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わたしの嫁は神様でした  作者: 真咲 透子
2. 季節外れの転校生
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3. 在る疑惑をもつ

今回は気持ちばかり長めです。

 瀧川くんは、すごかった。

 

 1限目は数学だ。数学担当の伊沢先生は、数学ができない生徒をねちっこく嫌味をいったり、生徒をえこひいきするいやな先生だった。いまだに落ち着かない教室にイライラしたのか、矛先を瀧川くんへと向けた。


「瀧川、問6を前に書いてくれ。まだ解いてないやつは急いで解け」

「はい」


 授業終了15分前に出された問6は、今日の授業の中で1番難しい問題だった。うわぁ、やなやつだなー。あからさますぎる。もし解けなかったら、散々嫌味を言われるに違いない。ところが


 彼は、黒板の前に立つとすらすらと書き始めた。後ろ姿も様になるなんてさすがイケメン。


「できました」


 さらりとそう言うと、スタスタと元の席に戻る瀧川くん。クラスで小さな歓声が上がった。


「静かに!!……解説を始める」


 先生は少し悔しそうに解説をし始めた。うぬぬぬぬ……。やつめ、なかなかやりおる。私は途中までしか解けていなかった。数学は得意なほうなんだけなぁ。……マジ当んなくてよかった。感謝、感謝。


 次の時間は理科だった。一組5人班での実験だ。


 瀧川くんと一緒の班になった男子4人は最初居心地が悪そうだったが、授業が終了する頃には以前から仲良かったかのように打ち解け合っていた。何この瀧川マジック。この短時間で何が起こったんだ?


 昼休みは、橋本さんたちが瀧川くんを学校案内するのだと騒いでいたのだが、


「碧」


 ガラガラと扉を開けたのはあの、隣のクラスのイケメン生駒くんだった。


「今行くよ、颯」


 そう返事をすると、申し訳なさそうに「ごめんね」と言って去ってしまった。

クラスの中は憶測おくそくが飛び交いざわざわした。美人の友達はイケメンなのか。そしていつのまに仲良くなったのか。誰にもなびかない生駒くんと。しかも互いに名前呼び!!

 類は友を呼ぶという。一部例外もありますが。「例外って何だ?」なんて……察してくれ。



 瀧川くんの温和な態度とカリスマ性は威力を発揮したのだろうか。

こうして3週間が経過した今は、クラスの中心人物としてみんなの中に君臨していた。



「瀧川くんはすごいね~」


 千尋と蓮と一緒にお昼ご飯を食べながら言った。今日はいい天気だから屋上で食べることにしたのだ。


「顔はいいし頭はいいし、友達はイケメンだし完璧じゃん。……天は二物も三物も与えすぎだね!!」

「あいつ、運動もできるぞ。この前の体育すごかった」

「スペック高すぎる………あ、この煮物おいしい」


 今日はお弁当の日だ。いつもお昼は自分の家からお弁当持参なんだけど、週に1回蓮が重箱でお弁当を作ってきてくれる。蓮のお弁当は主婦顔負けだ。めちゃくちゃおいしい。…いや、お母様の作るお弁当もおいしくいただいていますが。


「おー。サンキュー」

「瀧川くんだったら、ちーちゃんをお嫁にだせる」

「嫌よ」

「瀧川ソッコーで振られたな」


 えー。瀧川くんいいと思うけどなぁ。2人がくっついたらお似合いなのに。


「余計なこと考えてないでしょうね」

「余計なことは考えてないよ?」

「嘘ね」

「即答!?」


 こんなに美人なのに彼氏作らないなんてもったいない。……まぁ、実際ちーちゃんに恋人ができたら、ものすごく寂しくなると思うが。


「せっかく女子高生になったのに」

「関係ないでしょ」

「いや、あるよ!?青春を楽しもうよ!」

「興味ない」

「もー。もったいないなぁ」

「絢音で手一杯だからそんな暇はないわ」

「ひどい!!」


 それは聞き捨てならないぞ!?私がいつそんなにちーちゃんの手をわずらわせたか……いつもですね。わかります、はい。


「私は恋とかしたいなーなんて……」


 お年頃ですから。軽い気持ちで言ったのに、すごい目で見られた。


「誰か好きな人でもいるの!?」

「いないよ!いたら今その話でもちきりだよ!!」

「……そう。そうよね」


 いきなりヒートアップしたかと思えば、千尋はまた表情を戻し、何かをぶつぶつ言っていた。聞こえなかったけど。どうせ彼氏とか夢のまた夢。告白されたことすらないもんね!うわーん。


