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第5章「公爵家の嫡子」 - 02

 「まあ、でも、ヘータくんの人気も明日からは落ち着くかもよ」

 「ん、なんで?」

 「だって、ほら、ハンセタール王国から短期留学生が来るじゃない」

 「いつ?」

 「ちょっと、マナ。ボケないでよ。今日だよ、今日」


 マナはそれを聞いて、突然、くるりと向きを変えて反対向きへと歩き始めた。


 「ちょ、マナ。どこ行くの?」

 「帰る」

 「待って、待って、待って。何で?」


 突然眉をへの字にしてマナがそそくさと立ち去ろうとしたところで、その袖を掴んでミレイが引き止めた。


 「……あんまり会いたくないのがいるのよ」

 「会いたくにゃいやつってどんにゃやつなんにゃ?」


 言いたくなさそうにぼそっとマナは呟いたところ、これは日ごろの仕返しができるチャンスとヘータは目をきらきら輝かせてマナに話しかけた。もちろん、人前なのでマナは返事ができないが、ヘータは構わずしゃべり続けた。


 「……」

 「『沈黙の女王』にゃんて言われてるわりに、顔も見にゃいで逃げ出すにゃんて、にゃかにゃか意気地のあることだにゃ」

 「……」

 「あれかにゃ。戦っても絶対勝てにゃいから戦わにゃいでやり過ごすってことにゃのかにゃ?」


 ヘータが挑発していると、急にマナはヘータの首根っこを摑まえて胸元から引きずり出して持ち上げた。


 「にゃーにゃーにゃーにゃーうるさいよ」

 「マナ?」


 突然、子猫に悪態をついてにらみつけたマナに不審な目を向けるミレイだったが、マナはそんなことは気にせずに傲然とした様子で言った。


 「やっぱり、猫がうるさいから教室に行くわ。でも、あたしは絶対留学生とは関わり合いになる気はないから」

 「えー。後で一緒に教室を覗きに行こうと思ってたのに……」

 「何?」

 「な、何でもないよ」


 見るからに不機嫌なマナは、ヘータの首根っこを持ったまま教室へと歩いて行った。


 ――く、苦しいにゃー。



 教室に行くと、朝は自習という連絡が黒板に書いてあった。今日は留学生の歓迎式典ということで、準備が出来次第、順番にアーリン・ホールへと移動するということになるようだ。


 ミレイは一足早くホールの様子を確かめに行きたいらしく、そわそわとマナに視線を送ってくるが、マナはそれを無視し続けた。ちなみに、カルネは蜂と交信して何かノートにメモしている。いつもの光景だ。

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