第6章「交流試合」 - 11
手加減したとは言え攻撃魔法を人に向かって放ってしまったマナは胃の不快感に顔を歪めたが、同時にカインリルの防御が予想以上に堅いことを知って少しくらいなら無理をしても大丈夫なのではないかと思っていた。
例えば、マナはヘータに対して攻撃魔法を放つことに躊躇しない。最初はともかく今ではヘータが猫だからなどとは全く思ってはいないが、それでも不快感を感じないのはヘータにどんな攻撃をしてもそれが致命傷となる想像が全くできないからだ。
今、マナがカインリルに対して感じているのは、それと同種の、ただしもっとずっと弱弱しい感覚だ。つまり、試合で使う程度の魔法なら、多少の怪我こそすれ重傷や致命傷になることはまずないだろうという程度の安心感だ。
しかし、その程度であっても、今のマナにはありがたい。剣術一辺倒の攻撃から、魔法を使ったバリエーションへと変化させることができる。
「<発現>」
「<発現>」
その感覚を確かめるように、今度は遠距離から攻撃魔法を放ってみた。予想通りカインリルは危なげなく防御魔法を発現してそれを止め、マナの不快感はなんとか耐えられる程度のレベルに留まっていることを確認できた。
――精神力がガリガリ削られてく感じがすごく気持ち悪いけど、短時間だけならどうにか持ちそう。
作戦変更を決意したマナは、魔法を駆使して一気に試合を決めることにして、今後の試合展開を瞬時に想定した。
――剣の攻撃はほぼ通じない。となれば攻撃の主体は魔法だけど、それもセミオートがあるから中途半端な攻撃じゃ通らない。カインリルの読みの裏をかいた攻撃をするには……
ヒュンッ
予備動作なしでマナは手に持っていた剣をカインリルに向かって投擲した。
「<発現>」
ギン
カインリルは予想通りその剣を魔法で防御し、剣は弾かれて近くに落ちようとした。その時、
「<発現>」
「っ、<発現>」
ギン
マナは土属性の魔法で石を飛ばし、剣を弾いて再びカインリルに切りかからせた。マナが土属性で攻撃すると思っていたカインリルは防御魔法の結印を準備していたが、物理攻撃だと気づいて急遽、セミオートの防御を展開した。
かろうじて遠隔操作された剣戟を回避したカインリルだったが、意表を突いた攻撃に大きな隙を作ってしまった。
「<発現>、<発現>、<発現>、<発現>」
ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン
マナは両腕を大きく十字に振り、風切り音を立てながら素早く4度詠唱した。
腕の1振りの間に結印を1つ完成させ、4回の腕の振りの間に高速で4つの魔法を連続発現させる技術で、四連撃と呼ばれている。ヘータとの勝負では時々使っているが、学園の試合で使うのは初めてだ。
片手印をマスターした上で、結印の無駄を省き速度を限界まで高めないと発現すらできない上に、発現後も4つの魔法を同時にコントロールする集中力が必要となる超高難度の技術だ。
中高生の試合ではやりすぎなレベルだが、攻撃魔法を使わなければならないというプレッシャーで精神的に辛くなっていたマナが、同じ辛いなら一発で試合を決めてしまおうと考えて放った必殺の一撃だった。




