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わたしの嫁は神様でした  作者: 真咲 透子
2. 季節外れの転校生
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4. 黄昏時はお気をつけて

ちょっと注意です!

 校庭へと戻っていったとき普段通りにしていたと思うのだが、千尋の目はごまかせなかったようだ。何があったのかを何度も聞かれた。


「大丈夫だよ。手当てしてもらったし。何もないよ」

「……」


 瀧川くんにストーカー宣言まがいのことをされたなんてとても言えない。もしかしたら聞き間違いだったかも。聞き間違いだったらいいな!


 私は怪我けがが地味に痛かったこと、帰ってからする予定のゲームでどうすれば効率よくコミュ力を上げてハーレム状態にできるかを考えているからかもしれないととっさに言った。

「いつも通りじゃない」

「………」


 言い終わったあと、追及は終わったけれど千尋は冷めた目でこちらを見ていた。

私の頭の中はゲームのことだけじゃないよ!ちーちゃんひどい!!



 それから私は瀧川くんにビクビクする生活をしていたが、彼から何かコンタクトをとるようなことはなかった。瀧川くんは相変わらずクラスの人気者で、いつも誰かしらに囲まれていた。私なんかに構うヒマなどどこにもなさそうだった。


 あのときのことは、一時的に耳が難聴になっただけだったんだ!!そう思い勝手に何もなかったことにした。



 職員室帰りの昼休み、瀧川くんと生駒くんが2人で楽しそうに談笑しているところを見つけた。初日から仲よさそうだったけど、瀧川くんは生駒君をどうやって手懐てなずけたのだろう。この学園の七不思議にしてもいいのではないかな。


 あ、職員室帰りだけど、何も悪いことしてないからね?……宿題を出し忘れていただけだもん。


 そのときは珍しく、2人は女子に囲まれていなかった。

生駒くんがいたからかもしれない。彼はうるさいのが嫌いそうだったから。


 やっぱりイケメンだなー2人の空間だけ別世界だ。周りがキラキラ輝いて見えるよね。イケメンフィルターか。


 付き合いたいとは思わないけど、見ているだけで幸せになれるよね!イケメンって。もちろん美少女でも歓迎だよ!!節操せっそうなしなことを思っていたからだろうか。瀧川くんと目が合いそうになった。


 私、こういう察知能力には定評があるんだよね。

目が合う前にさりげなーく目線を逸らした。私はあなた方のことなんか見ていませんヨー。……なんとかごまかすことができただろうか。


 ふぅー危ない、危ない。隣に千尋はいないのだ。目立たない場所にはなっているが、万が一話しかけられているのを見られでもしたら。──私の平穏は確実になくなる。進行方向もなにげなく変えて、立ち去ろうとしたときもう一度だけちらりと見た。……最後にイケメンズを目に焼き付けておこうと思って。


もしかしたら目が合うかもしれない。

リスキーだったが、目があったのは瀧川くんではなかった。


 怖っっっ!!!生駒くんの親の仇をみるような恐ろしい目とばっちり目が合った。何あのまがまがしいオーラ!!なんで君と目が合うんだ!?やっぱり私何かしちゃったの!?何故に私を睨むんだ!


 とりあえずあの目は確実に夢にでてきそうだった。今日、寝るのこわい。




 瀧川くんがこの学園に転校してきて一か月以上が過ぎた。


彼の美貌は学園中に知れ渡り、最初は教室を覗きにくる生徒も多くいたがそれも落ち着いた頃だった。じめじめとした梅雨の季節だったが、この日は久しぶりに晴れていた。瀧川くんや生駒くんとの接触は、生駒くんの髪が突然伸びて私の首を絞めつける、そんな夢を見たくらいだった。


単純思考の私は、もう何事もなかったかのように過ごしていた。


問題って、いつも忘れた頃に戻ってくるよね!!



