第8章「陰謀」 - 13
翌日の昼休みにはノルフレドの事件を取り上げた校内新聞が発売になっていた。中心になっているのはもちろんカルネの書いた記事だ。ノルフレドが狂気を孕んだ目で空を見上げて印を結んでいる写真が一面トップで写っていた。
事前にお願いしてあったとはいえ、上空であれだけの戦いをしている最中に地上のノルフレドのシャッターチャンスを逃さないというのは大した記者魂である。恐らくこの瞬間のノルフレドを見ていたのはこの世でヘータとカルネだけだっただろう。
ノルフレドが逮捕されたことで、カインリルたちの滞在期間は大幅に短縮されることになった。引率の教官がいないのだから仕方がない。帰国までの間の引率代行は医療班の教官が担当することになった。
そういうわけで、留学生たちは残り数日の間に前倒しで詰め込まれた行事をこなすのにてんてこ舞いの日々を過ごすことになっていた。
なお、カルネの調査ではノルフレドの共犯者らしき人物は発見されず、トルン市警の捜査でもノルフレドの単独犯という見方で固まったようだ。ただ、取り調べの間、ノルフレドは一貫して黙秘を貫いているので、ハンセタール国内で糸を引いている人物がいるかどうかまでは分からなかった。
ノルフレドの身柄は手続きのためにもうしばらくトルン市内に留置された後、カインリルたちが帰国した後でハンセタール王国へと送還される予定となっている。カインリルはノルフレドとの面会を希望していたが、それは本国送還後ということになりそうだ。
「ねえ、マナ」
「ん?」
「いいの?」
「何が?」
ミレイが話しかけてきたがマナが振り向く様子はない。とぼけてはいるが、マナはミレイが何を言おうとしているのかもう予想はついていた。
今日はカインリルたちが学園に登校する最終日なのだ。明日の朝にはトルン市を発ってハンセタール王国へと向かう。
本来なら初日と同じように立派なセレモニーを行うところなのだが、急な予定変更だったことと事件の直後であることから略式のセレモニーを高等部と中等部で別々に行ってそれで終わりということになった。
だから、マナはまだカインリルと顔を合わせる機会を持っていなかった。
そもそも交流試合にマナが勝てば、カインリルは二度とマナに近づかないという約束だったのだから、試合以降マナがカインリルと顔を合わせる機会があるはずがないのだ。
「……ねえ」
「何?」
「この写真、見て」
あくまで後ろを振り向かないマナに対し、ミレイは前に回ってきて何かを机に置いた。
「カルネが新聞の一面に使う写真で最後までちょー悩んでた写真なんだよ。結局はノルフレドの写真になっちゃってこっちは使わなかったけど、ボクはこっちの方が好きだな」
マナが机の上に目を落としてみると、マナの胸元にヘータ、左右にミレイとカインリルが立っていて、証拠の魔晶石を掲げている写真があった。
「こんな風にマナの周りに人が集まって何かするのってちょー久しぶりな感じだよね」
その言葉を聞いて、マナは思わずふっと立ち上がっていた。
「ちょっとトイレ」
それだけ言い残すと、マナはミレイを残して教室から立ち去った。




