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第25話

「もっと高くまで行くわ」


 マナは島全体を見渡せるようにさらに高くまで舞い上がった。腰を抱きかかえられた状態のデミは声もなくマナに必死でしがみついたままだった。


「ほら、デミ。下を見て」

「……、見れません……」

「じゃあ、こうすれば?」

「ひゃぁぁあっ」


 マナは空中でくるりと回転して背面飛行になると、デミの眼科に島の景色が広がった。


「うゎうわっ。にゃ、いきにゃりにゃにするにゃっ」

「ちょ、ヘータ、痛いっ」


 肩の上に乗っていたヘータは突然上下が入れ替わって落ちそうになって、慌てて爪を立ててマナの背中に張り付いた。


「早く上に行きなさいよっ」

「分かってるにゃっ」

「爪、立てないでっ」

「無理言うにゃーっ」


 マナにしがみついているデミは、マナとヘータのやり取りをその場で聞いていた。しかし、マナの言葉だけが理解できる言葉として耳に入っていて、マナがヘータの言葉を理解しているとは思わなかったので、よくある使い魔やペットとの疑似会話だと思って聞き流していた。


 そんなことよりも、高所からくる恐怖の方が断然大問題だったのだ。


「あそこなんかどう?」

「え、どこですか?」

「あそこよ」

「おまっ、揺らすにゃぁっ」


 首だけを傾けて下を見ていたマナが何かを見つけた。デミに教えるために指を指すと、身体がぐらっと傾いてまた落ちそうになったヘータが大声で抗議をした。


 デミもマナにしがみつく手に力を入れたが、何とか顔を上げてマナの指すところを見た。そこは確かにデミが言ったように高い木がなく開けた斜面で近くに池があるところだった。


「はい。いいと思います」

「じゃ、行ってみるわ」

「ひぃっ」


 今度は自由落下するように下降を始めるマナに、デミは再び奥歯を噛みしめて恐怖感に必死で耐えるのだった。


――何か来る!?


 と、マナは着陸目標地点付近から、何かが発射されたのを感じた。それは真っ直ぐマナに向かって飛んできた。風の刃。明らかに攻撃魔法だ。


――っ、避け切れないっ!


 飛行中に他の魔法は使えない。これが一人なら飛行魔法を解除して最高速で防御魔法を展開することもできるけれど、デミを抱えたままでは速度に優れる両手印は不可能だ。ならば回避しかないけれど、その風の刃はマナを追尾するように方向を変えてきた。


「<発現(レムス)>」


 その時、ヘータが防御魔法を展開し、間一髪で風の刃を霧散させた。


――え、今、誰が魔法を使ったの?


 デミは突然目の前に展開された防御魔法に困惑した。自分が使った魔法ではない。目の前のマナは飛行魔法を続けている。こんな上空で他に魔法が使えるものはいない。


 しかし、デミはそれ以上思考を続けることはできなかった。マナが降下速度をさらに早めて地面に激突しそうな速度で垂直降下していったからだ。


 あわや激突、というところで急反転したマナは、最後は静かに着地をした。


「ヘータッ」

「にゃぁっ」


 地面に降りるや否や、腰の抜けたデミを下ろして風の刃の出元と思われるところへ、使い魔の子猫を先行させて突撃した。


 魔法が放たれたのはトゲバツツジの群生の中からだった。上空からは人影を見つけられなかったけれど、魔法を放ってから時間は立っていないので、まだそこに留まっている可能性は高い。


 低木の繁る斜面を走るのは機動性を下げるけれど、空を飛ぶとさっきのように撃ち落される可能性がある。なので、面倒でも坂道を走る必要があった。


「そっち、いた?」

「っ、いにゃいにゃ」

「逃げられたわね」


 トゲバツツジが生い茂る湖畔の斜面を走り回り、戻ってきたマナとヘータはすでにターゲットが逃亡した後であることを確認し合った。


「こんにゃところ、隠れる場所もにゃいのに」

「マナ!」


 と、不意に背後から声を掛けられ、マナが振り返るとミレイが手を振っていた。近くにはカルネたちも一緒にいる。


「魔力結晶、見つかったよ!!」

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