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第8章「陰謀」 - 07

 「今日は学園長先生にマナさんとの再戦をお願いしにまいりました」


 学園長のペースに任せると話がどこまでも脱線してしまいかねないので、カインリルが早々に本題に切り込んだ。


 「前回の事故は僕の体調管理のミスでして。前日に食べたミドリスナガキにどうやらあたったらしく……」

 「あー、あれは美味しいけど当たるからね。気持ちは分かるけど試合の前日に食べるのは避ける方が賢明よね」

 「カインリル様、そんなものをいつお食べになったのですか?」

 「すいません、先生。こちらでできた友人に紹介してもらって放課後に何人かで連れだって行ってきました」


 ミドリスナガキといえばカインリルたちが学園に到着した日にもマナのクラスメイトが1人腹痛でトイレから出られなくなっていたが、この時期旬を迎えるトルン州のの名産品なのだ。


 試合前日に食べていたのは偶然だが、試合中に詠唱を中断したもっともらしい理由としてうまく利用したのだった。


 「確かに体調管理も勝負のうちです。しかし、先の試合は僕にとってプロポーズを掛けた大切な戦い。それを腹痛のためにまともな戦いにもならない内に終わってしまったとなっては、一生後悔することになるでしょう」


 カインリルが例の調子で演説を始めた。ノルフレドはわずかにまた始まったという表情をしたが、初見の学園長は面白がってにやにやしていた。


 「今朝、マナさんの下を訪ねたとき、僕は謝りました。自分から真剣勝負を申し出て置きながらこのようなことになってしまったことを。そして、再戦を申し込んだところ快く受けてくれたのです」

 「マナ、本当?」


 調子のいいカインリルの話をそのまま真に受けてよいのかさすがに疑問に思った学園長は、マナに確認の視線を投げてきた。


 「どうせ何度戦っても同じですよ。瞬殺して終わりですから」

 「分かったわ」


 マナがふんと鼻を鳴らして肯定したのを見て、学園長は納得したのか軽くうなずいた。


 「そう言うことなら私は何も言うことはないわ。再試合を許可しましょう。後のことは任せて思う存分やってみなさい」


 そう言って、学園長はマナに意味深な視線を送ってきたのだった。



 「カルネ」

 「マ、マナさま、き、今日は何でございますか?」

 「ちょっといいから来て」


 放課後、マナはカルネの手を掴んで礼拝堂へと引きずっていった。マナに詰め寄られることはあっても引きずられたことはなかったカルネは動揺を隠せない様子だった。


 その様子を目撃した学園の生徒たちは、これまで好き勝手書いてきたカルネがとうとうマナの鉄拳制裁を受けることになったのかと思い、とばっちりを食わないようにとそそくさとその場を離れた。


 「ひとつお願いがあるの」

 「お、お願いでございますか?」


 お願いというのは断れば血の雨がふる「お願い」だろうか、とここでジャーナリスト精神に殉教する覚悟を問われた気がしたカルネだったが、マナはそんな恐ろしい「お願い」をするつもりは全くなかった。

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