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第6章「交流試合」 - 12

 カインリルの鎧に付与されたセミオートの魔法防御は土属性だ。なので、土の含まれない魔法はセミオートで防ぐことができるが、土を含めば結印魔法で防御しなければならない。


 1発目は風と水の2属性魔法で、小型の竜巻の中に威力のある水弾とかまいたちを発生させる攻撃だった。副作用で霧が発生し視界を塞ぐ効果もある。強力だが、これはすんなりとセミオートで防がれるに違いない。


 2発目は水と土の2属性魔法で、土石流をぶつける攻撃だ。濁流が身長以上まで盛り上がることでやはり視界が奪われる。1発目の防御がセミオートで余裕があるから、これもすんなりと結印で防御するに違いない。


 3発目は土の単一属性魔法だ。今度は地震と地割れを起こす魔法で、防御魔法を下向きに展開しなければならないが、視界を奪われた状態でそれに気づくことができるだろうか。


 最後の4発目には罠が仕込まれていた。土属性の岩石を中心にしてそれを高温の炎が取り囲む弾丸で、火属性の魔力の方が土属性の魔力の2倍位強くなっているため、2発目3発目の魔法の影から見ると火の単一属性魔法と間違えやすい。


 カインリルはできるだけ早く反撃に移ることで大技を放った後のマナの隙を突きたいと考えるだろうから、4発目は鎧で防御できるならそうしたいと考えるはずだ。この四連撃の構成はそういう心理を逆手に取ろうとしていた。


 しかし、事態は誰もが全く予想しなかった展開を迎えた。


 「レム……っ!」


 防御魔法を発現するため詠唱をしようとした時、カインリルが急に顔を歪めて詠唱を中断したのだ。そして、何の防御もないまま、四連撃クワッド・シーケンスが次々と襲い掛かった。


 観客席から悲鳴が上がり、闘技場を囲むスタッフに緊張が走る。しかし、魔法の余波で土ぼこりが舞い上がり状況が確認できない。


 「な、何……」


 マナは顔を真っ青にして膝から崩れ落ちた。威力は押さえていると言っても四連撃クワッド・シーケンスを防御なしで受けたら最悪の事態もあり得る。それは試合前、マナが最も恐れていたことだった。


 「審判、試合を中断してください!」


 そう言って闘技場に飛び出してきたのはハンセタール王国の留学生の引率をしているノルフレドだった。


 「審判!」

 「はっ、し、試合を中断します。医療班っ」

 「<発現(レムス)>」


 ノルフレドが魔法で風を起こして土ぼこりを吹き飛ばすと、そこにはぼろ雑巾のように倒れたカインリルの姿があった。


 「触らないで。治療は私たちがやります」


 ノルフレドは学園側の医療班を止めて、留学生と一緒に来ていたハンセタール王国の医療班にカインリルの容体を診察させた。落ち着いて行動しようとしているが、公爵家嫡子の緊急事態に神経が高ぶっているようだ。


 「審判、これは一体どういうことですか!」

 「えっと、あの……」

 「このような事態が起きないためにあなたがいるのではないのですか?」


 カインリルの治療を医療班に任せた後、ノルフレドは審判に食って掛かり始めた。


 確かに審判は学生の安全を守るため危険な戦闘行為を止める義務があるが、今の事故は誰も予想できなかったので審判といえども止めようがなかったと傍目はためには思われたが、ノルフレドはそうは考えなかったようだ。


 ヘータはそんなノルフレドの様子を不思議な思いで見ていた。カインリルが爆煙に包まれたとき、ヘータは周囲を警戒して会場を見回していたが、その時に見たノルフレドの表情と今の必死の抗議がいまいち噛み合わない気がしたからだ。


 しかし、ノルフレドの話をもっとよく聞こうと聞き耳を立てたところで、突然、人の言葉が全く意味を持たない雑音に変わってしまった。


 はっと気づいてマナの方を見ると、いつの間にか闘技場にはミレイが上ってきていてぐったりしたマナを抱きしめていた。マナが気を失ったことで盟友の契約による翻訳機能が力を失ったのだ。



交流試合【終】

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