第4章「デモンストレーション」 - 02
「マナ、何でお前、指一本しか使ってにゃいにゃ?」
「練習よ。練習」
言うまでもなく、尻尾1本で結印を済ませるヘータに対する対抗意識からのものだということに議論の余地はないが、ヘータはそのこととは気づかないようだ。
自分からは魔法攻撃をしないマナに対し、幾度となく攻撃を仕掛ける対戦相手だが、何度やっても軽々と防がれてしまい、気が付いた時には使い魔の動きが植物のつるのようなもので完全に封じられていた。
「ヘータ、ちょっとしっかり捕まっててね」
「にゃうっ」
「しゃべると舌噛むよ」
その先は電光石火で間合いを詰めると、半分以上出来上がっていた結印を軽く蹴り上げて崩し、そのまま深く踏み込んで襟首を掴んでそのまま背負い投げに投げた。
マナが支えて頭こそ打たなかったものの、受け身を知らない対戦相手は防具越しに背中を強かに打ち付けてそのまま試合終了。救護班に闘技場脇に連れ出されて診察を受けることになった。
「次からは俺を下ろしてからやってほしいにゃ」
襟元に入れられたまま振り回されたヘータは辟易した様子でそんな感想を述べた。
「マナ」
実技の授業が終わり着替えて教室に向かおうとしたところで、マナはバドルスに呼び止められた。
「げ、またか」
「何だ、さっきの試合は」
「あなたに関係ないでしょ」
マナはそう言って横を通り過ぎようとしたが、バドルスはそれを遮るように前に立った。
「何?」
「君が使い魔を持ったと聞いてようやく心を入れ替えたかと見に来たのに、使い魔を使うどころか相変わらず攻撃魔法も使いもせず、結局戦う覚悟ができていないのは変わっていないな」
「余計なお世話よ。そんなことを言うために女子の着替えをこそこそ待ってたの?」
「戦士の前に男女など関係がない!」
この手の嫌味は軍事バカのバドルスには全く通じないようだ。
「いつも言ってるけど、あたしにはあたしの戦い方があるの。あんな相手じゃヘータを出したって何の練習にもなりはしないわ」
「僕は人の噂をすぐに信じたりはしないが、君の使い魔は実はただの子猫だというのは本当なのか?」
「ただの子猫じゃないわ。特別な子猫よ」
「まさかとは思うが、君はベルデグリに選ばれて使い魔を持たなければいけないから、何の力もない子猫を形だけ使い魔に選んだということじゃないだろうな」
「そんなわけないでしょ」
バドルスの勘繰りにマナは不快感に顔をゆがませた。
しかし、マナは知らないことだが、マナの使い魔が子猫だと判明して以来、新しい使い魔がフェイクだという噂は時間とともに学園内に浸透しつつあったのだ。
「なら、それを証明して見せろ」
「証明?」
「試合で使い魔を使って見せろと言っているんだ」
「ふぅん」
バドルスの高圧的な物言いに、マナは目の奥にサディスティックな光を灯して頷いた。




