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第3章「デビュー」 - 08

 新聞の内容について話しているうちに行列は短くなって、マナたちも席につき、料理が運ばれてきた。


 「ちょっと待つにゃ。これはどういうことにゃ!?」


 目の前に差し出された皿を見て、ヘータは抗議の声を上げた。しかし、マナの返事はない。学園内で返事はしないと言っていたのだから返事がないのは仕方ないのだが、それにしても許せることではないとヘータは思った。


 何を怒っているかというと、食べ物のことだった。朝、ちゃんとご飯の重要さを説明したというのにまるで分かっていない。何なんだ、このねちょねちょした米に気色の悪い匂いの魚介は。


 「この子、ご飯とお魚が好きみたいだから、海鮮リゾットを買ってあげたの」


 マナはさっきから得意げにそんな説明をミレイにしているが、ヘータはこんなものが食べたいなんて言った覚えはなかった。


 「おいこら、ふざけんにゃ。俺が食べたいのは白いご飯にゃ。こんにゃ得体のしれにゃいべたべたねちょねちょした食いもんじゃにゃい。白くてつやつやして粒が立ってるやつにゃ。わかってんのか。おい、聞けにゃ」


 ヘータが机の上で大声で抗議を続けているとマナは初めのうちは無視していたが、だんだん額に青筋が立ってきてついには首根っこを掴まれて底冷えする声で凄まれた。


 「ヘータ? 食事中は静かにして頂戴」

 「俺が首筋が弱いことにつけ込むにゃんて卑怯にゃ」

 「食べるの? 食べないの?」

 「……分かったにゃ。食べればいいんにゃろ、食べれば」


 諦めて折れたのでマナはヘータを机の上に下ろした。いくらまずくても昼ごはん抜きで過ごせるほどヘータは燃費がよくはない。泣きたい気分でヘータはその胸焼けのしそうなリゾットなる食べ物を口にしながら、今晩の復讐を誓った。


 ――今日こそは絶対にぶっ飛ばしにゃる。


 「この子、ヘータって言うの?」


 泣く泣くリゾットを食べるヘータの上で、何か真剣な声音でミレイが問いかけた。


 「そうよ」

 「ね、何かあったの?」

 「何もないよ。なんでそんなこと聞くの?」

 「だって、マナが急に使い魔を持ったってことだけでもちょー変なのに、その名前がそれだし、なんか今日は雰囲気もいつもと違うし」

 「いつもと同じだよ」

 「そうかな」

 「そうだよ。名前は、……直感かな。なんとなく似てるのかも」

 「猫なのに?」


 ミレイは今にもゲロを吐きそうな顔でリゾットを食べている子猫の顔をじっと見つめた。


 「ボクにはただの黒猫にしか見えないけど」

 「別に顔が似てるなんて言ってないよ!」


 そんな話を小耳に挟みながら、明日からは絶対にお弁当を持ってこようと心に誓うヘータだった。

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