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第8章「陰謀」 - 08

 「留学生たちを監視してほしいの」

 「留学生でございますか?」

 「そう。カインリルが命を狙われてて、その犯人がハンセタールからの留学生の中にいるみたいなのよ」


 それからマナは交流試合から今朝までのことをかいつまんでカルネに伝えた。


 「すると、マナさまはノルフレド先生が怪しいと考えているんですね」

 「そうね。でも、まだ決定的な証拠はないし、共犯者もいるかもしれないから」

 「一つ確認ですが、このことは記事にしても?」

 「事件が解決するまではダメ。犯人に気づかれるから。けど、解決した後ならいいわよ」

 「やらせていただきます!」


 カルネは記事になると聞いてマナの手を握って頷いた。あまりにやる気なのでマナの方が若干引き気味だ。


 「ま、まあ、やる気になってくれてよかったわ」

 「それではわたくしの役割は、ノルフレド先生が犯人である証拠探しと、共犯関係の洗い出しですわね」

 「そうよ。ただし、犯人の証拠は罠を仕掛けて集めるから共犯者探しの方が重要かな」

 「分かりました。後、調査の最中に事件とは関係ない情報もたくさん集まってくるとは思いますが……」

 「……それは常識の範囲内で」

 「承知いたしました」


 やはり危ない人物に協力を求めてしまったかもと冷汗をかくマナだが、ここまで話した以上は後戻りはできないのだった。それに、もう一つのお願いはカルネにしかできない。


 「それから、もう一つ。カルネには交流試合当日の撮影をお願いしたいの」

 「? それはもちろんするつもりでございますが?」

 「そうじゃなくて、ノルフレド先生の方の撮影よ」

 「なるほど。それはもちろん任せてくださいませ」

 「タイミングは分かるわね」

 「お任せください」


 これで準備は整った。後はヘータが隠密行動でカインリルの護衛をしつつ監視カメラの魔晶石を定期的に交換しながら当日を待つだけだ。



 そして3日後。再試合当日になった。


 この3日間、表面的には何事も起きることはなかった。マナとカインリルが顔を合わすような機会は一度もなく、ノルフレドもいつものように献身的にカインリルたち留学生の引率をしていた。


 新聞はカルネの署名入りで再試合のことを面白おかしく書きたてていたが、前回の事故の原因はの真相に触れるような内容は全くなく、カインリルの主張通りミドリスナガキの中毒だと説明していた。


 カインリルのインタビュー記事にはカーピー=オスタンのマジックアーマーの性能の高さが強調されていて、マナの最後の大技も中毒さえなければ確実に止められたはずだと、その使用に対する不安はみじんも感じさせない内容だった。


 「マナさん」


 闘技場の控え室で瞑想をしていたマナに、3日ぶりにカインリルが声をかけてきた。その後ろにはヘータがどこからともなく現れて部屋の隅に座りこんだ。どうやらカインリルはヘータの監視に最後まで気づかなかったようだ。


 「何?」

 「今日の試合、僕は本気だから」

 「当たり前でしょ。何を言ってるの?」

 「そうじゃなくて、賭けの話だから」

 「それ以外の何の話をしてるのかしら? 今度負けたらあなたは2度とあたしに近づかないって約束を忘れたとは言わせないわ」


 この交流試合は犯人をおびき出すための罠ではあるが、表向きは正式な交流試合である。しかも、カインリルとマナの賭けは残っている。そうでなければ、試合の真剣さが失われて犯人をだましきれないかもしれないからだ。


 この会話もどこで誰に聞かれているか分からない。お互いが賭けのことに真剣になっていると最後まで思わせておくべきなのだ。もっとも、カインリルはどの程度そのことを考えて今の話を持ち出したのかは分からないが。


 「時間だ」


 子猫がマナにだけ理解できる声でつぶやくと同時に、闘技場の方から歓声が聞こえてきた。マナたちはそれを合図に場内へと進み出ていった。

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