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第2章「契約」 - 11

 「望むところ、と言いたいけど、これから用事があるからそれはまたあとでね」


 マナはいきり立つ子猫を尻目に魔法で残りの荷物を全部家の中に運び込み、急いで服を着替えた。もうすぐ寮の送別会の時間なのだ。


 「おい、お前、まだ話が……」

 「ごめーん、また後にして」


 そう言って飛び出して行ったマナに置いていかれた形になった子猫は、微妙に振り上げた尻尾の下ろしどころを失ってにゃにゃにゃとめちゃくちゃに駆け回るように暴れた後、ようやく落ち着いて戦利品のアジを拾いに戻り、晩御飯のアジのフライを作ることにしたのだった。



 マナが帰ってきたのは夜遅くになってからだった。


 あまり気乗りがしていなかった送別会だったが、子猫と思いっきり戦ったことですっきりした気分になって送別会に出席することができた。


 寮の友人たちは、いつもと違ってとげとげした様子のないマナに最初違和感を感じていたが、最後には予定の終了時間を大幅に過ぎるまで送別会は続いたのだった。


 そこでの話題も、中心はやはりベルデグリの認定についてだった。マナの認定は遅かれ早かれ当然だと思われていたので、むしろ盛り上がったのは次の認定が誰かということだった。


 まだ高等部にも候補は沢山残っているが、中等部でと言えば実力的にバドルスが筆頭だろうというのが一致した意見だった。


 送別会の後はもう夜遅かったが、寮から新しい家まで徒歩で帰った。魔法で飛べば一瞬だが、禁止されているのでわざわざ歩かなければならない。いつも学園敷地内の寮から通っていたことを考えると登校がちょっと面倒になったなと思った。


 家に帰ってみると、子猫は絨毯の上で丸くなって眠っていた。


 お風呂に湯を張って服を脱いで、ふと思い立って子猫もお風呂に入れてやろうと部屋に戻って子猫の首根っこを掴み、お風呂にざぶんと入れてやった。


 「ぷせげいれsぇ」


 眠っていたところをいきなり起こされてお湯につけられた子猫はパニックに陥った。が、マナはそんなこと意にも介しない。


 「うわ、すごく汚い。あなた、お風呂入ったことないの?」

 「ばっ、猫が風呂に入るわけにゃーだろ」

 「わー、猫ちゃんのちん○ん、かわいー」

 「に゛ゃーーーー」


 猫としての尊厳をずたずたにされた子猫は全力で抵抗しようとするが、子猫が自ら全身に掛けた水属性の身体強化の魔法のせいで、水に濡れた状態での体の自由が効かない。


 結果として子猫は無抵抗で全てをマナにさらけ出す羽目になり、体の隅から隅まで洗われ(まさぐられ)た上、どさくさにマナの使い魔になるという言質まで取られてしまった。


 ――ぐすん。もう、お婿にいけにゃい……


 打ちひしがれた子猫とは対照的に、マナは機嫌よく子猫を胸元に抱きかかえてベッドで眠りについたのだった。



契約【終】

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