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第7章「長い夜」 - 04

 日が暮れてもマナは目覚めなかった。ミレイが掛けた催眠魔法はよく効いているようだ。


 ミレイはマナを眠らせるとすぐに闘技場を後にしてマナの家まで背負って連れてきた。ドアの鍵の開け方が分からず戸惑っていたので、ヘータがこっそり勝手口を開けてやった。正面玄関を開けることもできるけど、開け方を見咎められると面倒だと思ってそういうことをした。


 それからミレイはマナを寝室のベッドに寝かせ、ヘータに何か言うと家を出て行った。マナが眠ったままなのでミレイが何を言ったのかヘータには分からなかったが、1時間弱ほどでミレイが戻ってきたので、後で戻るとかそんなことを言いたかったのだろう。


 戻ってきたミレイはさっきは持っていなかった大きめの鞄を持っていた。どうやら看病のために泊まり込むようだ。


 「にゃあ」


 ミレイに泊まり込まれるとご飯が作れなくなってしまうという危機感を持ったヘータは、ミレイの足に甘く爪を立てて帰ってくれという意思表示をしたが、ミレイはそれを別の意味に取ったようだ。


 「あ、お腹減ったの? ちょっと待ってね。今からちょーおいしいものを作ってあげるから」


 なぜかミレイは家から帰ろうとはせず、ヘータを抱きかかえるとダイニングの椅子に座らせて自分はキッチンへと向かった。


 「確か、ヘータくんってご飯とお魚がちょー好きなんだよね。うーん。パエリヤっぽいのを作ればいいのかな。どうやるんだっけ?」


 そう言いながら、米とアジのありかを見つけ、アジをさばいた後、フライパンを取り出して米を入れた。そしてそのままそれを火にかけた。


 「待てにゃ!」

 「ちょっと待っててね、すぐにちょーおいしいご飯を作ってあげるから。……えっと、なんか違う気がするな。水かな?」


 ミレイはフライパンに米が隠れるくらいの水を入れて、バターを取り出した。


 「に゛ゃーー」

 「バターって何に入れてもちょーおいしくなるんだよねー」


 そう言ってバターをフライパンに投入し、ついでに適当に味付けを足してから、さらにアジをその上に載せて蓋をした。一連の過程を見ていたヘータはもう魂が抜けそうである。


 「そろそろ出来上がりかな」


 汁気がなくなってきた頃合いで蓋を取ると、部屋中にバターとアジとご飯の匂いが充満した。ミレイは早速スプーンを取ってきて味見をしてみた。


 「ん、ちょー美味くない? ボク、天才かもね」


 早速皿を2枚持ってきて、ヘータの皿には魚を多めに取り分けた。もう1皿はミレイ自身が食べるためのものだ。


 「はい。どうぞ、食べてね」

 「……あちっ」


 恐る恐るご飯を口にくわえたヘータは、思いっきり飛びずさった。猫舌だったのだ。


 味の方だが、ご飯の炊きあがりには大いに文句のあるヘータだったが、アジは大丈夫だと思った。というか、むしろアジは美味しかったといえる。シンプルな味付けにしたのが良かったのかもしれない。


 「んー、ちょっとチーズを掛けるともっとおいしいかも」


 そう言って、ミレイが魚にチーズを掛け始めた時には戦争を覚悟したが。

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