第1章「ベルデグリ」 - 07
目を閉じるとそこには昨日の試合の風景が蘇る。
オロンを闘技場の床の爆発の巻き添えにして吹き飛ばし、石つぶての魔法を発現しようとするバドルスの様子を視界に捉えたところだ。
魔法の発現は結印で決まる。発現後に魔法を変化させる高等技術もあるが、通常は発現した段階で魔法の内容は確定している。
ということは、結印の内容を読み取ってしまえば、魔法の内容を完全に予測することが可能になるのだ。
このとき、マナはまさにそれをしていた。
バドルスの石つぶての魔法の結印を読み取りすべての弾道を把握した彼女は、石つぶての雨の中を最小限の動きで回避しながら少年に接近して喉元に剣の切っ先を突き付けた。
しかし、もし彼女が剣ではなく魔法で攻撃をしていたら。
石つぶての雨の中、マナはすばやく印を結び呪文を唱えた。
「<発現>」
と同時に周囲に風の刃が出現し、降りかかる石つぶての隙間を縫うようにバドルスに襲い掛かる。
魔法を発現した直後で態勢の崩れていた少年は、防御魔法を発動が間に合わずに風の刃によってずたずたに切り裂かれてしまう……
「うっ、うぇっ、がぁっ、おぇっ」
突如襲ってきた吐き気に瞑想を中断されたマナは、その場にしゃがみ込んで胃液を地面に吐き出した。
「はぁはぁ……。また同じ……」
これまで何度も同じことを繰り返してきた。何度も瞑想の中、相手を魔法で攻撃しようとしてみた。しかし、何度やっても攻撃魔法が相手の体にあたるところで吐き気に襲われて瞑想が破れてしまう。
「やっぱりあたしには無理なのかな。ヘータ……」
ベルデグリ 【終】
いつもの方はこんにちは。初めての方ははじめまして。お待たせしていた方にはお待たせしました!
本作は1年半前まで連載していた『俺は猫×あたしは魔女』という小説のリメイクになります。
前作との違いですが、前作では章ごとにストーリーが完結する(前後編の時は2章で完結)という形式を取っていましたが、本作では章の上に巻という単位を設けて、10万字程度でストーリーが完結するという形式をとることにしました。
また、第1巻のストーリーは、大まかな流れや重要なイベントは前作と変わらないものの、細かい設定や構成を変更しています。前作を既読の方はどう変わったのか考えながら読んでみても面白いのではないかなと思います。
ここまで一気に投稿しましたが、ここから先はしばらく毎日1話投稿が続き、その後、充電期間と週3回更新を繰り返すといういつものペースに戻る予定です。
では、今後とも本作をどうぞよろしくお願いします。