「お嫁に行けなかったら、私が蓮を嫁にする!!」


 蓮の作るご飯はおいしいし!私より女子力高いし!!(泣)


「急になによ…」

「ははは、誰もいなかったらな」


 あきれ顔のちーちゃんと面白そうに笑う蓮。……絶対本気にしてないよね。特に蓮。軽やかに笑わないでよ。傷つくじゃん!!

 私はちょっとふてくされながら重箱をつついた。空は雲一つない晴天だった。



 マジでついてない。


 6限目の体育で、盛大につこけてしまった。

血はでるわ薬は染みるわで散々な目にあった。そして自分でもあのこけ方はないと思った。音にすると『ズシャシャシャシャーー!!』的な。


 すごい恥ずかしかった。周りにいた人は「大丈夫!?」とか声をかけてくれたけど、遠くからくすくす笑いも聞こえていた。私も笑いたかったわ。穴があったらはいりたい。帰りたい。ゲームしたい。



「ありがとうございました。失礼しましたー」


 治療を受けて保健室を出た。まだまだ授業時間はたっぷりある。億劫おっくうだったが戻らなくてはいけない。できるだけのろのろと歩いていると、見覚えのある後ろ姿が見えた。もしかしてあれは、


「瀧川くん…?」


 思わず声が出てしまった。口にしてはっとしたが、私の声は目の前の彼には届いていたようだ。


「……行村さん」


 瀧川くんがゆっくりと振り返った。ビンゴだったすごいな私。どうしよう。困ったように見つめていると、


「体育館シューズを忘れちゃってね」


 シューズを上げて困ったように笑う。おちゃめな姿もイケメンだ。


「行村さんは?……足、怪我したの?」


 すこし真剣な顔にどきり、とした。いや、ときめきとかではなく—─


「うん、こけちゃった」

「そう………お大事に」


 未だに足を凝視しているが、彼に一言申したい。


そんなにみないで!細くないから!!私なんかより素敵なおみあしをあなたはお持ちでしょう!?やめて、羞恥プレイですか。わ、話題をかえなきゃ。


「ええと、だ、男子はバスケ、だったよね」

「そうだよ。女子はテニス?」

「うん。そういえば瀧川くん、運動すごいできるって蓮、えっと神楽木くんから聞いたよ」


 私はすごいね、と言って笑った。……よっしゃ、足から視線がれたようだ。ひとまず安心。


「神楽木……。行村さんたち仲良いよね。よく一緒にいるのを見かける」

「うん。幼馴染なんだ」

「へぇ……」


 普通に会話できているけど、これ他の女子に見つかったら袋だたきにされるパターンだね!!なんか女子の中で決まり事できてるみたいだし、さっさと退散したいな。でもその前に


「私の名前よく知ってたね」


 一度も話したことなかったのに。あぁでも彼、頭よかったか。記憶力もいいのかな。


─—もしタイムマシンがあったら。

よくある例えだけど、このときの私を全力で殴りたい。


「あぁ、それはね「瀧川!!はやくこいよ!」…」


 ナイス浜田くん!会話途切れた!!


「瀧川くんのこと呼んでるね。じゃあ、私はこっちだから。またね」


 またねとか言ったけど、2度とこのようなことがないよう願っています。いそいそと駈け出そうとしたそのとき、


「見ているから」


 思わず振り向いてしまった。彼は、綺麗な顔にきれいな笑みを浮かべていた。




「またね、行村さん」


 いま行く、と浜田くんに返事をして瀧川くんは行ってしまった。私はしばらくその場に立ち尽くしてしまった。


「……何なの今の」


 ストーカー宣言か!?


のろのろ歩かずにさっさと戻ればよかった。後悔しても後の祭りだ。

やっと主人公と接触しました。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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