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わたしの嫁は神様でした  作者: 真咲 透子
2. 季節外れの転校生
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7. 繋がらない糸

「なんでも聞いていいよ?……って言っても、まだ混乱してるって顔だね」


瀧川くんと私は、階段に座った。端正な顏がやや近めな距離にあり、ちょっとドギマギした。


「ずっと思ってたんだけど、……昨日眠れてないね?無理もないけど」


 私、そんなにひどい顔をしてるのかな?瀧川くんの手が私の頬に触れる。ひんやりして、きもちいい。思わず目を細めた。


「そんな顔しないでよ。無防備すぎる」

「……?」


瀧川くんは困った顔をして苦笑した。やがてするり、と頬から手が離れた。


「そうだ、一つだけいい?」

「何?」


私は瀧川くんに言わければいけないことがある。


「………昨日は助けてくれてありがとう」

「………」


お礼は大事だ。


「今言うことじゃ、ないとおもうけどなぁ。ふふ、どういたしまして」


瀧川くんは呆れながらも笑った。いつも教室で見せない顏に、どきり、とした。


「行村さんは、オカルト系って信じる?」


 不意に瀧川くんが問いかけた。何か昨日のことと関係があるのだろうか?


「うーん、微妙かな」


実を言うと、怖い系の話は超苦手です。何も対処できないモノって怖くない?無理矢理いないっていつも暗示をかけてたよ!!昨日のことがあって、それも崩れそうだけど。


「そう。昨日のアレはね、人の怨念や執念が獣の死骸に取り憑いて形になったモノだよ」

「……へぇ」


よく分からなかったけど、頷いて見せた。


「分からなかったら聞いてね?」

「………はい」


 彼にはバレていたようだ。

まぁいっか。そう言って瀧川くんは話を続けた。


「それで、何故昨日僕がそんなモノを倒せたかっていうと、」


瀧川くんは、とんでもない爆弾発言をしてくれた。







「前世で僕は神様だったからだよ」

「ごめんちょっと意味がわからない」







何言っちゃってるの!?非現実すぎるよ!!瀧川くんもゲームのやりすぎなの!?神様って、中学生じゃあるまいし!





「ここで止まると、いつまで経っても進まないから話を進めるね」

「無視!!?」



今さっき分からないこと聞いてって言ったよね!?瀧川くんは、なかなか我が道を行くタイプだった。



「あ、でもその前に、逃げられても困るから携帯の番号を教えて?」



瀧川くんはにっこり笑った。それはもう、綺麗に。………嫌な予感しかしなかった。




「明日教室で、みんなの前で告白してあげようか?」

「教えてくださいお願いします」



 悪魔の囁きに、私はすぐ降参した。無事(?)に携帯の番号を交換し終えた後、瀧川くんが語ったのはこんな話だった。




とある場所に、村があった。その村はさして大きくなかったが、繁栄していた。

……ある、神様を祀っていたから。


ある日、神社に迷いこんだ子供がいた。

神様は子供の姿になりすまして、その子供の迎えが来るまで気まぐれに遊んであげることにした。


思いの他、神様はその子供をたいそう気に入った。そして思ったのだ。


そうだ、この子供を婿にしよう と—─




「………ツッコミ所満載なんだけど、その神様って—─」

「女の神様だよ」




神様は、その子供が育つまで遊び相手として成長を見守っていた。お前は将来私の婿になるのだと聞かせながら。



「ちゃんと頷いてたよ?」

「でもそれ子供の言うことだよね?」


 幼い子供を自分好みに育てた後に娶るって話、あったよね!!性別逆だけど。



 そして子供が青年になった頃、あるお告げを出した。青年を花婿として差し出せと—─


青年は、村の有力者の跡取りだった。しかも他に兄弟もおらず、大騒ぎになり揉めにもめた。


「…それ、どうなったの?」

「逃げた」


瀧川くんは無表情だった。




村は別の娘を生贄として捧げようとした。ところが、青年とその娘は知り合いだったらしく、手をとり合って村から逃げたのだった—─。



「もう分かったと思うけどその神様が僕で、花婿は———君だ」




 えええええー!!いや、無理ありすぎるでしょ!




「そんな話、信じられるわけないじゃない!」

「そう?事実なんだけどなぁー。」


 それじゃあ、






「神楽木と六条さんに聞いてみると良い」




 え?





瀧川くんは一つ笑みを零した。


「ちーちゃんと蓮、に?」

「そう。彼らも知っているはずさ」


じゃないと、あんなにガードが固いわけないからね。瀧川くんはそう苦々しげに呟いた。


「まぁいいさ。こうして君と接触できたし」


そして彼は私の手をうやうやしく取った。




「今度は何があっても逃しはしない。──わが花婿殿」




瀧川くんはそう言って、目を細めうっそりとわらった。


私の手の甲に、瀧川くんの唇の熱が広がる。彼のひんやりした手とは裏腹にとても熱かった。




「──!?」


 私は瀧川くんから目一杯距離を取り、そのまま全速力で階段を駆け下りた。私の頭は処理能力がオーバーしていた。ななななななな、何、今の!?


「………今日は許してあげる。今日は、ね」


 瀧川くんが楽しそうに呟いていたのを、私は知らない。



ちーちゃん、蓮。瀧川くんの言っていることは本当なの?

真実を確かめるために、私を待っている千尋の下へ向かった。


胸が高鳴りが大きくて、心臓がもちそうにない。瀧川くんの唇の熱がなかなか消えなかった。

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