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第7章「長い夜」 - 02

 その日は初等部5年の冬、秋学期が終わって冬休みに入る直前のことだった。マナとヘータはいつものように実験室で何かの実験をしていた。休みの間に大きな実験を成功させるんだとマナが張り切っていたのをミレイは覚えている。


 ミレイ自身は図書館で勉強をしていた。日々開いていくマナとの差に焦りを感じて、少しでも離されまいと放課後は授業の範囲を超えて自主的に勉強をしているのだ。


 内容は中等部以降でコース分けされる生産職の先取りだった。戦士職を志望するマナやヘータと異なる職種を選んだのは、2人も天才がいる中で自分の才能を痛感したからに他ならない。


 ミレイが図書館にこもって1時間以上経った頃、突然ドーンという音とともに図書館の窓がびりびりと震えるような振動があった。何事かと外を見たところ、実験棟の方で煙が上がっているのが見えた。


 ――実験棟の方? マナは大丈夫なのかな?


 悪い予感がしたミレイはすぐに図書館を出て実験棟の方へと向った。


 実験棟が見えてくるとそれはひどい状況で、実験室の1つが窓が全部吹き飛ばされ、室内が真っ黒に焦げている様子が外からでも確認できた。あれでは中にいた人間は重傷か場合によっては死んでしまってもおかしくない。


 ――もしかして、マナが?


 「マナッ!」


 急激に大きくなる不安に追い立てられるように実験棟に向って駆けていくと、ちょうど誰かが中から運び出されて来た。駆け寄ってみると、それはマナだった。


 ところどころ髪が熱で縮れたり服に焼け焦げたところはあったが、それ以外に目立った外傷はないようだった。その後の医者による診察でも軽傷と診断された。


 しかし、マナと一緒にいたヘータの方は体がもはや原形をとどめていなかった。


 後の事故調査で、マナがヘータの陰にいたことがその差を生んだのだと結論づけられた。その状況から、爆発時にヘータがマナをとっさにかばったのだろうということは想像に難くなかった。


 マナの体の傷は比較的すぐ快方に向かったが、心の傷が癒えることはなかった。


 冬休みが開けて6年になってもマナは登校せず、寮の自室から出てこれないままだった。ミレイがお見舞いに行くと痩せこけて魂を失ったようにベッドの上で横になっていた。


 寮の友人の話によれば、口元まで運べばご飯は食べるのだが固形物を食べると後で戻してしまうので、スープなどしか食事を摂っていないのだそうだ。


 しかも、1回の食事を終わらせるまで1時間以上かかり、その他の世話も含めていつでも誰かが対応できる状態になっている必要があった。今は寮の友人を中心に世話係をローテーションして分担している状態なのだという。


 それを聞いてミレイは即座にマナの部屋に勝手に住み込むことを決め、マナの看病を一手に引き受けた。さらに時間の合間を縫って精神作用系魔法の初級を学んだ。毎夜うなされるマナの悪夢を少しでも和らげるためだった。


 その甲斐あってマナの体力と精神は少しずつ回復を見せるようになっていった。


 そして、その過程でその日何が起きたのか、少しずつマナから聞き出していったのだった。

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