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わたしの嫁は神様でした  作者: 真咲 透子
2. 季節外れの転校生
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5. 転校生がチートって話、よく聞くよね

「……………美味しそうな小娘だなァ」


 そう言ってわらったソレは、現実世界ではありえないモノだった。


 人の背よりもある大きな体は、二足歩行なのに頭は狼とちぐはぐな姿だった。

鋭い牙とぎらついた眼、そして一瞬で切り裂きそうな巨大で凶悪な爪を持っていた。


「…………………ぁ」


 驚きと恐怖でうまく声がでない。はやく逃げないといけないのに、足が震えて動けなかった。


 身体中に血が滲み、床にも滴らせながらながらこちらへ近づいてくる。



ぴちょり、、ぴちょり。





「………っぃ、や……」



 私が動けないのを知っているのだろうか。

狼もどきはゆっくり、ゆっくりとした歩調だった。まるで、小さな小動物をじわじわと甚振いたぶなぶろうとする猫のようだ。


 ああ、私は殺されてしまうのだろうか。



もうだめだ、と諦めて思わず目をつぶった。





 ガっシャァァァァンンンンンンン!!!!



何かを切り裂く音と、何かがぶつかったような凄まじい物音がした。


「!!!!!」


 驚き目を開ける。薄黒い赤が視界一面に広がっていた。

そこには、壁に叩きつけられた狼もどきと刀を持った瀧川くんがいた。彼がもう一度一刺しすると、狼もどきはびくびく、と痙攣けいれんをしていたが、次第に動かなくなった。黒い靄が獣の体を覆ったかと思ったら、今度は跡形もなく消えていく。 



 周りには床や壁についた血の色、そして私と瀧川くんしかいなかった。


 瀧川くんはゆっくりとこちらを振り返った。


「──ああ、もう大丈夫だよ」


 瀧川くんは微笑みながら言う。身体には先ほどの赤い染みができていた。


「怖かっただろう。無事でよかった」


 いまだ震えている私の前に、類を見ないほど端整な顔が近づいてくる。

額に柔らかい感触を感じた後、彼はこうささやいたのだ。



「お前は私が守る。──我が花婿殿」



 私の頭はもうパンク寸前で、その言葉を聞いた最後に意識が途切れてしまった──





 次に目を覚ましたのは保健室だった。


「大丈夫?」


 心配そうな顔をした保健室の先生がいた。


「あなた、貧血で倒れて男の子が運んできたのよ。……ほらあの有名な、瀧川くん、だったかしら」


 瀧川くん、先生方にも有名なんだ。まぁ、あんなイケメン、滅多にお目にかかれないからね。


「もうしばらく休んだら、お家の人に連絡を取って帰りましょうか。荷物も彼が持ってきてくれたわよ」


 辺りはもう真っ暗で星が見えていた。

ぼうっとした頭で思ったことは、この場に瀧川くんがいなくてよかったな、だった。


 発狂しそうだった。


 あれは、何だったのだろうか。あの後どうなったのか──瀧川くんは何者なのか。

いくつもの疑問が浮かんでは消えた。何を考えても、謎は深まるばかりだった。



 次の日。

目覚めは最悪だった。というか眠れてない。


 こんなに学園に行きたくないの初めてだ。昨日晴れていたのが嘘かのように、空は黒く冷たい雨が降っていた。朝ごはんも食べずに登校したので、いつもよりも早い時間に学校に着いた。


 廊下を歩いていると瀧川くんが、目の前から歩いてくるのが目に入った。朝は一度も会ったことないのに、なんでこんなときだけ会うのだろう。


「おはよう」


瀧川くんが挨拶をした。でも、私は何を言ったらいいか分からなかった。


「……おはよう」


瀧川くんはそのまま、私の横を通りすぎようとした。よかった……!そう安心したのも束の間だった。



「放課後、屋上につながる階段の踊り場で。──待っているから」


去り際、私にだけ聞こえるような小さな声で言った。

小さな笑みを浮かべながら。



今度は、見逃してくれないようだ。

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