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わたしの嫁は神様でした  作者: 真咲 透子
5. 幼馴染との夏
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26. 夏の終わりに(中)

 照りつけていた日射しもだいぶ和らいできた頃。待ち合わせ場所に着くと、すでに蓮がいた。


「おまたせしましたー」

「待ったかしら?」

「いや、俺もさっき来たところだ。おぉ、浴衣か」


 私と千尋は浴衣を着ていた。私は白地に色とりどりに咲いた朝顔の柄で、千尋は黒地にアヤメ柄の大人っぽい浴衣だ。千尋は浴衣をありったけ引っ張り出した後、自分の着る浴衣はさっさと決めて私の浴衣をあーでもないこーでもないと選びまくっていた。私が疲れて「ちーちゃんもーいいよー」って言っても全然聞いてくれなかった。


「2人とも似合うな」

「えへへへへ」

「ありがとう」


 さらっと蓮が褒めてくれた後、私たちは歩き出した。


「蓮は浴衣じゃないの?」

「あぁ。いつも似たような服着ているからな。今日くらいいいだろ」


 連は神社のお手伝いをするときは袴だ。袴と浴衣は違うと思うけれど。カランコロン、と歩くたびに軽やかな音が鳴る。歩きにくいのはご愛敬だ。ゆっくりと歩きながら夏祭りがある神社へと向かった。



「わぁ。すごい人だね」

「そうだな」

「絢音、はしゃぎすぎてはぐれちゃダメよ」

「ちーちゃん、私高校生」


 夏祭りは大変な賑わいだった。たくさんの屋台にまだ明かりの灯っていない赤い提灯。私は小さい頃から、夏祭りが大好きだった。夕方から夜までのお祭り。いつもとはちょっと違う風景に夜の空気が混ざると、それはもう非日常の始まりだった。それに、夏祭りだと夜も蓮たちと遊べるしね。


「何からする?ヨーヨー?射的?金魚すくい?あっわたあめ食べたい!!」

「落ち着け絢音」

「最初にお参りしましょう。遊ぶのはそれから」


 千尋の言葉で、私たちは神社へお参りをすることになった。お祭りの屋台の近くに階段があり、その上の方に神社がある。


「結構急な階段だね」

「浴衣は歩きにくいだろ、気を付けろよ」

「絢音、足元」


 蓮も千尋も私を見ながらそう言った。ちーちゃんも同じで浴衣だよね?転ばないから大丈夫だよ!!私そこまでおっちょちょこいじゃないからね!ささっとお参りが終わった後、私たちはおおいに夏祭りを楽しんだ。射的は2人に完敗だったけど、輪投げは私が一番だった。金魚すくいは『隼人くんに負担がかかるからダメ』という言葉で止められた。どういう意味か、私にはちょっとよく分からなかったな!!わたあめにたこ焼き、リンゴ飴など、夏祭りならではの食べ物をたくさん食べた。



「きゃははは」


 お面をかぶった男の子と女の子が私の横をはしゃぎながら通り過ぎた。一瞬、すべて周りの音は聞こえなくなった。思わず私は振り返る。しかし、先ほどみた子供たちはいなかった。


(見間違い?)


 この夏、出会った子供たちを思い出す。星のきらめきと手の中に残った髪飾り。胸がきゅっとゆるく締め付けられた。

 

(あ…………)


 ふっ、と赤い提灯に灯りが燈りだす。ぼんやりと辺りを照らし、さっきまでとは違う幻想的な雰囲気に私はただ立ち尽くすばかりだった。


「絢音?」


 祭りの雑音が耳に戻ってくる。急に動かなくなった私を不思議に思ったのだろう、千尋が私の顔をのぞき込んだ。この誰よりも綺麗な幼馴染はとても心配性だ。私は首を振ると彼女の手を取りぎゅっと握った。


「大丈夫、何でもないよ」


 私は笑顔で千尋の手を引いた。



 今日は祭りの日。今日の夜だけは特別だから。


(あの子たちもお祭りを楽しんでいたらいいな──)


 私はそっと願った。

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