第3章「デビュー」 - 06
「どこで見てたの?」
「ここに来る前、事務で使い魔の届け出をしているところを」
カルネが使い魔にしているアリアノ蜂は、扱いが非常に難しいが極めて隠密性が高く、諜報専門の魔法生物としては最高レベルの性能を持っている。
1匹1匹はハエのように小さく能力も極めて低いが、女王蜂を使い魔にすることでコロニー全体を支配下に置くことができ、多くの蜂を連携させることで伝達情報量を向上させられる。
カルネはこの蜂を駆使することで蜂の行動範囲内を自在に覗き見ることができ、常にマナの動向をチェックし続けているのだ。
と言っても、同じクラスなので基本的にいつも同じ教室で授業を受けているのだが。
「その子猫が新しい使い魔ですね」
カルネは眼鏡に指を掛けて、マナの胸元に納まったヘータを見てじろじろと観察し始めた。伊達眼鏡なのに眼鏡の何を気にするというんだろう?
「そうだけど」
「質問、よろしいですか?」
「聞きたいことがあるなら、この子に聞いて」
「にゃ!」
マナは胸元からヘータを取り出すと、下手投げでカルネに向かってパスした。
「え? わ、ちょ」
「じゃ、ヘータ。後はよろしく」
「にゃ、にゃ!?」
慌ててカルネが子猫をキャッチしている隙に、マナはさっと身を翻して教室の方へ小走りに走って行った。
――俺は使い捨てか!
「んー、あなた、ただの子猫?」
「にゃぁ」
「何か特殊能力でもありますかしら?」
「にゃ、にゃっ」
――やめろ、くすぐったい!
真剣な目つきでヘータの身体検査を始めるカルネに対し、体中をまさぐられる不快感に精一杯の抵抗をするヘータだが、逃げようとするたびに器用にひっくり返されて抵抗力を奪われてしまう。
――くーっ。魔法さえ使えれば、こんな奴にっ!!
学園内で魔法禁止という約束を律儀に守って、ひたすら辱めに耐えるヘータであった。
「にゃーーっ!!」
結局、ヘータが解放されたのは、授業の予鈴を聞いたカルネが時間を思い出して教室に向かって走り出すときまで待たなければならないのだった。




