表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/105

第5章「公爵家の嫡子」 - 09

 「中等部の?」


 カインリルの言葉にノルフレドは怪訝な表情をした。


 「はい。中等部と言っても、先日ベルデグリに認定された実力者です」

 「中等部でベルデグリに。それはすごい。しかし、いくら実力者と言っても中等部の学生では釣り合いが……」

 「マナさんの実力は僕が保証します。恐らく高等部の最優秀者と戦っても、互角以上の戦いができるはずです」

 「うーん……しかし……」


 カインリルは強くアピールするが、ノルフレドはなかなか納得する様子はない。


 ノルフレドの方もベルデグリの重みは十分分かっているが、高等部と中等部の実力差についての常識に加え、カインリル自身が王立プレミュール校の中でもトップクラスの実力者であるという事実がノルフレドに二の足を踏ませていた。


 「これはの要望です。聞いていただけませんか?」


 なかなか首を縦に振らないノルフレドに対し、カインリルはやや声音を固くしてそう告げた。それを聞いてノルフレドはハッとしたように顔を上げてカインリルを見た。


 「で、では、マナさんの実力が分かる客観的なデータ、例えば試合記録とかを確認したうえで最終的な判断を下すということにするのはどうでしょうか?」

 「いいですよ。じゃあ、明日、僕も同行して試合記録を見させてもらえるようにお願いしてみましょう」

 「よろしくお願いします」

 「あ、それから、試合では『エリアヒール』の使用はなしということにしてもよいですか?」

 「それはどういうことですか?」


 エリアヒールというのは魔法組手用に開発された魔法で、闘技場などの限定された範囲で魔法による火傷、凍傷、打撲、切り傷などの軽い怪我に対する治癒能力を高めるというものだ。


 これを使えば魔法組手で使われるレベルの魔法なら、誤って直撃を受けたとしても大事に至ることはないが、闘技場全体に常に魔法を掛け続けることになるので、他の魔法との干渉がわずかながら発生するという問題点がある。


 トルニリキア学園では実戦に近い環境で組手をすることが重要としてエリアヒールを使用しないが、王立プレミュール校では安全性を重視してエリアヒールを使うことが慣例となっていた。


 「エリアヒールはこちらでは使われていないと聞いています。せっかくの交流試合ですからこちらの流儀に習ってみたいと思うのです」


 建前はそうだとしても、カインリルの本音は試合でマナからあなどられたくないという気持ちから来ているのは間違いない。ただ、ノルフレドはそういう事情は当然知らなかった。


 「カインリル様の身の安全を守る身としては本来なら許可できないことですが、明日、マナさんの試合記録を見てから考えてみましょう」

 「本当ですか。ありがとうございます」


 ノルフレドの反応は予想外に柔軟なものだった。もっと強い抵抗があるものと思っていたカインリルは拍子抜けた気持ちだったが、藪蛇を避けて、あえてその意図を確認することはせずに明日の予定だけを確認して部屋を出た。


 カインリルが去った後、ノルフレドは引き出しにしまったものを取り出して険しい顔をしていた。その表情はそれまでカインリルに見せていたものとは全く異なっていた。


 「これは好機なのか、あるいはただのニシンの燻製なのか?」



公爵家の嫡子【終】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