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第19話

「カルネ、洞窟はどうだった?」

「見た目は何も変わりはありませんでした。少し中の方も蜂をやって確認して見ましたが特に発見は」


 晩御飯のカレーを食べながら、マナたちはカルネの洞窟調査の報告を聞いていた。といっても、あまりはかばかしい成果はなかったようだけど。


「じゃ、神龍は洞窟にはいなさそうなんだ」

「いえ、まだそうと決まったわけではありませんわ。そもそも神龍が何なのかも分からない状態ですから」


 確かに。でも、それならばどうやって神龍を見つけ出すつもりなんだろうかとマナは思った。


「とりあえず、洞窟の近くに魔石を仕掛けておきました。動物が勝手に持って行けないように置いたので、明日、失くなっていればそこに何かがいるということになります」

「なるほど」


 以前のカルネの説明によれば、神龍は魔素を好むので、魔石におびき寄せられる可能性があるのではないか、ということだった。魔石の魔力程度では小さすぎて神龍に気付かれないかもしれないけれど、神龍の通り道にあれば何かリアクションがある可能性はある。


「そういえば、今日の崖から落ちた生徒の話、やっぱり神龍のせいなのかな」


 ミレイがそんなことを言ったのは、ミレイだけが思っていることではなく、今、合宿に参加している生徒全員の噂になっていることだった。神龍を探しに行って、離れた場所で記憶喪失で見つかったというのだから、そういう噂になるのも当然だった。


「何か不思議なことが起きている可能性はあるわ」

「何、どういうこと? 何か見つかったの?」


 マナが思わせぶりなことを言ったので、ミレイを始めとした全員がマナの方を見た。


「崖の下を調べて見たけど、何も見つからなかったわ」

「ん? 何も見つからなかったの?」

「そう。()()見つからなかったの」

「?」

「……、落下した形跡すらなかったわ」

「それは落ちてる最中に何かが起きたってことか?」


 バドルスがハッとしたようにマナに問い正した。が、マナは少し考えを巡らせるようにしてこう返答した。


「あるいは、そもそも落ちていなかったか」

「え、それ、ちょー意味分かんないんだけど」

「とにかく、あの件は分からないことだらけね」


 そう言って、マナはその話を切り上げた。実際、マナとヘータの2人掛かりで現場を調べても、何の痕跡も残っておらず何が起きたのかまるで分からなかったのだ。


「……、よし。じゃ、片付けをして、お待ちかねのお風呂の時間だよっ」


 晩御飯を食べ終わり、神龍の話も一段落したところで、ミレイがぱっと立ち上がってそう言った。午後からずっと作っていたお風呂にようやく入るのだ。


「ふふふ。マナさまの湯けむり慕情ですわっ」

「カルネ、お風呂の中で妙な事を始めたら、その蜂を一匹残らず駆除するからね」

「……、はい」

「君たちも覗いたらちょー死刑だからね」

「当たり前のことを言うな」


 真面目にドが付くバドルスが覗きをするのは想像がつかないが、一応ミレイが釘を刺すとバドルスは眉をひそめてそう言った。


 お風呂はミレイの頑張りで脱衣所まで完備された本格的なものになっていた。着替えとタオルを持ち込んで脱衣所で服を脱ぎ、丸石が敷き詰められた温泉に浸かると、1日の疲れがお湯に溶けていくようだ。


「ヘータも入ったら?」

「ふざけんにゃ」


 お風呂が嫌いなヘータは脱衣所にも入らず、仕切りの外から声だけで返事を返した。


「これは、即席にしてはよくできていますわ」


 カルネはマナの盗撮を禁止されてしまったので、大人しくお風呂に浸かりながら、建築の出来を観察していた。そして、レベルの高さに感心したようにつぶやいた。


「でしょ? でしょ? すごくない?」

「本当にすごいですよね、皆さん」


 ミレイが裸で立ち上がって調子よくカルネに絡んでいくと、反対側でデミがため息を吐くように言った。


「私は何もできないで、皆さんの足を引っ張ってばかりです」

「……、そんなことはないですわ」


 と、カルネが予想外に強くデミの言葉を否定した。


「カレーの出来はまあまあでしたわよ。隠し味にマヨネーズを加えると、もっと完成度があがりましたけど」

「うー、それはちょーないよっ」

「うむ。カレーにマヨネーズはあり得ない」


 カルネのマヨネーズ理論にはミレイが即座に否定しただけでなく、仕切りの向こうからバドルスまでもが否定していた。


 しかし、デミはそれでは納得していないようだ。もちろん、隠し味のことではなく、足を引っ張っている方のことだ。


「カレーを作った時は魔力結晶の助けを借りました。私一人ではそれすらできなかったんです」


 デミは本当に落ち込んでいるようで、温泉に浸かったまますっかり肩を落としていた。それを見て、誰も掛ける言葉がないようだった。今度はカルネもどう言ったらいいのか困っているようだ。


「は?」


 けれど、その態度はマナの勘に触ったようだ。


「最初は誰だってできないのは当たり前でしょ? できるように努力をする前からできないなんて言うのは、できないんじゃなくて、やる気がないだけじゃないの?」

「ちょ、マナ。言い方」

「本当のことを言っているの。できるできないなんて言うのは、まず最低限のことをしてから……」

「ごめんなさい」


 デミは、マナの言葉をさえぎって一言言うと、逃げるようにお風呂を上がって出て行ってしまった。


「マナっ!」


 さすがにこれにはミレイもマナに声を荒げたけれど、マナはどうしてミレイが怒っているのか分からなかった。本当のことを言っただけなのに。

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