第6章「交流試合」 - 05
「確かに実力に問題はないようです」
しばらくして戻ってきたノルフレドは不承不承という様子ではあったがマナの実力を認めた。
「分かりました。では、本来高等部の留学生であるカインリル君と中等部の学生であるマナが交流試合をするのはありえないことですが、マナはベルデグリですし実力的にも問題ありませんから、今回の試合は特例として許可しましょう。それでよいですか?」
学園長がそう言うと、カインリルは小さくガッツポーズをとっていた。マナとしてはここで学園長が何かしらの理由を付けて却下してくれれば楽なのにと思わなくもなかったが、それは期待もしていなかったので特に思うところはない。さっさと帰ろう。
「じゃ、結論も出た様ですので帰ってもいいでしょうか」
「いいですよ。お疲れ様」
「失礼します」
それから数日、例の試合の件で騒がしかった日常も一段落ついてマナの周囲は少し日常を取り戻していた。今の世間の興味はもっぱらカインリルの素性や人柄についてだった。
「そう言えば、ヘータ、最近は逃げまくったりしなくなったね」
「ん? まーにゃ」
落ち着いたのはマナだけでなく、ヘータも最近は学園の中でものんびりしていることが多いようだ。ちょっと前まではファンの女子たちに追いかけまわされて涙目になっていたのに。
「あのカインリルってやつが目立ってるからにゃ。それに、俺もバカじゃにゃいから普通の人間くらいにいつまでも追い回されてるわけにゃいにゃ」
ヘータの言う通り、最近はファンに追いかけまわされることがあっても、すぐに尾行をまいて逃げきってしまうことができるようになっていた。いや、そもそも危険人物の気配があれば先に避けて見つかる前に逃げている。
一時期は大量に投稿されていたヘータの盗撮写真コーナーも最近はヘータがカメラのレンズを察知してシャッターチャンスを外すことができるようになったせいで投稿数が減り、コーナーが維持できなくなっていた。
「そのくらい初めからできててもよかったと思うけど」
「うるせぇにゃ」
得意そうに鼻をひくひくさせていたヘータだったが、マナの容赦ない突っ込みに露骨に嫌な顔をした。しかし、マナはどこ吹く風だ。
「でも、ヘータ、ファンがカインリルに取られちゃって本当はちょっと寂しいんじゃないの?」
「んにゃわけにゃーだろ、バカだにゃ」
「本当かなー。このぷりちーにゃ子猫様よりあんにゃロリコン変態野郎の方が人気があるにゃんて許せん、とか思ってるんじゃないの?」
「勝手に人の物まねをするにゃ。別にそんにゃこと思ってにゃーよ」
とは言うものの、実のところちょっとはそう言う気持ちがないわけでもないヘータだったので強くは言えない。
「あ、そろそろ始まるよ」
そう言って、マナは闘技場の後ろの壁際から前の方の座席へと移動した。
今から始まるのはカインリルとバドルスの練習試合だ。高等部と中等部の練習試合、特に留学生との練習試合が組まれるのは異例のことだが、バドルスがマナに対抗意識を燃やして強く希望したため特別に行われることになったのだ。
全くもって暑苦しいことだ。
ただ、これは他の中等部の学生たちにもいい経験になるという教育的配慮もあってのことらしく、この練習試合は中等部の学生が全員観戦することとなった。マナとの試合もあるが、マナは規格外すぎて大半の学生には参考にならないということらしい。




