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第8章「陰謀」 - 12

 マナの言葉で闘技場の目が一斉にノルフレドの方を向いた。


 「くっ、こ、これは……」


 ノルフレドの両手は体の前で組まれたまま動かなくなっていた。全身に力を込めて何とか離そうとするが、どういうわけか石のように固くなった指は全くノルフレドの意志に従わない。


 実は空中でペガサスを蹴ったヘータはその勢いで地上まで一気に降りて、闘技場脇で魔法を発現しようとしていたノルフレドの両手の自由を身体強化魔法の逆用で人知れず奪ってしまったていたのだ。


 「無駄ですよ。その手はもう指一本動かせません」

 「なぜこんなことを……」

 「それはこっちのセリフですよ。真剣勝負の脇であなたは魔法で何をしようとしてたのですか?」

 「これはカインリル様の形勢が悪いと判断して御身の安全を守るために……」

 「こうですか?」


 マナはノルフレドの弁明を遮るように目の前で印を組んで見せた。


 「この組み方は魔法陣を遠隔操作する結印でよく使われるパターンですね。一番典型的な使い方は」


 そう言いながら周囲から見やすいように手を伸ばし、両手を使って1つの印をくみ上げて見せた。


 「<発現(レムス)>」


 マナが詠唱すると闘技場脇のベンチから白い煙が細く立ち上った。


 「こうやって離れたところの魔法陣を遠隔起動することです。で、あなたはこの結印を使って何をしようとしていたのですか?」

 「っ、それは……」

 「ミレイ」


 ノルフレドが言葉に詰まったところで、待ってやる気などさらさらないという風にマナはミレイの名を呼んだ。


 「これは試合前、カインリルさんの鎧の中から発見されたものです」


 ミレイはマナの隣まで歩いてきて、ポケットから取り出したものを高く掲げた。それは何かの魔法陣がかかれた1枚の布だった。


 「火と土の属性で爆発を起こす魔法陣が記述されています。これがマジックアーマーの内部で発現すれば、外からは何が起きたか分からないまま、鎧の装備者だけに重傷を負わせることができます」

 「それは言いがかりだ。大体、試合前の鎧の中をどうやって調べたんだっ」

 「それは僕が許可したんです、先生」


 空中で気を失って落下したはずのカインリルがマナの側へと歩み寄って静かにそう言った。落下の途中でペガサスの背中に受け止められ、地上に降りたところで目が覚めていたのだ。


 「カインリル様!」

 「先生がこの魔法陣を仕掛けたという記録も残っています」


 カインリルがそう言うのを受けて、ミレイから受け取った魔晶石を見せるマナ。


 「この魔晶石はここ数日鎧を監視していたカメラで取った映像が記録されています。昨日の晩、皆が寝静まった時に鎧の中に魔法陣を仕掛けるあなたの様子がしっかり映っていますよ」


 ここに至ってようやく観念したのかノルフレドは膝を折って顔を俯けて動かなくなってしまった。


 その後は通報を受けたトルン市警の警官がノルフレドの身柄を拘束し、マナたちは学園の一室で事情聴取を受けることになり、解放されたときにはすでにすっかり夜になっていた。

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