「絢音ちゃんお願い!!!」


最後の授業が終わったあと、隣のクラスの春ちゃんに声を掛けられた。


「今日、当番だったことすっかり忘れちゃってたの!今日発売日なのに……!!」


 春ちゃんは非常に悔しそうにそうつぶやいた。彼女とは、私と同じ図書委員であるとともにゲーム仲間だ。ゲームの趣味はあまり被らないが、これが面白いの!!と布教し合っていた。


「いいよ、今日は何もないし。先生には言っとくね」

「本当!?ありがとー!!」


 春ちゃん、君の気持はとてもよく分かるよ。

今日発売のゲームは春ちゃんの大好きなシリーズの続編で、ハマりすぎて3日ほど語られたからね……!私は忘れてはいない。


春ちゃんに両手をぎゅっと握られて感謝された。

そのとき、隣のクラスの先生が廊下を歩いてきたので、彼女は慌てて教室の中に入っていった。


「どうしたの?」


 千尋がちょっと不機嫌そうな顔をして言った。


「用事ができたから放課後委員会の担当代わって欲しいって」

「私も行く」


 実は千尋も私と同じ図書委員だ。


「え?今日木曜日だよ??お稽古の日じゃなかったっけ?」

「いい。休む」

「いやいや、ダメだよそんなことで休んじゃ」


ちーちゃんって時々突拍子もないこというよね。


「でも」

「一人でできるよ。大丈夫だって」


 何がそんなに不安なのか。ただの委員会だよ?私小学生じゃないよ?


「……わかったわ。でもそれ外さないでね」

「うん」


千尋は私の手首につけているブレスレットを指しながら渋々(しぶしぶ)といった顔で言った。このブレスレットは中等部に上がる前に進級祝いとして千尋と蓮からプレゼントして貰ったものだ。いくつも連なっている透明の珠が美しい。


なんで私だけ進級祝い?ちーちゃんと蓮も進級するよね??

いーじゃん。もらえるものはもらっとけば。

絢音、進級できてよかったわね。


どんなに聞いても二人とも曖昧に濁すだけで何も教えてくれなかった。

ちーちゃんと蓮は私のことを何だと思っているの?君たちは私の親戚か何かか。

……ちーちゃんが何気にひどいこと、私知ってる(泣)



 放課後、図書室で本を借りに来た人の対応をしていたが人数は少なかったので来月の掲示物を作ることにした。図書の先生とお話をしながらしていたので時間はあっという間に過ぎてしまった。


「あら、時間過ぎてるわね。もう帰ってもいいわよ」

「ありがとうございます。さっきのり使って手がベタベタしてるので、洗ってきますね」


 机の周りを片づける。図書室を出て手洗い場へと向かった。


 蛇口をひねり、手を水にひたす。ひんやりとして気持ちよかった。

石鹸で手を綺麗に洗ったあと、泡を流そうとしたとき手の当たり所が悪かったのだろうか。ブレスレットの紐が切れてしまった。


「うわぁぁぁぁぁ!どうしよう!!」


慌てて、流しに落ちてしまった珠を拾う。これ、ちーちゃんに怒られるパターンだよね……!


自分で修復しても千尋たちには分かってしまう気がした。

珠をハンカチで包んでポケットへ入れ、図書室への道のりへ歩もうとしたときだった。



 空が、赤い。


窓から入ってきた光に思わず足を止めて目を細めた。沈もうとしている太陽が異様に赤かった。もう早く帰りたいのに、


足が動かない……?


いつもの学園の空気が一瞬で変わるのを肌で感じ取った。頭の中で警鐘が鳴り響く。はやく、この場から立ち去れ、と。


 何かが……いる!さっきまで誰もいなかったのに、背後から気配がした。

同時に鉄の錆びた匂いと獣臭さが混じったような匂いがする。



 


 ぴちゃ、ぴちゃ。……ぴちゃ、




何の音だろう。変則的に水音がした。




 振り返ってはダメ、振り返ってはだめだ……!!頭では分かっているのに体が言うことを聞かない。気配はどんどん近づいてくる。


 


 そして、私はゆっくりと振り返った。





「……………美味しそうな小娘だなァ」


 

 ソレは、くぐもった低い声でそう言うと、にたりとわらった。

主人公はゲームゲームと言っていますが、実は私、乙女ゲームをしたことがありません。


作者は青い熊が出てくるゲームが大好きです笑

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