てしまった―――。
ガラッ
保健室のドアが開いた。
「どうぞ」
俺は池脇先生に雅のことを聞きに行った。一応、彼氏だからさ。
「雅、大丈夫ですか?」
「あ!君が雅ちゃんの彼氏さんか!かっこいいね!」
なんで、俺が雅の彼氏だって知ってんだよ。
「雅ちゃんに聞いたんだよ。陽南都君のこととか翔大君のこと。全部」
「雅、悩んでたんですか?翔大のことで」
「悩んでたよ、ものすごく。だから、『翔大君はあなたが変えてあげるの。人間には人生を変えてくれる人が居るんだよ。あなたが翔大君の人生を変えるの。妃華李ちゃんじゃなくて、あなたが。』って言ってあげたの」
辛い時、何かがあった時、俺の人生を変えてくれたのはおれのオトンとオカンやった。
オトンとオカンがここに連れて来てくれんかったら雅に会わせてくれんかったかったし、今はものすごく感謝してる。そんなこと考えたらめっちゃ涙出てきた。
「先生、俺も相談していいですか?」
「いいよ。言ってみな?」
雅にしか話したことのない、俺がこの学校に来た理由やいろいろ。
「雅は弱い。誰よりも弱くて、傷つきやすいし、やから、雅を守りたいと思った。
息が合うとかそういうことじゃなくて、妃華李が翔大と付き合ってること知った後くらいから、雅のこと気になってた。
翔大が好きな雅が悲しんでるとこ見て守ってあげたいって思ったんや。
だから、雅と一緒に学校、抜け出した。おかげで学校は大惨事だったけど。
俺があんなことしなきゃ今の雅はこんなことにならんで済んだ。
俺は自己中や。雅、傷つけることしたからっ」
全てを泣きじゃくりながら話した。雅を傷つけたことが辛くて…悲しくて。男やのに。
「ぜんぶ、神様が悪いんだよ。こんな運命にしたんだから。陽南都くん、神様に嫉妬されてるんよ。
かわいい彼女もって幸せものだからさ」
なんでやろ?この先生ならなんでも話せると思った。嬉しいことも、辛いことも。
「陽南都、どしたん?しかも泣いてるやん」
雅が起きた。しかも泣き顔見られるとか最悪や。
「泣いてないわ。てか、お前、泣いてたんやろ?」
「うん…翔大のことで。。。先生に相談して号泣(笑)」
「先生が言ったよーにお前が翔大、変えなアカンで?」
「うん。ひーちゃんじゃなくて私が翔大変えるから」
「おん。わかった。でも、なんでも一人で抱え込まんといてや。俺がおるから」
すっとこの一言が言いたかった。『俺がおるから』って、やっと雅に言えた。
「ツラい。生きてることが辛い…。もう、消えたい。こんな気持ちなるんやったら消える方がマシや…」
雅は俺の腕の中を離れずにずっと抱きついていた。俺は、何も言えなかった。
なんて言ったらいいんか、全然分からんかった。
「ゴメンな…頼りなくて・・・ホンマにゴメン。ゴメンな…」
ゴメンとしか言いようがない。雅は精一杯辛い思いしとる。誰よりもきっと。小6やのに、他人のことで悩んでる雅見て、俺まで辛いやんか。。
二人とも瞳には涙があふれた。
誰かに辛い気持ちを知ってもらいたくて、嬉しい気持ちを知ってもらいたくて、僕たちは生まれてきた――。
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どうっすか??4話。
最後の、「誰かに辛い気持ちを知ってもらいたくて、嬉しい気持ちを知ってもらいたくて、僕たちは生まれてきた――。」をものすごーく入れたくてw
池脇智羽(27)
東京・豊島区出身。
1980年10月16日生まれ。
これからどんどん出していくつもりです!!
水織和美(44)
1964年1月9日生まれ。
こっからめったに出てきません。
こっから、がんばっていきましょい!!!
byサナ