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わたしの嫁は神様でした  作者: 真咲 透子
2. 季節外れの転校生
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1. 非日常のきっかけはささいなことから

 ことの始まりは一カ月月前にさかのぼる。


「おはよー」


 いつもの様に教室に入った私、行村 絢音は、窓際で本を読んでいる友人に声を掛けた。


「おはよう。今日は遅かったわね」

「昨日ゲームしてたら遅くなっちゃって」

「ふぅん」


 一度も顔を上げずにクールに切り返す友人の六条 千尋は、艶やかな黒髪と涼しげな美貌を持つ学園一の美人である。


 え?私はどうだって??そりゃ私も友人に負けず劣らず……平凡ですけど、何か?

 他愛ない話(私が一方的に喋っているだけ)をしながら、ふと気付いたことを聞いてみた。


「なんか、みんなソワソワしてるね」


 どちらかというと鈍いほうだと思っている私でさえ分かるほど、教室内がどこか落ち着かない様子だった。


「転校生が来るからじゃない?」


 千尋が興味なさげに答えた。……え、転校生!?


「何それ初耳なんだけど!」

「2週間前から言ってたし、昨日も言ってたわよ」


 えぇー。そうだっけ?


 昨日は何してたっけ……放課後購入予定のゲームについて思いをせていたな。うわの空すぎてちーちゃんにも怒られたっけ。美人が怒ると怖いので、よいこのみんなも気をつけよう。超怖かった。


「女の子?」

「男」

「そっか」


 女の子だったら仲良くなりやすいけど、男の子は機会がないとちょっと難しい。

お年頃ってやつだ。そうか、転校生がくるんだ。このそわそわした感じも納得だ。転校生なんてこのエスカレーター式の学園では滅多めったに来ない。めずらしすぎる。……どんな人なんだろう?


「不満そうね。浮気?」


 千尋は本から目を離し、涼やかな視線を私に送った。千尋の目と私の目が一瞬合う。


「いいや?ちーちゃんが1番だよ」


 そう、と呟くと彼女はまた何もなかったかの様に本を読み始めた。……今無意識に答えたけど、浮気ってなんだ?と疑問に思った。まぁ、いっか。深くは考えなかった。


「はよー」


 幼馴染である神楽木 蓮が、教室内に入ってきた。連と私は幼稚園に入る前からの親友だ。一緒にいるととても楽。


「おはよー蓮」

「おはよう」

「はよー絢音、千尋」

「蓮はさ、今日転校生が来るってこと知ってる?」

「知ってるけど」


 蓮はあっさり言った。なーんだ、蓮も知っていたのか。


「そっか」

「何をいまさら言っているんだ。知らなかったのか?」

「うん」

「昨日先生言ってたぞ」

「らしいね」

「らしいねってお前……」


 蓮はあきれた顔をした。何ですか、その顔は。


「そういえば、教室来る前に女子たちが転校生がすごいイケメンだって騒いでた」

「へぇーそうなんだ。あ、生駒くんだ」


 隣のクラスの生駒 颯くんが廊下を歩いていた。彼は、今時のアイドルのようなスラリとした体型のイケメンなのに、本人はいたって硬派な男の子だ。そのギャップがたまらないと、いつも女の子に囲まれてキャアキャア言われている。……本人はものすごく鬱陶うっとうしそうだが。


「生駒くんと転校生、どっちがイケメン?」

「知らねぇよ。何だ、お前ああいうのがタイプなわけ?」


 蓮は時々デリカシーないよね。別に求めてないからいいけどね。


「うーん。そういうのではないけど……」


 生駒くんに近づこうものなら、ファンクラブの中にある親衛隊あたりにぷすっと刺されそうだ。確かにイケメンは目の保養になるけど。


「美人系はちーちゃんだけで十分かな」

「………」


 千尋は反応すら返さなかった。ちーちゃんは相変わらずクールだ。


 再び視線を廊下へと向けると、生駒くんと目が合った気がした。一瞬だけど。いやいや、自意識過剰すぎるでしょ。落ちつけ、私。でも偶然というには少しばかり強い視線だった気がする。もしかして今、


 睨まれてた……?


胸の中に残った小さな疑問は、先生が教室に入ってきたことにより、すっかり無くなってしまった。

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