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わたしの嫁は神様でした  作者: 真咲 透子
2. 季節外れの転校生
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2. その転校生は

「以前から話をしていたが、転校生を紹介する。 —─入りなさい」


 クラスの様子から、何を言っても耳にはいらないと判断したのだろうか。

説明もそこそこに担任の先生はドアの向こうの転校生を呼んだ。ドアを開けて入ってきた転校生にクラスの視線が集中する。瞬間、息をのんだ。


「瀧川 碧です。よろしくお願いします」



 大きな声でないにも関わらず、よく通る、凛とした声だった。

教室中が静まり返っており、先生が書く黒板のチョークの音しか聞こえない。


「瀧川は急きょ両親が海外への赴任が決まったそうで、この学園へ転校することになった。5月という中途半端な時期だが、みんなも仲良くするように。瀧川は一番後ろの……空いている席に座ってくれ」

「はい」


 簡単な瀧川くんについての紹介をした後、朝の連絡が始まった。だが、誰も聞いていなかった。それもそうだろう。彼は規格外に顔が整っていた。

 

 切れ長の目に、薄い唇。髪は漆黒で肌は日焼け知らずな女子よりも白い。特に目は印象的だった。濡れているかのようにきらきらしており、底はどんな深淵より深く、吸い込まれそうだ。想像を超える美形にクラス中が動揺を隠せなかった。


 先生が出ていった後もしばらく無言が続いた。みんな戸惑っていたのだ。しばらくして美人の彼に声をかけたのは、隣の席の橋本さんだった。


「ええと、瀧川くん。私、橋本 優奈です。よろしくね。隣の席だから遠慮なくなんでも聞いてね。ほらぁ、あかりもおいでよぉ~」


 橋本さんはくりっとした目とゆるく巻いた髪がかわいい女の子だ。さりげない気づかいと、そのしぐさから女子にも男子にも人気がある。

よくいるクラスのしきりたがりなタイプではなく、ゆるいが根はしっかりと張っておりクラスの中でも発言力のある子だ。

 一番の美人と聞かれたら千尋を挙げるが、クラスのアイドルと言われたらおそらく彼女に手が上がるだろう。


「もうっ優奈ったら。私は松本 あかりです。クラス委員長をしてるから、困ったことがあったら言ってね」


 松本さんはスラリとした手足と肩まで切りそろえた髪、クールで利発そうな顔立ちをしているこのクラスの委員長だ。真面目なしっかり者。ザ・委員長な彼女が、このクラスを実質まとめていた。

 千尋がこのクラスではなかったら、かわいい系は橋本さん、美人系は松本さんでまとまっていたのではないかな?


 うちのちーちゃんまじ最強。私は鼻が高いよ!!



「──ありがとう。こちらこそよろしく」


うっすら微笑んだ瀧川くんは、人形みたいな冷たい容姿とは裏腹に、物腰は柔らかだった。……意外だ。そうと分かれば外野も黙っていない。周りの女子もこぞって自己紹介をし始め、瀧川くんの机はあっという間に囲まれてしまった。


 誰だって美人とお近づきになりたいだろう。


「イケメン半端ないね」


 美人は国を傾けるほどの威力があるというそうだ。今ならなんとなくわかるかも知れない。うむ。瀧川くんを遠巻きに見ているのは、女子の熱烈アプローチに引いている男子たちと静かそうな女の子グループの子たちと私とちーちゃんだけだ。


「興味ない」


 千尋はばっさり切り捨てた。いつものごとく、本に目を落としたままだ。ちーちゃんは相変わらずクールだ。


「すごいイケメンなのに」

「だから?」

「ちーちゃんと並んだらものすごい2ショット、……ごめんなさい」


 言葉の続きは言えなかった。はーい、今絶対零度な視線をいただきましたー。私はMじゃないのでありがとうございますは言えない。もう5月だよね?なんでこんなに寒いんだろう……。今年はエアコンいらずなのでは?


「……アイツにはあまり近寄らないほうがいい」

「アイツって瀧川くん?」

「そう」

「近寄らないよ」


近寄りたくとも近寄れなさそうだ。それに、


「近寄ったら夜道歩けなくなりそう(闇討ちとかありそうで)」

「……は?夜出歩いてるの?」


ちーちゃんが怪訝けげんそうな顔でこちらを見た。


「いや、もののたとえで……。出歩いても。ちょっとコンビニ行くくらいかな?」


 あまり遅くに出かけると補導されるし。高校生だしね。


「夜は危ないから出歩くの禁止」


千尋は厳しい顔でそう言った。クールで冷たい印象なちーちゃんだけど、実は面倒見がよくちょっぴり過保護だ。


「うん」

「18時以降外出禁止だから」

「早いよ!!」


もう私だって花の女子高生なんだよ!千尋はまだ渋い顔をしている。


大丈夫だよ、ちーちゃん。

アメをあげるって言われてもついて行ったりしないから!!

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