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第15話

 ランニングを終えて海岸に戻ってくると、シャーミルが体術の組手を行っていた。


 魔法使いばかりの学園の生徒たちには、魔法を使わない純粋な体術はそれほど人気の科目ではないにも拘わらず、この合宿が大盛況になるのは、南の海で海水浴が楽しめるだけでなく、シャーミルが薄着で組手の相手をしてくれるというのも一因に違いない。


 もっとも、下手な下心でシャーミルと組手を希望したものは、大抵、一瞬で蹴り飛ばされるか投げ飛ばされて、何が何か分からないうちに天を仰ぐことになるのだけど。


 マナたちは手分けして食糧を集め、昼食を作り始めた。もっとも、ただ昼食を作るといっても単なる料理になるはずもなく……


「デミ、そんな勢いで熱したら、食べ物が炭になるよ」

「えっ、あ、はいっ」


 デミは魔法のコントロールの練習ということで、鍋を魔法で温め続けるという課題をマナから課せられていた。魔力結晶の補助でいつもよりもずっと魔法のコントロールは向上しているものの、適度な強さの火力を長時間維持し続けるのは簡単なことではなかった。


「デミ、頑張れー」


 もっとも、ここに集まっているのは普通の生徒ではないので、その程度のことができないのはデミだけで、他の5人は適当に会話しながら片手間でやってしまえる程なのだった。


「え、神龍?」

「そうですわ。あら、ご存知ありませんでしたの?」


 料理を作っている間、近くにいた他のグループと雑談をしている時に神龍のことに話が及んだ。どうもその生徒たちは神龍がこの島にいるという噂は知らなかったらしく、興味深そうに食いついてきた。


「もちろん、ご存知ありませんでした」

「神龍は魔素を好むと言われているのです。ですから、私、今回こういうものを用意して来ましたの」


 そう言って取り出したのは以前見せてくれた魔石だった。


「あちらの海岸沿いに興味深い洞窟がありましたから、後で、その近くにこれで仕掛けをしてみようと思いますわ」

「他に神龍が住んでいそうなところってどこかな?」

「そうですわね。魔素の多いところですから、例えばこの島の火山の火口などは可能性が高いですわね」

「お前ら、火口には近づくなよ」


 カルネが火山の火口について言及すると、シャーミルが近づいてきて警告した。


「噴火はないが、火口付近はまだ熱を持っていてガスも漏れているから危険だ。洞窟の中も、入るなら私に一言言って行け」


 その後、カルネに神龍の話を聞いた生徒たちが、他に何人かのグループを誘って神龍探しに出かけていった。


「あれ、カルネは行かなくていいの?」

「やみくもに歩き回って見つかるというものでもないですわ」

「ふーん。そんなものなんだ」


 情報を与えるだけ与えて自らは動こうとしないカルネの態度に疑問を持ったミレイが尋ねると、カルネが平然としているので拍子抜けした感じがした。しかし、次の発言でやはりカルネはカルネだとその場にいた全員に戦慄が走ったのだった。


「今探しに行った生徒たちの肩に蜂を1匹ずつつけておきましたの。何かありましたら、すぐに連絡が届きますわ」


 どうにか鍋を焦がさずに昼食を作り、食事を終えたマナたちは、ようやく上陸後初めての自由時間となったのだった。


「あの、ビーチバレー、しませんか?」


 そう言って空気の抜けたボールを取り出したのはデミだった。使うときにだけ空気を入れればかさばらずに持ち歩けるというので、最近トルンで流行っている遊び道具だった。強度には不安があるものの、こういう旅行の時は便利だ。


「ちょーナイス、デミ」

「何、それ?」


 例によってマナは魔法に関係のない流行り物には疎いので、ミレイが呆れながらもルールを説明してあげた。その内容をこっそりバドルスが聞いていることは全員気付いていたが、誰もそれを指摘はしなかった。


「にゃー、これ、おもろいのにゃっ」


 その間、丸く膨らませたボールに猫としての本能を刺激されたヘータは、前足でキックして転がしたり、上に乗って転げ落ちたりと興奮した様子ではしゃぎまわっていた。興奮で、水属性の干渉で身体がだるいことも一時的に忘れているようだった。


「なるほど。要するに、このボールを相手にぶつけて倒せば勝ちってことね」

「ちょー間違ってるよ!!」

「ふん。そんな子供だましの遊び、栄誉あるトルニリキア学園の学生がやるものではないのではないか?」

「ははぁ、バドルスはルールが分からないからそうやって逃げようとしているのね?」

「ばっ、君と僕を一緒にするな!!」


 そして、マナとバドルスはいつの間にか、例の通りお互いを挑発しあって勝負するという流れになっていくようだった。ただし、今回はいつものように魔法組手ではなく、ビーチバレーでの対決という点が異なるのだが。


「私は審判をやりますわ」


 審判を買って出たのはカルネだった。おそらくこれ以上の人選は考えられないと思われるので、誰も反対はしなかった。さらに、2対2の試合にするためにシシーも審判を買って出た。


 チーム分けはくじ引きでマナ&デミ VS バドルス&ミレイとなった。普通に考えればミレイを味方に付ける方が有利になりそうだけれども、果たしてどうなるのか。


「じゃ、僕からサーブするねっ」


 サーブ権を取得したミレイが砂の上に引いたコートの外に出てボールを両手で高く掲げた。


「待ってください」


 と、突然カルネがミレイのサーブを中断させた。


「マナ様。ビーチバレーは水着で競技するのがルールです。Tシャツを脱いでくださいませ。でないとルール違反で失格になりますわ」

「えっ」

「さ、早く。さ」


 カルネに詰め寄られて、マナはしぶしぶTシャツを脱ぐことにした。ここで文句を言うと融通の利かないバドルスがうるさいことを言い始めるのは目に見えていた。その間、カルネはここぞとばかりにカメラを構えてシャッターチャンスを狙うのだった。


「さ、脱いだわよ。これで文句ある?」

「最高ですわ!!」


 マナの水着は、結局カルネが選んだ黒のビキニだった。最初に選んだ紐のような水着は却下したものの、ミレイとデミがサイズの合う水着を持ってこないので、カルネが選んだ中から一番マシなものを選んだのだ。


「始めていいかな?」

「いいよ」

「じゃ、準備はいいね。始め!」


 そして、シシーの掛け声でビーチバレー対決が始まったのだった。

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