第5章「公爵家の嫡子」 - 01
「あ、ヘータくんだ」
「え、どれどれ? ほんとだ」
「きゃー、ヘータくーん」
「こっち見てー」
――ひぃっ!
オロンとの戦いの翌日から、ヘータは不思議な現象に悩まされていた。一人で学園内を歩いているとどこからともなく女子が湧いて出てきて寄ってたかって捕まえようとしてくるのだ。しかも、逃げるとどこまでも追いかけてくる。
マナと一緒にいると遠巻きに見て歓声を上げるだけで実害はないのだが、少しでもマナから離れるとすぐに襲い掛かってくる。そういう時、マナは全く守ってくれることはないので、とにかく平穏に過ごしたければマナの側を離れるわけにはいかない。
「くそっ。何でこんにゃことに」
「ねぇ、見てこれ」
マナがヘータの耳元に口を寄せてそう言った。胸元に埋まっている状態だと、耳元に口を寄せるのも不自然にならずにできるのは便利だ。
「何にゃ?」
マナは答えずに指で何かを指した。それは校内新聞の一角だった。
「えっと、にゃににゃに? 『今日のヘータくん』!? 何にゃ、こりゃー!!?」
「ヘータの投稿写真コーナーみたいね。よかったね、ヘータ、人気者じゃん」
「やめてー」
記憶にある限り、ヘータが自発的に写真撮影に応じたということはないので、ここに写っている写真は全て盗撮ということだ。一体いつの間に。
「あ、ミレイ」
「マナ。やっぱりその記事見ちゃったんだ」
「うん。こんな写真、よく撮るよね」
「あれ、怒ってない?」
「なんで?」
「だって、ヘータくんはマナの使い魔でしょ。ちょー怒ってると思ってた」
「素人に撮られるなんて、ヘータの修行が足りないのよ」
――無茶言うにゃっ!! こっちは魔法も使わにゃいで逃げにゃきゃいけにゃいんにゃぞ!
「写真に撮られないようになんて……まあ、マナはできるんだっけ」
新聞部のカルネがマナ担当記者となっている理由の1つに、カルネがマナの写真を撮影できるというのがある。つまり、それ以外の人がマナを写真で取ろうとしても、マナはそれを察知して避けてしまうため、違う方向を向いてしまったりフレームに入らなかったりするのだ。
「でも、ヘータくんを追いかけてるのは人数がちょー多いからね。知ってる? ヘータくんにファンクラブができたんだよ」
「え? 本当に?」
「うにゃ!?」
「ほら、見て。会員ナンバー135番」
「まさか、ミレイも入ったの?」
ミレイがにこにこして取り出して見せたのは、金色に輝く青銅製のカードだった。
「へへー。今日から受けつけ開始だったのだ」
――初日にして、もう3桁も会員がいるにゃか……




