第8章「陰謀」 - 09
闘技場には前回を超える数の観客が集まっていた。前回の事故でさらに耳目を集めてしまったようだ。
カインリルの装備は前回と全く同じ。対するマナとヘータの装備はマナが剣を持っていないことを除いてはやはり前回と同じだ。剣を持たないのは、前の試合で役に立たないことが判明したからだ。
「始め」
そして、やはり前回と同じく試合はシンプルな掛け声で始まった。
「<発現>、<発現>、<発現>」
「<発現>」
マナは前回と全く同じように上空に向けて連続で魔法を放ったが、カインリルも同様に上空に魔法を放ちマナの魔法を打ち消して空へと飛びあがった。
「く、惜しいにゃ」
カインリルが飛び立つと同時にその直下をヘータが通り過ぎた。飛び立つペガサスの足に飛びつこうとジャンプしたのだが、間一髪捕まえることができなかったようだ。
「<発現>」
下でマナが追撃の魔法を唱える声が聞こえたが、カインリルはさらに加速して上空へと舞い上がり、マナの魔法の射程圏外へと一気に離脱した。
「ここまで来れば、空を飛べないマナさんには手も足も……?」
そう言いかけて眼下を振り向いたカインリルは、闘技場のどこにもマナがいないことに気が付いた。
「ひひーん」
愛馬のペガサスが一声鳴いて全力で前方に跳躍した瞬間、飛び退いたばかりのその場所を上から下に何かが猛スピードで通り過ぎた。
「惜しい」
ハッとしてカインリルが振り返ると、錐揉み状態で落下して下の方で旋回して態勢を立て直すマナの姿が目に映った。
「何でマナさんが?」
状況が飲み込めず一瞬混乱するカインリルに対し、マナは再び上昇しながら最大速度で突撃を開始した。マナは最初の急襲に失敗した後、飛行魔法で空に飛び立っていたのだ。
「っ、<発現>」
とっさに接近するマナを撃墜しようと魔法を放つが、マナは横方向に体を振るだけで魔法を避けてぐんぐん迫ってきた。
「ピーちゃん!」
「ひひん」
カインリルの掛け声に答えたペガサスは全力でマナの進行方向から離脱し、逆にマナの背後を取ろうと急上昇、急降下、急旋回などを駆使してマナを揺さぶりにかかった。
「マナさん、どういうつもりだ。飛行魔法発現中は他の魔法は発現できないんだぞ。攻撃も防御もできない状態で何をしようと言うんだ」
「魔法が使えなくても物理でぶん殴ることくらいはできるのよ」
「僕にはマジックアーマーの物理防御があるんだぞ」
カインリルの最後の言葉にマナは答えず、代わりに飛行をさらに加速させた。




