第3章「デビュー」 - 02
「何やってるの?」
子猫が夢中で胸のこぶと格闘していると、突然首筋を摘まれて持ち上げられた。猫の習性として首筋を強くつかまれると体に力が入らなくなる。
「び、病気の診察にゃ」
「へぇ。何の病気かしら?」
「その変にゃこぶのことだにゃ」
「こぶ?」
マナは子猫が指したあたりを見てみたがこぶらしいものは見当たらない。
「こぶなんてないじゃない」
「あるじゃにゃいか、そこに。でっかいこぶが2つも」
「は?」
もう一度マナは自分の胸を見たがやはりこぶらしいものは見当たらない。あるのは最近大きくなってきて肩こりの原因になっているものが2つくらいしか……
「このバカ猫っ」
「にゃっ、苦しい。にょぇっ」
「何がこぶよ。乙女の胸を指さして病気とかふざけんなー」
「首筋を掴んだまま振り回すにゃーっ!」
昨晩に引き続いてあわや天国に直行かと思われたが、すぐにマナが窓の外にぶん投げたので九死に一生を得た。
「全く、信じられないデリカシーのない猫」
鼻息荒くそうつぶやくと、マナはパジャマのボタンを外して学園の制服に着替え始めた。
そんなことで少し早めに起きることになったマナは、少し余裕を持って朝の支度をすると朝食を食べようと食堂へと来た。
「にゃ、にゃ、にゃー、塩焼きにゃー♪」
食堂にはえも言えぬ臭いにおいと、その中心で楽しそうにウッドゴーレムを操る子猫の姿があった。
「<発現>」
それを見た瞬間、マナはウッドゴーレムに向かって魔法を放っていた。ほとんど予備動作なく、偽装もせず、結印開始から魔法の発現まで最短の時間で放った炎弾は、人間の反応速度の限界に挑戦する速さでゴーレムに襲い掛かった。
通常の魔法戦での攻撃魔法は防御魔法を裏をかくための心理戦で結印が複雑化して肥大化している。しかし、相手の不意を突くときは裏をかくよりもあらゆる偽装を止めて速度を優先するほうがいいこともある。
マナが放ったのはそんな最速の一撃だった。
「<発現>」
が、昨日マナと互角の戦いをして見せた子猫は、当然のようにそれを難なく防いで見せた。
「あぶにゃーな。にゃにするんだ!?」




